酪農生産のDX化を実現 自社牧場で生産開始 ファームノートHD2020年9月7日
酪農・畜産向けIoTソリューションを提供する(株)ファームノートホールディングスの子会社で、(株)ファームノートデーリィプラットフォームは、北海道標津郡中標津町に自社牧場を立ち上げ、酪農生産を開始した。
自社牧場外観
自社牧場は、DXをさらに推進するためにIoT・AIソリューションの最適な活用方法と、牛舎設計から搾乳など自動化技術・牛の遺伝改良技術・疾病予防技術・繁殖改善など、酪農生産技術を高次に両立させパッケージングした酪農生産のDX化を実証する第一号牛舎となる。
小、中規模生産者の離農は著しく、過去10年間で戸数が30%減と酪農生産の基盤を揺るがしかねない状況にあり、長時間労働、生産性、設備投資などの課題に、IoTやAIの導入など高効率な酪農生産の実現が期待されている。
新たな牧場には自社グループの製品群に加え、最新鋭の搾乳ロボットや糞尿処理機械を導入。牛舎のレイアウトには海外の設計思想を採り入れ、働く「人」と「牛」に配慮した。効率的で生産性の高い牧場をめざし、そこで培われた生産技術を広く酪農生産者に提供していく。
自社牧場内観
![デラバル社製 搾乳ロボット](https://www.jacom.or.jp/shizai/images/nous20090704_3.jpg)
新牛舎の特徴
新牛舎は、従事者一人当たり、3倍の生産性を実現。これまで日本の牛舎では人と牛の最適な生産環境が設計レベルから追求されていなかったが、ファームノートDPは4dBarn社(フィンランド)の設計思想を取り入れ、自動搾乳ロボットを中心とした働く「人」にも「牛」にも配慮された生産性の高い牛舎を実現した。具体的には搾乳・繁殖・乾乳・分娩・育成・治療等の作業が一つの牛舎内ですべて完結するよう導線が設計されており、一般的な牛舎の4倍程度のソーティングゲートを設置・活用することで、作業者が1人でも牛の移動が短時間でスムーズに行える。その結果、牛舎内の総労働時間として1日あたり8時間程度、同規模の牧場の約1/3の時間で作業が可能になる見通し。
IoT・AI技術の活用により高度なオペレーションを実現
新牛舎ではFarmnote Cloud、Farmnote Colorならびに自動搾乳ロボットを導入し、集積された生産データを分析。牧場業務オペレーションの高効率化を進めている。
Farmnote Cloudにより生産データを可視化、全ての従業員に分析結果が共有され、Farmnote Colorによって誰でも発情や疾病兆候といった牛の状態変化を発見できる。さらに搾乳ロボットによる搾乳作業の自動化や整備されたオペレーションマニュアルによって従業員の習熟度にかかわらず業務の再現性が向上し、業務の最適化と従業員教育の効率化につながる。
また、生産データの共有に加えて、クラウドカメラによる牛舎状況のリアルタイムな観察と、ボディコンディションスコアカメラによる牛の栄養状態の自動分析によって、牧場管理者が遠隔から牧場の状況を適切に把握して従業員に指示を出したり、獣医師など専門家が遠隔から生産状況を確認して適切なアドバイスをすることも可能になった。
牛舎のリノベーションにより建築コストを半減
従来、酪農生産コストの約20%を占める減価償却費は主に牛舎建築コストが占めている。新牛舎では既存牛舎の改築というアプローチによって、同規模の牛舎を新築した場合に比べ約半分のコストで牛舎を建築した。リノベーションというアプローチは、酪農経営の競争力強化に繋げることができると考えている。
環境負荷の低減
新牛舎では、固液分離機により糞尿を処理し、分離した固形分を敷料として利用することで、排出される家排泄物を30%程度削減する。牧場から排泄される糞尿が減少することで、家畜排泄物による悪臭や水質汚染といった環境負荷の軽減と、敷料コストの圧縮という経済性を両立している。
動物の快適性に配慮
分娩前後の牛に配慮した牛舎設計、自動開閉カーテンによる暑熱対策、自動フットバスの設置による蹄病予防、常駐獣医師による疾病予防に重点をおいた牛群管理マニュアルの作成など、アニマルウェルフェアに配慮した飼養管理に取り組んでいる。
今後はファームノートDPの実証農場で、酪農生産の要である牛舎・人・牛それぞれの視点でデータ化と自動化を進め、酪農生産のDXを推進する。生産者戸数の減少が著しい小〜中規模生産者の生産性向上への後押し、経験の有無を問わず誰でも酪農経営が可能な世界をめざす。
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