【特殊報】キウイフルーツにキクビスカシバ 県内で初めて確認 和歌山県2024年12月3日
和歌山県農作物病害虫防除所は、キウイフルーツにキクビスカシバを県内で初めて確認。これを受けて、11月29日に令和6年度病害虫発生予察特殊報第4号を発表した。
写真1:被害樹から採集された幼虫(提供:和歌山県農作物病害虫防除所)
和歌山県農作物病害虫防除所によると、6月に有田郡湯浅町のキウイフルーツにおいて新梢(1年生枝)にチョウ目の幼虫が食入し、フラス(虫糞と木くずが混ざったもの)が発生する被害が確認された。被害樹から幼虫を採集し(写真1)、和歌山県立自然博物館に同定を依頼したところ、スカシバ類であることが明らかになった。
キウイフルーツのスカシバ類の害虫としてキクビスカシバが疑われたため、8月下旬~10月上旬に県北部(伊都郡かつらぎ町、紀の川市、海南市)及び県中部(有田市、有田郡湯浅町)のキウイフルーツ栽培ほ場にキクビスカシバのフェロモントラップを設置した結果、有田市を除く2市2町でスカシバ類の雄成虫が誘殺された(写真2)。
写真2:トラップに誘殺された雄成虫(提供:和歌山県農作物病害虫防除所)
トラップに誘殺された個体を鳥取大学農学部の中秀司准教授に同定依頼した結果、和歌山県のキウイフルーツでは未確認のキクビスカシバと診断された。
なお、同種は日本在来の昆虫で、自生するマタタビ科マタタビ属植物で本県でも元々発生していたと考えられる。
同種のキウイフルーツでの発生は福岡県(平成16年)、愛媛県および佐賀県(平成23年)、長崎県(平成24年)、東京都(平成29年)、栃木県および茨城県(令和元年)、大分県(令和3年)、岐阜県(令和4年)で報告されている。
成虫は開張30~40mm(雄)、38~45mm(雌)。前翅は赤褐色、後翅は透明で、頭部、胸部、腹部は全体的に黒色で、腹部第2、4節に黄色の帯がある(写真2)。卵は長径約1mmの平たい円盤状で小豆色をしており、中心部がややくぼんだ形状。終齢幼虫の体長は約40mm、頭部及び前胸背板は赤褐色、腹部は淡い桃紫色。
成虫は9月上旬頃から年1回発生する。産卵部位は葉柄基部が多い。卵で越冬し、幼虫は4月頃にふ化し、新梢に食入する。蛹化は枝の内部で行われ、羽化時には蛹殻が半分表面に出た格好で残る(写真3)。
写真3:被害樹に残された蛹殻(提供:和歌山県農作物病害虫防除所)
マタタビ科マタタビ属の植物で、キウイフルーツの他に自生するミヤママタタビやサルナシも寄主植物としての記録がある。
卵からふ化した幼虫は、新梢の葉柄基部から食入する場合が多く、食入部位の葉は枯死する。また、食入部位によっては新梢全体が枯死したり、枯死しない場合でも新梢の伸長や葉色が悪くなる。6月下旬には幼虫の食入部位からフラスが排出されるため(写真4)、これを目印に幼虫が食入している部位が特定できる。
同所では次のとおり防除対策を呼びかけている。
〇同種の被害枝を確認した場合は除去する。被害が目立つ場合は、適用のある農薬(フェニックスフロアブル、アグロスリン乳剤)を幼虫のふ化時期に散布する。また、成虫の発生時期に交信かく乱剤(スカシバコンL)を枝に巻き付け、成虫の交尾を阻害する。
なお、農薬の使用にあたっては、必ず最新の情報を確認し、使用基準を遵守する。
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