栽培技術:現場の課題解決へ 注目のパートナー
【課題解決へ 注目のパートナー④】水田の水管理 スマホで自在 farmo② 農家の理想を技術で実現2023年12月25日
スマホ一つで点在する水田の水管理ができる機器を開発したfarmoの永井洋志代表取締役にインタビューした。
――水位センサーなど開発のきっかけから聞かせてください。
永井洋志代表取締役
もともと農業とは関係のないアプリ開発をするインターネットサービスの会社でしたが、大谷石の採石場跡に溜まっている地下水を活用してイチゴを作るという宇都宮市の実証事業に参加していた農家から、水温センサーができないかと声をかけられたのがきっかけでした。
そのときはセンサーで計測した水温と気温、地中の温度のデータですが、それをクラウド上にあげてスマホで見られるようにと考えて開発しました。農家からは自宅でもデータが見えると喜んでもらいました。とくに新規就農の方だったということもあって、家に帰るとハウスのことが心配でしようがないということでしたが、これは安心できると評価を得ました。
その後、いろいろな相談を受けるようになるうち、宇都宮市から水田で何かできないかと言われました。実際に田んぼを回って水管理の大変さを知り、水がどのくらい入っているかが計測できれば楽になるのでは、と提案し6戸の農家と市、大学とともに実証実験に取り組みました。7年前のことです。
これが今の水田ファーモの始まりですが、田んぼには電源がありませんから、それをどうするかから始まり、太陽光で発電、基地局を立ててそこにデータを送るといった仕組みを一から開発していったということです。 最初は不具合もたくさん出ましたが、それを直して直してと改良してみなさんから評価されていったということです。
こうしたなかで農業にはいろいろな課題があることを知り、2015年に農業専門のIT企業として活動を始めました。
開発は農家のみなさんと話をしながら進めてきましたが、そのなかで水位と水温が「見える化」できればいいということになりました。一方で所得を聞くと田んぼ一枚にそんなにお金をかけられないということも知り、1台2万円を超えると難しいと感じ、とにかくシンプルに必要な機能に絞っていきました。
その結果、水位だけを計測するセンサーとして発売し、その後、必要があれば水温も計測できる機種を選択できるようにしました。
これで水がどれだけ入っているかはスマホで分かるようになりましたが、農家から半分冗談で「家にいて水を入れられたら楽なのに」と言われて、それもそうだなと考えて開発したのが「給水ゲート」です。データをクラウドに送信することができるのだから、逆にクラウド側からモノを動かせないかと思い開発に取り組みました。
ただ、最初の2年間は失敗続きで、結局、思いついたのは水口にホースをつなぎ、それを上から挟んで水を止め、やめれば水が流れるという装置です。それをスマホで操作する。これならコストも抑えられるし、簡単に設置もできます。まさに農家のみなさんと話し合って開発したということで、いわば農家さんとは開発メンバーのような関係です。
――このサービスは、通信費はかからない?
インターネットを使えば通信費がかかりますが、これがかからないように工夫したのも特徴です。今の仕組みは半径3km程度をカバーする基地局を置いて、各水田のセンサーからそこにデータを送信し、それからクラウド上にあげています。農家のみなさんはスマホからクラウドにアクセスしているわけです。
その基地局のコストは当社が負担することにしました。水位や温度などのデータは画像のように重いデータではありませんから、通信費は当社が負担、農家のみなさんには通信費がかかっていません。これからの時代の農業は通信費がかからないインターネット環境が絶対に必要だと思い、今、北海道から九州まで基地局を整備しています。
まだ設置されていない地域には無料で基地局を貸し出しています。宅配便で送って農家が空いている土地に設置する。半径3kmをカバーしていますから、周辺の農家も使えるようになります。コストを抑えながら、みんなでデータを活用した農業を進めていくということです。
――どんな企業理念を掲げていますか。
「知恵と技術と心で人を幸せにする企業」です。先ほど話した給水ゲートもそうですが、田んぼに自動で水を入れるなんてできるのかと思ったわけですが、現場で知恵を絞るといろいろな解決策が出てきます。
会社のミッションも「農業と地域のスマートな未来環境を作る」です。今後の農業をどんな姿にしていくかを考えていきたいということです。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(139)-改正食料・農業・農村基本法(25)-2025年4月26日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(56)【防除学習帖】第295回2025年4月26日
-
農薬の正しい使い方(29)【今さら聞けない営農情報】第295回2025年4月26日
-
1人当たり精米消費、3月は微減 家庭内消費堅調も「中食」減少 米穀機構2025年4月25日
-
【JA人事】JAサロマ(北海道)櫛部文治組合長を再任(4月18日)2025年4月25日
-
静岡県菊川市でビオトープ「クミカ レフュジア菊川」の落成式開く 里山再生で希少動植物の"待避地"へ クミアイ化学工業2025年4月25日
-
25年産コシヒカリ 概算金で最低保証「2.2万円」 JA福井県2025年4月25日
-
(432)認証制度のとらえ方【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年4月25日
-
【'25新組合長に聞く】JA新ひたち野(茨城) 矢口博之氏(4/19就任) 「小美玉の恵み」ブランドに2025年4月25日
-
水稲栽培で鶏ふん堆肥を有効活用 4年前を迎えた広島大学との共同研究 JA全農ひろしま2025年4月25日
-
長野県産食材にこだわった焼肉店「和牛焼肉信州そだち」新規オープン JA全農2025年4月25日
-
【JA人事】JA中札内村(北海道)島次良己組合長を再任(4月10日)2025年4月25日
-
【JA人事】JA摩周湖(北海道)川口覚組合長を再任(4月24日)2025年4月25日
-
第41回「JA共済マルシェ」を開催 全国各地の旬の農産物・加工品が大集合、「農福連携」応援も JA共済連2025年4月25日
-
【JA人事】JAようてい(北海道)金子辰四郎組合長を新任(4月11日)2025年4月25日
-
宇城市の子どもたちへ地元農産物を贈呈 JA熊本うき園芸部会が学校給食に提供2025年4月25日
-
静岡の茶産業拡大へ 抹茶栽培農地における営農型太陽光発電所を共同開発 JA三井リース2025年4月25日
-
静岡・三島で町ぐるみの「きのこマルシェ」長谷川きのこ園で開催 JAふじ伊豆2025年4月25日
-
システム障害が暫定復旧 農林中金2025年4月25日
-
神奈川県のスタートアップAgnaviへ出資 AgVenture Lab2025年4月25日