積雪地帯における「麦類」生育時期 推定を可能に 農研機構2025年4月24日
農研機構は、過去25年の試験ほ場(北海道・東北・北陸)の気象観測データと麦類の生育調査から生育の早晩を評価し、温暖化と積雪減少が越冬麦類の生育時期を早めていることを明らかにした。また、気温だけでは推定できなかった麦類の生育の早晩を、麦類が温度を感じる成長点の温度を使って推定できることを明らかにした。同成果を用いて正確な生育予測方法の開発が可能となり、気候変動影響を考慮した栽培管理に役立つ。
写真1:出穂する大麦品種「ミノリムギ」
農研機構は、温暖化や積雪と麦類の生育時期との関係を調べるため、農研機構の試験ほ場(北海道・東北・北陸)の過去25年の気象観測データと大麦品種「ミノリムギ」(写真1)など麦類3品種の出穂期調査のデータを用いて、生育の早晩の評価を行った。
その結果、同じ品種でも温暖化と生育時期には各地域で共通した関係性が見られず、積雪などの地域的な差が、生育時期に影響していることが分かった。例えば東北は10年間で0.8℃のペースの気温上昇に伴い、出穂期は10年間で4.9日のペースで早まり、温暖化影響が明確だが、他の地域は生育時期の変化傾向が異なる。
そこで、気温の変化のみでは理解できない生育の早晩を推定するため、雪の下の温度の影響も反映することが可能な成長点温度(成長点の下端を地面からの深さ2cmと仮定)を用いて生育の早晩を示せることを明らかにした。
北海道や東北のような1~2月の気温が0℃を下回る地域では、積雪の多少を問わず1~2月には生育が進まず、3~4月に気温が0℃以上に上がると生育が進む。東北は積雪の多少にかかわらず3~4月の気温上昇に伴い生育が早まるが、北海道では、積雪が少ないと土壌凍結が起こる場合があり、3~4月の地温が0℃以上になるまで時間がかかるため生育が遅れることがある。
図1:各地の1~2月の積雪が生育に与える影響
一方、北陸では1~2月の平均気温が0℃を上回っても、積雪が多い年は、雪の断熱効果で雪の下に位置する成長点の温度が0℃以上に上がらないため、1~2月は生育が止まり、結果として生育が遅くなる。積雪が無ければ1~2月から生育が始まるため、結果として生育が早まる(図1)。
今後は、生育の早晩を決める温度として、気温だけでなく成長点温度の推定を加えた正確な生育予測の方法を開発する予定。より正確な生育予測に基づいた営農管理情報の提供や気候変動の影響予測への応用が期待できる。
重要な記事
最新の記事
-
関税発動で牛肉の注文キャンセルも 米国関税の影響を農水省が分析2025年4月24日
-
トランプ関税で米国への切り花の輸出はどうなる?【花づくりの現場から 宇田明】第58回2025年4月24日
-
三島とうもろこしや旬の地場野菜が勢ぞろい「坂ものてっぺんマルシェ」開催 JAふじ伊豆2025年4月24日
-
積雪地帯における「麦類」生育時期 推定を可能に 農研機構2025年4月24日
-
日本曹達 微生物農薬「マスタピース水和剤」新たな効果とメカニズムを発見 農研機構2025年4月24日
-
棚田の魅力が1枚に「棚田カード」第5弾を発行 農水省2025年4月24日
-
【人事異動】兼松(6月1日付)2025年4月24日
-
日本生協連「フェアトレード・ワークプレイス」に登録2025年4月24日
-
旭松食品「高野豆腐を国外へ広める活動」近畿農政局 食の「わ」プログラムで表彰2025年4月24日
-
群馬県渋川市の上州・村の駅「お野菜大放出祭」26日から 9種の詰め放題系イベント開催2025年4月24日
-
JA蒲郡市と市内の飲食店がタッグ 蒲郡みかんプロジェクト「みかん食堂」始動2025年4月24日
-
適用拡大情報 殺菌剤「バスアミド微粒剤」 日本曹達2025年4月24日
-
倍率8倍の人気企画「畑でレストラン2025」申込み開始 コープさっぽろ2025年4月24日
-
農業・食品産業技術開発の羅針盤「農研機構NARO開発戦略センターフォーラム」開催2025年4月24日
-
雪印メグミルク、北海道銀行と連携「家畜の排せつ物由来」J-クレジット創出へ酪農プロジェクト開始 Green Carbon2025年4月24日
-
山椒の「産地形成プロジェクト」本格始動 ハウス食品など4者2025年4月24日
-
絵袋種子「実咲」シリーズ 秋の新商品9点を発売 サカタのタネ2025年4月24日
-
『花屋ならではの農福連携』胡蝶蘭栽培「AlonAlon」と取引 雇用も開始 第一園芸2025年4月24日
-
果実のフードロス削減・農家支援「氷結mottainaiプロジェクト」企業横断型に進化 キリン2025年4月24日
-
わさびの大規模植物工場で栽培技術開発 海外市場に向けて生産体制構築へ NEXTAGE2025年4月24日