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農業技術のオリンピック盛大に 北海道・帯広2014年8月6日

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第33回国際農業機械展in帯広5日間で20万人が来場

 7月10?14日の5日間、北海道帯広市で第33回国際農業機械展in帯広「次世代農業へ新たなる挑戦」が開催された。過去最多となる国内外119社・団体が出展し、最新の農業機械と技術が一堂に会した。今大会の開催は実に8年ぶりで、そのことも大きな注目点となった。初日は悪天候に見舞われたが、道内外から5日間でのべ20万人の農業関係者、生産者らが来場した。

苦難乗り越え8年ぶり

 

主催者・来賓によるテープカット

(写真)
主催者・来賓によるテープカット

 

◆開会セレモニー 農業支える農機の進歩

nous1408060403.jpg 国際農機展の主催は、ホクレン、北海道農業機械工業会、十勝農業機械協議会だ。これまで帯広市で4年に1度開催していたが、4年前の平成22年に予定されていた第32回は、口蹄疫の発生で急遽順延。翌年には東日本大震災の影響で、結局中止となった。
 開催委員会の有塚利宣会長(JA帯広かわにし組合長)は開会式のあいさつで、8年ぶりの開催にこぎつけられたことに対し感謝の気持ちを表すとともに、「日本農業の発展は、省力化や高い生産効率を実現した農業機械の進歩があったからこそ。ぜひ、日本の高水準なモノづくりの粋を存分に見てほしい」と参加者らに呼びかけた。
 さらに、「国内外の農機メーカー同士が技術交流、情報交換するとともに、現場や研究者の声を伝える重大な場でもある。現場だけでなく日本農村医学会、土地改良学会、草地学会などあらゆる農業関係の研究機関が、さまざまな提言を出す。そのテーマを実現した農機を4年後の開催に向けて競って開発してもらいたい。まさに農業技術のオリンピックだ」と、今大会を機に、さらに農機の技術開発を進めてほしいと期待した。
 来賓では、吉川貴盛農林水産副大臣が「ロボットやICTなど異業種の優れた最新技術を取り入れた農機は、超高品質、低コストなスマート農業の実現につながる」と期待し、高橋はるみ北海道知事は「農機メーカーのたゆまぬ技術開発が日本農業を支えてきた。北海道は食産立国として、基幹産業である農業をこれからも支援していく」と力を込めた。
 出展メーカーを代表して日本ニューホランド道東営業部の後藤勝造副部長は、「たくさんの生産者、関係者の声を頂き、今後の開発に役立てたい。十勝から世界に向けて最新技術を発信したい」と意気込みを語った。


(写真)
開幕セレモニーで「馬から機械へ」の歴史をアピール

 

◆大型トラクター 「将来に夢持てる」

 北海道で開催された農機展らしく、来場者らを出迎えたのは威圧感さえ感じる超大型農機の数々だ。各ブースで大型農機に試乗した来場者らは、一様に、その大きさに驚嘆の声を上げていた。
 日本ニューホランドは、トラクタでは昨年発売した140馬力以上のT7シリーズ、最大340馬力の機種まであるT8シリーズ、市販機の中では最大の大きさをほこる824馬力の自走式フォーレージハーベスター(粗飼料収穫機)を出展した。
 エム・エス・ケー農業機械は、CLAASの大型ハーベスター「ジャガー」やコンバイン「レキシオン」のほか、今年から販売を始める新型トラクターでMASSEY FERGUSON(ファーガソン)のMF5600、6600シリーズ、FENDT(フェント)のF516VARIOなどを出展。「コンパクトかつパワフル」が特長の3気筒で最大105馬力のMF5610、4気筒で最大160馬力のMF6616に注目が集まった。
 井関農機は、国内初のブルーメタリックカラーが特長のトラクタTJW120や、TJV983といった人気のT.Japanシリーズの最新モデルチェンジや、今後発売する新商品としてドイツ・アマゾーネ社製の新型ブロードキャスターZA―TSを展示。この新型ブロードキャスタは同社の最上位機種で、非常に精度の高い肥料散布を能率よく行うことができる。ISO-BUS対応でトラクタのメーカーを問わずに接続できるほか、アタッチメントなしで境界散布と通常散布を実現するなど、最先端の技術が取り入れられている。
 そのほか、大型トラクタでは、クボタが将来的に国内での販売もめざしているグローバル畑作市場参入に向けて開発中の170馬力以上の新型モデルを参考出展。コーンズ・エージーは高級車で有名なイタリア・ランボルギーニ社製のトラクタを出展し、注目を集めた。
 地元十勝で畑作を営んでいるという男性は、「1台で家1件建つような高額な大型農機を今すぐ買えるような生産者は、十勝でもそうはいない。だけど、いつかこんな農機に乗りたい、という夢をもらえた」と、これからの営農に意欲が沸いたと目を輝かせていた。

