栽培技術:現場の課題解決へ 注目のパートナー
【課題解決へ 注目のパートナー④】水田の水管理 スマホで自在 farmo① 水位、水温、給水、データ収集まで2023年12月25日
「注目のパートナー」シリーズ4回めでレポートするのは、水田の水位や水温、さらに給水まで自宅からスマホで点検、操作できる機器を開発したfarmо(ファーモ=本社・宇都宮市)。農家のためのIT企業を理念に掲げている。めざすことは何か、現場を訪ねた。
水位、水温、給水、データ収集まで
移動時間が大幅減
水田に設置したセンサーが超音波で水位を計測、そのデータをクラウド上に飛ばし、農家はリアルタイムの水位がスマホで分かるというのが同社が開発した水位センサーだ。
宇都宮市の水稲農家、安納正広さん(45)は就農11年目。現在の作付面積は約12・5haで23年産はコシヒカリ(2.5ha)、とちぎの星(6ha)と飼料用米専用品種「北陸193号」(4ha)を栽培した。 同市内は都市化が進み、水田は郊外に広がり、安納さんのほ場も市内の北部、西部、南部に自宅から10km圏内に点在しており、車で30分ほどかかるところもある。
点在するほ場だが、隣接する農地を合筆し一筆平均32.6aに大区画化、現在は38枚で栽培している。田植えの時期はコシヒカリ、北陸193号、とちぎの星の順に4月から植える。
主食用米は密苗を導入しているが、苗が小さいため田植え後の水管理に気を使うという。田植え後の1カ月ほどは、朝4時に自宅を出て各ほ場を回り6時ごろに帰宅。そして夜は8時ごろから見回りを始め10時に帰宅するという日々が続いていた。労働時間のうち、いかに移動時間が多いかが分かる。
センサーが見守り
こうしたなか7年前、市と宇都宮大学、farmо社が水位を計測する仕組みを開発するという実証実験に安納さんは参加することになった。そこで水位センサーを利用してみると「スマホで水位が管理できることを実感」し、現在は9割のほ場に36台導入している。 水管理は大事だが、田んぼへの見回りは必要なときに限ることができるようになった。「必要なとき」というのは大雨の後などだけではなく、スマホに示された水位データが異常値を示すときのそれに当たる。
「たとえば、水の減り方がどうもおかしいなと思うと、モグラが穴を開けていたということもあります。データ管理によって、いわば事故防止ができると思います」と話す。
その後、遠くの田んぼでも自動で給水と止水ができる給水ゲートが開発されたことから4カ所に導入した。
これによって現場には「1週間に1回いけばいいほう」と労力が軽減された。さらに除草剤などの散布も効果的に行えるようになったという。
操作は全て自宅で
散布前には水位をやや高くしておき、その後、散布するが給水ゲートによって自宅から操作、さらにポンプから給水される水の量から、どのくらいの時間で必要な水位になるのかも計算できる。適切な時間に現場に行くことが可能になるなど、作業が計画的になり、時間の節約にもなっているという。
安納さんはコシヒカリは飲食店などへ独自に販路を開拓、とちぎの星は加工用米と輸出用米に販売している。飼料用米と合わせて米で農業経営を継続させていきたいと考えている。その際には飯米の品質向上と「少しでも作業の手間を減らすことが課題」でそのどちらにも水位や水温を自動で計測するなど、データの活用は欠かせないという。
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