空気中の二酸化炭素を農業分野に活用 共同実験を開始 CRRA×イノチオアグリ2021年2月25日
炭素回収技術研究機構(CRRA)は、イノチオアグリ(株)と提携し、空気中のCO2を回収する仕組みを利用した、全く新しい温室用CO2施肥装置の共同開発を始めた。農業分野におけるCO2活用に明るいイノチオアグリと、環境に負荷をかけないCO2回収の技術を活かし、新しい農業用のCO2回収と活用モジュールに関する共同研究。農作物の収量増加や品質向上と、地球温暖化防止、農業者のCO2施肥コスト削減が両立でき、2050年の温室効果ガスゼロ目標の実現にまで寄与することが期待される。
温室効果ガスによる地球温暖化が懸念される中、対策せずに温暖化が進むと、21世紀末に4度前後気温が上昇することが予測されている。温暖化は異常気象を引き起こし海水面を上昇させるだけでなく、農作物の収量減少や病原菌蔓延など、一次産業でて世界的に大きな影響を与えることが危惧されている。
農業にも悪影響を及ぼすとされる温室効果ガスの代表格であるCO2は、ビニールハウス内での濃度を通常の大気の2.5倍にすることで農作物の収穫量を最大3割増加させ、品質も向上させるという効果がある。しかし、一般に流通しているCO2施肥装置は化石燃料を大量に使用するため、環境への負荷が大きく、装置自体の効率も良いとは言えないのが現状だ。
CRRAとイノチオアグリの共同研究は、空気中のCO2を回収して必要な場所に効率的に使うことで、環境に負荷をかけずに農作物の生産性向上を目指すもの。CRRAは、2017年にCO2を直接回収する革新的な装置「ひやっしー」を開発。ボタン1つで誰でも簡単に空気中から二酸化炭素を集められる家庭用・オフィス用の世界初の装置で、今回開発するのは、「ひやっしー」を農業用に最適化した、CO2直接空気回収のモジュール。そこにCO2取り出し機能を付け加え、既存のCO2施肥装置に代わる「化石燃料不使用」のモジュールを作ることをめざしている。
モジュールの電源にも化石燃料は使わず、大部分は太陽光で補う。太陽光で補きれない場合は外部の電力を使用するが、現時点の「ひやっしー」でも、使った外部電力以上にCO2を回収できることが確認されている。
このCO2直接回収の仕組みが活用されるのは農業分野だけではない。すでにCO2は飲食や美容など様々な分野で活用されているが、空気からCO2を直接回収してサービス展開することは困難であると考えられており、既存のDACモジュールは、主に広大な土地面積を必要とする超大型と、比較的威力が弱い小型の2サイズでしか展開されていない。
今回、共同開発する空気中のCO2を直接回収できる中間サイズのモジュールを応用することで、CO2を利用した化粧品の開発、炭酸飲料の生産、消火器、水槽の炭酸ガスのカートリッジ、タイヤに充填するガスなど、多種多様な用途にCO2を役立てることができる。空気中に増え続けているCO2を味方につけ、様々な分野で活用していくことが、2050年の温室効果ガスゼロ目標の達成を実現させる、大きな鍵となる。
CRRA(シーラ)は、化学者・発明家で現役東大生の村木風海氏が機構長を務める研究機関。「地球を守り、火星を拓く」をスローガンに、世界に先駆けてCO2直接空気回収(DAC)技術に取り組む他、空気中のCO2から石油を製造する研究、さらには人類が火星を開拓するための研究など世界最先端の独立した研究開発を行っている。
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