 

◆ロボット、ICT 営農支援の新システム

開幕セレモニーで披露された無人トラクター。大勢の人が沿道に集まった。 今回、世間的に大きな注目を集めたのは、最新のロボット技術やICTなどを取り入れた新型の農機やシステムだった。
 オープニングセレモニーに登場したヤンマーと北海道大学が共同で開発している無人トラクタも、その一つ。セレモニーでは、障害物を除けながらのスラローム走行や、人が前に出てきたときに急に止まるなどのデモ走行を披露し拍手を浴びた。ヤンマーブースでも、連日、ブームスプレヤーをつなぎプログラムに従って走行、散布を行うデモを披露し、多くの人だかりができていた。デモ走行を見ていた来場者は「そのうち、休憩しながらとか、夜寝ている間にトラクタを動かすことができるようになるのだろうか」と、さらなる開発に期待を寄せていた。
 ICTの利用では、GPS情報やタブレット端末などを駆使し、農機の稼働記録や作物の生育状況などを管理、分析し、より売れる農産物づくりや、記録・分析や事務作業などを簡略化しようという営農支援のシステムを各社がこぞって出展。
 大手メーカーではクボタがKSAS(クボタ・スマート・アグリ・システム)、井関農機がISEKIアグリサポート、ヤンマーがスマートアシストを提供している。そのほか、ジオサーフはカーナビのようにマップベースでトラクタの走行などをガイダンスする「AG-Rider」と、それに接続してトラクタの自動操舵も可能にする専用ステアリングアシストシステム「AG-GEAR」、酪農機器メーカーのオリオン機械は乳量計付き搾乳機や自動給飼機などをPCで一括管理するソフトと連動させる次世代管理システム「チャレンジマン20P」を出し、多くの人が説明に耳を傾けていた。

(写真)
開幕セレモニーで披露された無人トラクター。大勢の人が沿道に集まった。

 

◆十勝の農機メーカー 府県でもニーズ高まる

 一方で、生産者の関心をより多く集めていたのは、既存の収穫機や草刈機と、それに改良を加えた新型の農機だ。
 十勝地方では、いわゆる畑作四品(麦、ビート、バレイショ、大豆)の輪作や酪農などに代表される営農が主流だ。十勝に本社を置く農機メーカーでは、こうした営農体系に特化し、専門的で高いシェアを誇る農機を開発している。
 これらの農機は、これまで道内での流通が主流だったが、近年、府県でも大規模化や法人化が進んだこともあり、こうした農機のニーズが高まりつつあるという。
 例えば、日農機が開発している豆、ビート類用のカルチベーター「草刈るチ」は、畦間の除草だけでなく株間を整えることもできる汎用性の高い機械だが、近年、府県の産地からも問い合わせが増え、販売台数が年々増えている。
 土谷特殊農機具製作所は家畜排せつ物を利用したバイオガス発電プラントや移動氷室など、エネルギー分野での新製品を多数開発している。バイオガスのプラントはすでに道内16カ所で稼働しているが(26年6月現在)、来年には初めて本州の酪農家に導入される予定だ。
 また、有塚会長も語っていたが「十勝でも否応なく、高齢化や生産者戸数の減少が続いている。労働力不足を補えるよう、作業工程を少しでも省略できるような、ちょっとした工夫が現場では求められている」。
 東洋農機はこれから発売する新型機として、新型振り子を搭載し圃場の凹凸に影響を受けずに均一に薬剤を散布できるけん引スプレヤー、製品タンクを3tへと大型化しさらに高速運転も可能にしたオフセットポテトハーベスタなどを展示。
 また、道内でのポテトプランターのシェアを9割近くもつ十勝農機は、自動で種イモをカットし均一に播種していく全自動ポテトカッティングプランターに、カッターを簡単に取り外せる新型モデルを参考出展するなど、それぞれロングヒット商品の改良モデルを出展し、注目を集めていた。

 

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