野菜の発酵過程 成分変化をNMRでそのまま評価 非破壊分析へ応用に期待 農研機構2024年10月31日
農研機構は、農産物や食品中の成分を分析するNMR(核磁気共鳴)装置において、発酵食品中の成分を抽出せずにそのままの状態で直接分析が可能なNMR計測(インタクトNMR)法を確立。野菜の発酵過程における成分変化を非破壊で捉えることに成功した。同技術は、多様な農産物や食品中成分の非破壊分析への応用が期待される。
発酵野菜のインタクトNMR計測の概略
農研機構は、NMRをはじめ、様々な分析装置を用いて農産物や食品の多角的な評価を行っている。また、高性能NMRリモート共用システムの運用を始めており、遠隔地からでもNMRを使って農産物や食品中の成分同定および化学構造解析が可能となっている。
一般的に、農産物や食品中の成分を分析する場合、成分の抽出や精製を行う必要があるが、これらの調製作業には手間やコストがかかり熟練した技術が必要。NMR計測中にサンプルローターを高速回転させるHR-MAS(高分解能マジックアングルスピニング)を併用する方法を用いることで、成分の抽出や精製といった調製作業が不要となるが、別途装置が必要になる。また、食品によっては細胞組織や構造の損傷リスクがあるため、農産物や食品中の成分を完全に非破壊分析することはできなかった。
一方、NMR装置と同様の計測原理を利用するMRI(磁気共鳴イメージング)装置は、非破壊的に農産物や食品を画像診断できるが、成分の分析を行うことには不向きだった。
今回開発したインタクトNMR計測法は、発酵食品を成分抽出等の調製で破壊することなく、NMR計測用試験管にそのままの状態で詰め、従来の溶液NMR計測と同等の解析結果を得られた。その結果、非破壊で発酵野菜中成分の同定と発酵過程における成分変化の評価が可能となった(図1)。
今後、同研究で開発したインタクトNMR計測法を様々な農産物や食品に適用することで、試料調製が不要で簡便な成分分析が可能となる。また、農産物や食品を非破壊で計測できるため、これまで見落とされていた生命現象や成分情報の発掘が可能となり、新たな食品の品質評価法の開発が加速すると期待できる。
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