穀物相場の上昇で肥料原料も高騰-肥料をめぐる情勢2021年6月1日
JA全農は5月31日に6月から10月までの令和3肥料年度秋肥価格について軒並みの値上げを発表したが、背景には国際的な穀物相場の上昇を受けた旺盛な肥料需要があるが、中国の食料安定生産に向けた在庫買入れなども影響している。化成肥料は原料の大半を輸入していることから国際情勢で価格が変動する。
農水省が公表している穀物の国際価格の動向によると5月7日現在の価格は、大豆は595.6ドル/tとなっている。大豆は2012年に史上最高値となった650.7ドルを記録し、その後は世界的な豊作から価格は低下していたが、2020年の後半から南米の乾燥懸念、中国の輸入増加で上昇してきた。トウモロコシも上昇している。7日の価格は304.2ドル/tで2012年の史上最高値327.2ドルに近づいている。
こうした穀物価格の上昇を受けて海外の肥料原料の市況が上昇している。
JA全農によると、窒素質の原料であるアンモニアの国際市況は、中東での供給停止や、アンモニア生産向けの天然ガスの供給が北半球の寒波の影響で制限されたが。新型コロナウイルス対策でワクチン接種が進んだ国から経済活動が再開し需要が拡大しているという。そのため市況は上昇している。
尿素は、インド向けの需要増加や、穀物価格上昇による米国国内の肥料価格の急騰、原油価格回復で年明け以降、急激に上昇した。その後、春肥需要が一段落しピークは越したものの、今後もインドを始めとする旺盛な需要で市況は堅調に推移すると見られている。
りん安は、米国、ブラジル、インドの旺盛な需要に加え、中国の国内優先政策の影響による需給ひっ迫感と、穀物価格の高騰で昨年末以降、急激に上昇した。さらに米国が中国のほかにモロッコ、ロシアに対しても経済制裁のため輸入関税を課した。そのため国内の供給が制限されたが、米国農家は穀物相場が上昇しているため作付け意欲は高く、世界的にも旺盛な需要が予想されることから、相場は堅調に推移すると見られている。
塩化加里は、ブラジルやインドにおける好調な需要や、中国の食料安定生産に向けた政府在庫の買入れを受けて上昇した。
また、パーム油の価格が10年来の高騰となっており、マレーシアやインドネシアではアブラヤシ生産に必要な塩化加里の需要がさらに高まると見込まれることから、サプライヤーは強気で値上げを打ち出しているという。
海上運賃の動向は、旺盛な鉄鉱石需要や穀物輸送が堅調であること、原油市況の上昇にともなう燃料油の値上がりから運賃市況が上昇している。
コンテナも、コロナ対策の検疫でコンテ船の稼働率低下から運賃が大幅に上昇するとともに、輸送に遅れが発生している。今後も輸送量の増加が見込まれており、海上運賃は堅調に推移すると見られている。
肥料と飼料の価格指数は基準年2015(平成27)年の100以下で推移してきた。2019年で肥料は98.0、飼料は97.3となっている。2020年から飼料穀物や肥料原料も高騰を見せている。輸入原料への依存を減らすことも課題となっている。
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