【特殊報】ホウレンソウにクロテンコナカイガラムシ 県内で初めて確認 神奈川県2024年12月23日
神奈川県農業技術センターは、ホウレンソウにクロテンコナカイガラムシを県内で初めて確認。これを受けて、12月20日に令和6年度病害虫発生予察特殊報第3号を発表した。
神奈川県農業技術センターによると、10月に県内の施設ホウレンソウに、コナカイガラムシ類の寄生とホウレンソウの萎縮等被害が確認された。寄生している成虫と幼虫を採集し、農林水産省横浜植物防疫所に同定依頼した結果、神奈川県では未確認のクロテンコナカイガラムシと同定された。
図1:クロテンコナカイガラムシ雌成虫と
図2:クロテンコナカイガラムシ雄成虫(提供:神奈川県農業技術センター)
クロテンコナカイガラムシの雌成虫は翅がなく、体型は楕円形で、体長は約3~5mm。背面に白色のロウ質物を分泌し、全体としては白く見えるが、ロウ質物が薄くなる部分があり、2齢幼虫以降は2対の黒斑があるように見える(図1)。雄成虫は1対の翅を持つ(図2)。
雌成虫は、ワタ状のロウ質物の卵のう内に平均350個程度産卵。卵の多くは雌成虫の体内でふ化し、卵のう内で数日間過ごした1齢幼虫は、その後歩いて分散する。雌では2齢幼虫、3齢幼虫を経て成虫となる。雄では2齢幼虫の終わりに繭を作り、繭の中で前蛹、蛹を経て羽化。繁殖様式は、交尾後産卵する有性生殖と雌成虫が交尾せずに産卵する単為生殖の両方が知られている。同種の単為生殖個体群における1世代の発育期間は平均70日程度。
図3:ホウレンソウ葉に寄生した成幼虫と
図4:クロテンコナカイガラムシの吸汁により衰弱し萎縮したホウレンソウ(提供:神奈川県農業技術センター)
クロテンコナカイガラムシは寄主植物の葉、葉柄、茎、花芽及び果実に寄生する(図3)。吸汁により寄主植物を衰弱させる(図4)他、分泌した甘露(糖分を多く含む排泄物)が植物体表面のすす病菌を繁殖させ、寄主植物の光合成能力を低下させる。
国内では、2009年に沖縄県で初めて発生が確認され、これまでに21府県で発生が確認。広食性で、66科の植物に対して寄生することが報告されている。2024年現在、国内ではトマト、ミニトマト、ナス、ピーマン、オクラ、ズッキーニ、キュウリ、スイカ、ホウレンソウ、食用キンギョソウ等の他、発生ほ場内のスベリヒユ、キク科雑草への寄生も確認されている。
同所では次のとおり防除対策を呼びかけている。
(1)11月現在、ホウレンソウで本種に登録のある防除薬剤はない。
(2)生長点付近の茎葉を観察し、同種の寄生の早期発見に努める。分泌された甘露によるすす病は、早期発見の目安となる。発生を確認した場合は寄生株を除去して、土中に埋めるなど適切に処分する。
(3)スベリヒユ等の雑草にも寄生するため、ほ場内および周辺の除草を徹底する。
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