人事2024 左バナー 
JA全農人事情報
左カラム_病害虫情報2021
新聞購読申込 230901
左カラム_コラム_正義派の農政論_pc
左カラム_コラム_米マーケット情報_pc
左カラム_コラム_地方の眼力_pc
左カラム_コラム_食料・農業問題 本質と裏側
左カラム_コラム_昔の農村・今の世の中_pc
左カラム_コラム_花づくり_pc
左カラム_コラム_グローバルとローカル_pc
左カラム_コラム_TPPから見える風景_pc
左カラム_コラム_ムラの角から_pc
240401・ニッソーグリーン マスタピース水和剤SP
20241106 ヨーバル pc
JA全中中央SP

栽培技術:現場の課題解決へ 注目のパートナー

【課題解決へ 注目のパートナー②】牛の健康AIが見守り デザミス「U-motion」2023年10月3日

一覧へ

牛の首に装着したセンサーで牛の動きをモニタリング、AIが採食や動態、横臥(おうが)などの行動に分類し、それらの変化から発情兆候や疾病傾向などを検知し営農を支援するシステム「U-motion」。開発したデザミス(株)は、効率的な牧場運営に寄与する経営改善ツールとして位置づけ、日本の畜産業全体を盛り上げたいと意気込む。このツールを活用している茨城県の華川牧場を訪ねるとともに、開発を担当した同社の小佐野剛取締役CTOに思いを聞いた。

首輪センサーで24時間 判断ベテラン並み

首のベルトに着いているのがモーションセンサー首のベルトに着いているのがモーションセンサー

死亡牛を減らしたい

茨城県北茨城市の山間部にある華川牧場はブランド牛「常陸牛」「花園牛」を育てている。肥育牛620~630頭のほか、繁殖母牛230頭、育成牛120頭を飼養している。子牛は外部導入もしているが、一貫生産をめざして繁殖母牛の頭数を増やしてきた。

U-motionを導入したのは2021年8月。代表取締役の小野真太郎さんは「過去にないほど肥育牛の死亡が続いていたから」と導入のきっかけを話す。

U-motionを導入した華川牧場の小野代表U-motionを導入した華川牧場の小野代表

朝、牧場に来ると牛が死亡していることもあったという。若い牛から出荷直前の牛まで死亡牛の月齢はまちまち。死亡の原因は不明だが、起立困難になった可能性も考えられた。そのためスタッフ全員で夜回りを続けて異常の発見に努めたが、朝からの仕事もあるため負担があまりに重く「身が持たない」状況に。近隣の牧場が導入したこともあり、起立困難な牛を発見する目的で導入した。

現在、首にセンサーを装着しているのは育成を終えて肥育段階になった14カ月齢以上の牛。

センサーによって24時間取得しているのは、採食、飲水、動態、起立反すう、横臥反すう、起立(静止) 、横臥(静止)。これらの活動データを牛ごとにグラフで確認することができる。

「人間が牛を観察するのは基本ですが、病気かどうかを早期に判断するのはなかなか難しい」と小野さん。牛を見て、何となく元気がないとは感じられても、食べる餌の量が本当に落ちているかどうかは経験がないとなかなか分からないものだという。

しかし、U-motionが提供する採食の時間をグラフで確認すると、明らかに時間が少ない牛が分かる。経験の少ないスタッフでも判断できるため問題のある牛にピンポイントで重点的に対処でき、体温の計測やビタミン剤の投与などができるという。

健康管理で経営安定

また、データに異常が認められたらアラートで通知する機能がある。小野さんが現在活用しているアラートは疾病アラートと起立困難アラートだ。

採食時間が短くなったり、ゼロの日があれば疾病アラートが出る。スタッフが農場に出勤してまず行うことは、自分の担当する牛にアラートが出ているかどうかのチェック。アラートが出ている牛は重点的に観察し必要な対処を行う。

「病気に気づかず手遅れになってしまったということがほとんどなくなりました 」という。

そのほか発熱で苦しい時の牛の動きは、このU-motionでは起立反すうの時間数に反映されることも分かったため、起立反すう時間が増えれば発熱を疑うこともできるようになったという。急に起立反すう時間が伸びた牛がいれば検温するなど早めに対応することができる。 導入のきっかけは起立困難な牛をいち早く見つけることだったが、採食時間を始めとしてデータに基づいて牛の健康管理に力を入れるようになったことから、死亡牛は導入前の半分以下、年間6頭程度まで減ったという。起立困難アラートが夜間に届くこともあるが、毎日の夜間の見回りはしなくなった。

小野さんは導入によって「なにより従業員の意識が変わった」という。データの助けを借りて、担当する牛の健康状態を把握し、疾病などを見逃さず、対処して出荷することでスタッフみんなにやりがいも出てきた。データを前にこの牛にはどう対処したらいいのかという相談も増えたという。

スタッフは肥育部門4人、繁殖部門6人、飼料生産部門1人。現在、地域の耕作放棄地を活用してデントコーンなど自給飼料の増産にも取り組み始めた。また、外部導入牛を減らし、繁殖母牛からの自家産牛を増やすこともめざしている。

「U-motionは牛の疾病を減らし事故率を下げることで、生産性の向上に活躍してくれている。 今後の経営の安定性を高めていきたい」と小野さんは話している。

行動指標化し事故率減

デザミスCTO  小佐野 剛氏デザミスCTO  小佐野 剛氏

デザミス(株)小佐野剛取締役兼CTOにU-motionの開発経過など聞いた。

――会社設立の背景や経緯を聞かせてください。

社長の清家浩二は、国内大手の電気メーカーでアグリ部門の営業を担当し、新しい牛舎の設計・販売や送風機などの販売をしていました。そのなかで本当に牛にとっていい製品かどうか疑問に思い、牛の気持ちを知りたいというのがきっかけです。そこでモーションセンサーを付けて行動をデータとして記録するU-motionを作るという着想に至ったということです。

