肥料の製造工程に踏み込んだ品質管理態勢を構築2015年12月14日
太平物産問題でJA全農
JA全農は12月11日に記者会見を行い、太平物産の肥料品質問題について、11月5日会見以降の肥料回収。代替品供給状況、農産物への影響と補償、外部弁護士による太平物産に対する調査結果と再発防止・品質管理の強化などについて報告した。
太平物産肥料の、農家、JAおよび全農の在庫は約1万6200㌧あったが、11月30日現在全体の40%に当たる6463㌧を太平物産に返品し、今後も早急に回収を進めていくとした。
代替品については、年内に必要とされる241銘柄についてはすでに決定し出荷している。来春に必要な557銘柄については74%が決定済みとなっているという。
農産物の補償については、太平物産製の肥料を使用して栽培され、「有機農産物」「特別栽培農産物」と表示して販売済みまたは出荷予定の農産物、交付金対象となる生産者については、以下のとおり補償する。
▽出荷予定の農産物:「有機農産物」「特別栽培農産物」の表示が可能となるまでの期間、「慣行品」への変更にかかる費用および「慣行品」との価格差にもとづく金額。
▽販売済農産物に対する補償:該当肥料の使用および価格差の補填が必要と確認され、取引先を通じて消費者に対し返金を行った金額。
▽環境保全型農業直接支払交付金:交付金の対象から外れた場合についてはその金額。
補償金額はまだ正確には集計・把握されていないが、全農によれば「おそらく10億円を超える」と予想されている。全農としては、「補償した金額の全額を太平物産に求償する」ことにしている。
全農ではコールセンターを設置して、苦情・相談に対応しているが、300件ほどの電話がありうち消費者からのものが半数の150件ほどあったという。その内容は「太平物産の肥料を使用した農産物は安全か?」というものが多く、苦情・クレームはほとんどないという。
太平物産の問題を受け、全農では肥料メーカーに対する書面調査および立入検査を実施。その結果、6社で全農との契約と異なる原材料や配合割合で製造するなどの問題があることが判明した。しかし、主要成分は確保されており、有機割合の変更はなく、特栽農産物などに影響し、消費者、生産者に損害を与える事例はないという。これら6社については、農水省がFAMIC立入検査結果、指導状況を公表し、法違反があった肥料については自主回収を行い、その結果を報告するよう指導通知している。
全農では、これまで肥料取締法を前提に、各メーカーに全農として守ってもらうべき品質の考え方を提示し、遵守をもとめるというように、メーカーとの信頼関係をもとに取引をしてきた。
そのために、太平物産などのように、意図的に製造設計を変更された場合には、不正行為を未然に発見・是正することは「困難な実態にある」とし、今後は「製造工程に踏み込んだ実効ある品質管理態勢を構築」していくことにした。
その実施具体策は次の通り。
(1)品質管理体制について:品質管理専任部署の設置
(2)品質管理強化の考え方:▽ガバナンス体制など取引先のリスク度合いを評価▽有機肥料等肥料の種類によるリスク度合を評価▽上記の両面から、重点的にチェックする銘柄・メーカーを特定し、優先順位を付けて管理
(3)実施事項
▽メーカー事業点検(書面)▽工場立入調査の実施▽製品管理機能を強化する覚書の締結▽メーカー研修会の強化▽全農マーク添付基準の厳格化。
なお、太平物産に対する外部弁護士などによる調査結果の内容については別掲する。
(関連記事)
・会社ぐるみの不正行為と断定 全農 太平物産「調査報告書」 (15.12.15)
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