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牛の移動ルートを自動形成 北海道でスマート酪農実証実験2020年8月24日

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北海道札幌市のスタートアップ、(株)INDETAILと(株)宇野牧場(北海道天塩郡天塩町)は、酪農における乳牛の放牧をドローンとAIで行う「スマート酪農」の実証実験を今秋に行う。同実証実験を行うにあたり、両社は5月20日付けで共同研究契約を締結した。

牛の移動ルートを自動形成 北海道でスマート酪農実証実験

酪農には大きく分けて「放牧」と「舎飼い」という2つの様式がある。しかし、気候が良く広大な土地に恵まれた北海道でも「放牧」を取り入れている牛飼養者は半数ほどと少なく、全国的に見れば国内の牛飼養戸数の2割以下となる。

一方、酪農先進国のニュージーランドでは、酪農といえば「放牧」が基本。放牧地の合計面積は約1300万ヘクタールにおよび、国土面積のおよそ半数を占めている。加えて、国の人口が約490万人と少ないため、国内で搾乳される生乳や乳製品の約90%を国外へ輸出しており、その輸出量は単一国としては世界第1位を誇る。

「放牧」には「舎飼い」とは違い、牛が病気にかかりにくく、その生乳は栄養価が高く、草の香りがあり後味が軽やかになるとも言われる。また、低コストや省力化などのメリットもあることから、日本では近年、農林水産省が放牧を推進するといった動きもある。

天塩町で酪農を営む宇野牧場は創業以来20年以上にわたり放牧での生乳づくりにこだわっているが、160ヘクタールもの広大な牧草地で行う放牧には、牧草の管理(生育状況の把握・草刈り)やその日の放牧エリアの区画整理といった大変な管理業務が必要となる。また、毎日、乳牛の管理もある中、人手不足により多忙であるだけでなく、後継者不足の問題もある。
同実証実験ではこうした課題に対して持続可能な酪農運営の可能性を検証する。

「スマート酪農」は、宇野牧場が持つ広さ160ヘクタールの広大な放牧地を区画し、ドローンが各区画の牧草を撮影。その撮影データから牧草の生育具合をAIで自動判別し、その日の最良な放牧エリアを選定。各区画の境界線にはリモートで制御可能なゲートが設置されており、AIが放牧エリアを選定したあとは、各ゲートの開閉によりその日の放牧エリアを自動形成する。

構築基盤には、オラクルクラウドを採用。また、今後のサービス拡大に向け、高速で効率的な運用管理が可能な「Oracle Autonomous Database Cloud」の活用も視野に入れており、コンテナ化されたアプリケーションの統合管理や、AIのためのデータサイエンス基盤など将来的な拡張性と親和性も高く評価している。


サービス構築イメージサービス構築イメージ

「スマート酪農」の実証実験で期待される効果は次の通り。
1.時間短縮・人件費の削減
放牧エリアの選定は酪農において最も重要な作業のひとつ。現状では、放牧地の選定を含む放牧作業は人力で行っているが、ここにドローンやAIを導入することで、乳牛の日ごとの食育量の管理や、刈り取りに必要な草量や肥料の適正量が迅速に把握できることから、それらにかかる人件費の最適化を果たすことができる。

2.牧草地の利用効率の向上
広大な牧草地でもドローンによって生育状況を把握できるため、人間の目では困難だった高い網羅性でその日の放牧エリアをスピーディに選定できる。牧草地全体を余すことなくフィールドととらえることで、牧草地の利用効率を最大限に高めることが期待される。

3.牛の健康維持
放牧する乳牛に対して提供する草が多すぎてしまうと、食べ残された牧草を刈り取る手間が発生するが、逆に少なすぎる場合には、乳牛の搾乳量を最大限に引き出すことができなくなり、乳牛の病気につながることもある。高性能カメラによって集められる詳細なデータから、適正な牧草量を提供することは乳牛の健康維持にも貢献すると考えられる。

4.スタッフの安全
宇野牧場では放牧地を移動する際にバギーを利用するが、ほぼ自然の地形を活かした放牧用地ではバギーの激しい揺れや横転による事故リスクがつきもの。さらに敷地内には電気柵が点在しており、この柵への誤接触も絶えない。人に代わってドローンがフィールド内を選定することで、スタッフはこれらの事故リスクから解放され、より安全な環境で酪農運営に携わることができる。

5.ビッグデータの活用
ドローンで撮影された画像や動画をビッグデータとして蓄積し、フィールドの状態を長期的な視野で分析可能とすることで、これまでよりも安定した牧場経営の実現を図ることが可能となる。

すでに7月からドローンによる空撮などで現地調査を行っており、9月下旬~10月上旬ごろからスマート酪農の実証実験を開始する予定。また、放牧による安全安心な生乳の国内比率を高めていくことを目的に、将来的には農業法人を立ち上げ、放牧酪農への新規参入も図っていく。
搾乳の自動化は、すでに多くの酪農家が取り組んでおり、牧草の管理においては未だ自動化が進んでいない。その指標となる考え方や管理基準なども統一化されていないことから、同社は、今回の実証実験の意義は大きいとしている。

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