【特殊報】トマトキバガ 県内で初めて確認 栃木県2024年10月28日
(リード)
栃木県農業総合研究センターは、トマトキバガの誘殺を県内で初めて確認。これを受けて、10月28日に令和6年度病害虫発生予察特殊報第1号を発表した。
栃木県農業総合研究センターによると、10月に栃木市と芳賀町に設置したトマトキバガの性フェロモントラップで、同種と疑われるキバガ科の成虫が誘殺された(図1)。農林水産省横浜植物防疫所に同定を依頼したところ、トマトキバガ Tuta absoluta (Meyrick)であることが判明した。なお、栃木県内のトマト及びミニトマトの栽培ほ場では10月28日現在、同種による被害は確認されていない。
図1:フェロモントラップに誘殺された雄成虫(提供:栃木県農業総合研究センター)
ナス科植物が主要な寄主植物だが、マメ科のインゲンマメも寄主植物として確認。トマトでは、茎葉の内部に幼虫が潜り込んで食害し、孔道が形成される。葉の食害部分は表面のみ残して薄皮状になり、白~褐変した外観となる。
ハモグリバエ類では線的な食害痕となるのに対し、トマトキバガでは面的な食害痕となる。果実では、幼虫がせん孔侵入して内部組織を食害するため、果実表面に直径数ミリ程度の穴が空いて腐敗する。
成虫は、翅を閉じた静止時で体長5~7mm(前翅長約5mm、開張約10mm)。前翅は、灰褐色の地色に黒色斑が散在し、後翅は一様に淡黒褐色。幼虫は、終齢で約8mmなる。体色は淡緑色~淡赤白色で、頭部は淡褐色。前胸の背面後方に細い黒色横帯がある。
1年に複数の世代が発生し、繁殖力が高い。発生世代数は環境条件によって異なり、年に10~12世代発生する地域もある。卵から成虫になるまでの期間は24~38日程度だが、気温が低い時期はさらに長くなる。卵は、寄主植物の葉の裏面などに産み付けられる。幼虫は1~4齢までの生育ステージがあり、土中や葉の表面で蛹化する。成虫は夜行性で、日中は葉の間に隠れていることが多い。
同所では次のとおり防除対策を呼びかけている。
〇被害の特徴を把握し、ほ場内をよく見回り早期発見に努め、疑わしい成虫、幼虫、被害葉、被害果実を見つけた際は、ビニル袋に密閉し最寄りの農業振興事務所に連絡する。
〇施設栽培では、同種の施設内への侵入を防ぐため、また、コナジラミ類対策も兼ねてハウスの開口部に0.4mm目合いの防虫ネットを設置する。なお、ネット等の破れや、すき間からも侵入するため、必ず補修する。
〇ほ場で発生が認められた場合には、発生を拡大させないため、トマトキバガに登録のある農薬
を散布する(表)。必ず、最新の農薬登録情報を確認し、薬剤感受性の低下を防ぐため、系統(RACコード)が異なる農薬でローテーション防除を行う。
表:トマト・ミニトマトのトマトキバガに登録のある主な農薬(10月24日現在)
〇ほ場や露地に放置された収穫残渣、被害葉及び被害果実は、本種の増殖源となるため、速やかに土中深く埋却するか、ビニル袋で一定期間密閉し、寄生した成幼虫を全て死滅させたうえで、適切に処分する。
〇作物の栽培終了時には、作物を地際から切断し、一定期間施設を密閉して同種を死滅させた上で、残渣を適切に処分する。
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