高収量めざし多品目で篤農家技術を活用【全農「ゆめファーム」事業】2021年10月4日
JA全農は、魅力ある営農モデルの確立をめざす「ゆめファーム」プロジェクトを進めている。施設園芸の経営モデルを実証・確立するもので、次世代農業育成への期待が高まっている。環境制御システムを通じた収益性の高い「ゆめファーム」事業を紹介する。
JA全農 施設園芸の収益向上へ
「施主代行」方式で施設・資材サポート
1. ゆめファームパッケージについて
全農は、平成25(2013)年度より高収量技術および大規模運営ノウハウの構築を目的として「営農実証プロジェクト(ゆめファームプロジェクト)」をスタートしました。実証用の施設面積としては1ha程度を目安とし、各地の優れた栽培技術をもつ篤農家との連携を図りつつ、トマト・ナス・キュウリの3品目を中心に展開しています。各ほ場で目標収量を達成し、多品目での日本トップレベルの高収量技術を確立しています。
一方で高収量を実現するうえでは、栽培技術や運営などのソフト面はもちろんですが、そのソフトを最大限生かすことのできる施設や設備機器、資材などハード面の存在が重要となります。栽培技術が高くても、施設自体の規模や構造、必要な設備や資材が備わっていなければ、技術に見合った収量や経営は望めません。
本会では、適切な施設や資材を選定するために、最新の情報を国内だけでなく世界各地から収集し、各実証ほ場で実際に機器や資材を導入して、栽培上での運用や評価をおこなっています。今後はその実証結果を踏まえ、推奨する施設・機器・資材として生産現場に提案していくこととしています。
実証踏まえ現場に提案
ハード面での新しい取り組みとして、令和3年4月から耕種資材部内に「グリーンハウス推進室」を設置しました。園芸施設の専門部署として、生産者(施主)が施設を建てる計画の段階から基本的な設計の作成、工事の施行(業者選定や入札など)、施工管理(工事の進捗〈しんちょく〉管理など)、施設の引き渡しといった一連の業務を、施主から委任を受けて実施します。
この施主の立場で支援する「施主代行」方式により、生産者の要望に沿った園芸施設の建設をすすめていきます。
資材においては、本会子会社である全農グリーンリソース(株)において、ゆめファームにて実証された機器や資材の取り扱いを開始しています。(次章で具体的な資材を紹介いたします)
優良資材を厳選し世界基準をクリア
全農では、施設園芸をスタートしたいという生産者に対して、ゆめファームで培ったノウハウやデータを生かし、ソフト(栽培技術・運営)とハード(施設・資材)の両面からサポートする「ゆめファームパッケージ」の普及を目指していきたいと考えています。
2.全農グリーンリソース(株)が取り扱う商品について
近年の施設園芸では、トマトやパプリカ、ナス、キュウリなどの果菜類を中心に土壌以外の培地を使用し、肥料成分や水分を供給する養液栽培が増えてきています。特に、温室内環境を高度に制御できる高度施設園芸への注目が高まっています。そこで全農グリーンリソース(株)では、全農が進める「営農実証プロジェクト(ゆめファームプロジェクト)」の一翼を担うべく、2018年10月からオランダのロックウール社製Grodan(取り扱い製品の登録商標)ロックウールの販売を開始した事に加え、2021年4月よりオランダのリダーグローイングソリューションズ社製の環境制御システムの取り扱いを開始しました。
【ロックウール】
ロックウールは主原料である玄武岩などを高温で溶融・繊維状にして製造する人工培地です(写真1)。ロックウールを用いた養液栽培は、繊維の編み込む方向や密度により保水性が異なることから、環境や作目にあわせた製品選択が可能となります。また、作替え時に培地を更新することで、土壌栽培で心配される連作障害や病気の発生リスクを軽減する事ができます。
(写真1)Grodanロックウール(上:ブロック、下:スラブ)
Grodanロックウールの特徴は、(1)製品自体の均一性が高い(2)植物から、根から利用できる水を豊富に保有できる(3)培地内の水分や肥料分を均一にできる(4)水分管理がしやすい――などが挙げられます。
また、培地内の不純物も少ないことから、排液を簡単にリサイクルできるため水と肥料を節約する事ができます。
Grodanロックウールを用いた栽培は、生育ステージを6分割して水分管理を行う「6フェーズモデル」を提案しています(図1)。
(図1)Grodanロックウールの水分管理における「6フェーズモデル」
6フェーズモデルのポイントは、定植後は初期活着を促すために高い水分量とし、活着後には水分量を低下させて培地全体への根張りを促進させることにあります。
(写真2)グロセンスによる培地内環境の測定
また植物の給水量は、日々の天候や日射量によっても増減します。低日射時は、根を傷めないように水分量を低めに管理し、高日射時には高めに管理することが重要となります。
このように培地内の環境を正確に把握し、生育ステージにあわせた適切な水分管理を実施することで高収量・高品質を実現するため、水分計(商品名=グロセンス)の活用を推奨しています(写真2)。
グロセンスは、本体を培地に差し込む事で、水分量、EC、温度を測定できるほか、経時的にデータを記録することも可能となります。
【環境制御システム】
環境制御システムとは施設園芸のみに特化した世界基準のシステムであり、(1)環境制御装置(写真3)(2)かん水制御装置(写真4)(3)排液リサイクル装置(写真5)を組み合わせる事により、栽培管理の効率化および収量の最大化を目的とした複雑なプロセスである温度、光、風、CO2、かん水量、肥料濃度、排液リサイクル、などをソフトウェア(写真6)上で簡単にコントロールする事ができるシステムです。
(写真3)環境制御装置・(写真4)潅水制御装置
(写真5)廃液リサイクル装置・(写真6)ソフトウェア
JA全農が運営する高度施設園芸実証温室(ゆめファーム全農こうち、ゆめファーム全農SAGA)との連携の中で本商品に関する実証試験を行い、その性能、操作性について十分な機能が認められた事からリダーグローイングソリューションズ社製の環境制御システムの取り扱いを開始しました。
実証試験で培った経験をもとに顧客のニーズに沿った提案を行っています。
全農グリーンリソース(株)はロックウール、環境制御システムの販売を通じ高度施設園芸における生産者の収益向上に貢献していきます。
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