牛の一生をデータ化して営農を支援していこうということですが、当時、その企業で製造することは難しく、独立してデザミスを立ち上げました。私はこれまでソフトウェアエンジニアとして仕事をしてきており農業には関係がありませんでしたが、畜産の現場を訪ねるなかで自分の技術が役に立つのであれば、と参画しました。

――開発はどう進めたのでしょうか。

U-motionはデータがないと始まらない製品です。そのデータを集めるためには牛の首にセンサーを付けてもらわなければなりませんが、センサーを付けてもらっても最初は価値提供ができませんから、畜産農家の協力をどう得るかが課題でした。ただ、それまでに知り合った畜産農家の協力を得てデータを集めながら実際に価値を提供できるということを証明し、さらに新しい農場に導入してデータを増やし、それをもとに機能を増やしていくという進め方をしてきました。

首にセンサーを装着するといっても簡単なことではなく、どんなベルトがいいのかということに悩みましたし、今でも改善を続けています。センサーの開発やデータ分析などはNTTテクノクロス社と一緒に行っており、精度の高いデータを提供できるようになるまでには1年近くかかりました。

最初は採食や反すうの時間、横臥時間など行動量を把握することから始め、酪農を対象に行動量が顕著に減ったことを捉えた疾病アラートや発情検知の機能などを提供しました。

その後、データがだんだん増えていくことによって繁殖、そして肥育に対応することができるようになり、起立困難アラートなども加えていきました。

――基本的な仕組みは、牛の行動の変化を捉えてアラートを出すということですか。

普段にはない活動を見つけるということです。たとえば寝ているはずの深夜に起きている、といった異常行動を検知するわけです。

それから発情期にはどういった行動が観察されるのかといったことを現場の農家のみなさんからヒアリングし行動の特徴を把握して、その行動を指標化して捉えるということも行っています。

たとえば起立困難の場合は、単に起き上がれずばたばたしているわけではなく、首の振り方が違うということを農家から教えてもらいました。それをフィルターとして行動データを分析し、より精度の高いアラートが出せるように実装してきました。

疾病アラートについてはどういう疾病かまでは検知できませんが、どの疾病にかかったとしても牛は元気をなくし普段と違って活動量が落ちるといった特徴が知られていますから、それを検知するということです。

活動量の推移をグラフで追っていくと、この牛はちょっとおかしい、普段の活動に比べてだんだんと減っていると判断できることもあります。それを自動化して一定の基準を超えたら疾病アラートとして知らせるわけです。

これによって人間が外見上では分からなかった牛の疾病を検知することができており、アラートを受けて実際に体温を計測したり獣医に見せたら病気だったという例があります。農家の方から「人間より早く検知されたことに震えが来ました」という話も聞いています。

分べんアラートは尻尾の動きをもとに発報されます 。現場のヒアリングで分べん直前に尻尾が上がるということが分かり、実際データを取ってみると特徴的な行動指標として使えるということになりました。分べんの2週間前から1週間前に尻尾にセンサーを装着していただければ、分べん兆候を検知するのに十分なデータが取得できます

深夜の農場見回りや分べんに備えて農場に待機するなど、牛を死なせないよう畜産農家のみなさんは努力されているわけですが、その負担は大変だと思います。私たちはこうした機器によってその負担を軽くすることができればと考えています。

あくまでも人間による牛の観察は大事ですが、1000頭規模の農場で一頭一頭しっかり観察するのは現実的ではないと思います。U-motionは一頭一頭の牛の行動を知ることができますから、行動などから異常を見つけてもらい重点的に観察するなど、人間の観察のサポート役として活用してもらえればと思います。

アラートもその一環です。今後も有用なアラートを増やしていきたいと考えています。

――日本の畜産現場をどのように変えていると思いますか。今後めざすことは何でしょうか。

疾病アラートを毎朝見たうえで牛舎に入るという現場の話がありましたが、今までの農場でのワークフローを変えたのではないかと思います。時間の節約や従業員の負担を減らすということに貢献できていると思います。

牛を観察することも一つの技術だと思いますが、U-motionの活用によって牛の行動がデータによって可視化されるため、新しい従業員の方にも牛の見方を伝えることができると思います。そういった技術の継承の面にも役立っているのではないかと思います。

U-motionも7年目に入りデータも相当蓄積されています。行動データだけではなく、たとえば温度や湿度といった環境データなど他社が持っているデータとU-motionが持っているデータを組み合わせて新しい発見につなげられないかと、現在、U-motion Platformという事業を進めています。

今後は各社と連携してデータを活用した新しい取り組みに挑戦し、畜産業界全体を盛り上げて、新しく畜産に就農したいという人が増えるようになれば、と考えています。

〈Uーmotionの導入費用〉費用は牛舎の規模や構造によって変動する。見積りは無料。まとまった初期費用がかからない分割での支払いも可能だという。

重要な記事

ヤンマーSP

最新の記事

DiSC:SP

みどり戦略

Z-GIS 右正方形2 SP 230630

注目のテーマ

注目のテーマ

JA共済連:SP

JA人事

JAバンク:SP

注目のタグ

topへ戻る