酵素パワーで生分解性プラ製品の分解を加速 農業用マルチの鋤き込みで効果を実証 農研機構2023年7月4日
農研機構は、生分解性プラスチックを分解する酵素を用いて、野菜の栽培に使う耐久性の高い生分解性農業用マルチフィルムを、畑に敷いたまま、分解を加速させる方法を実証した。フィルムは、酵素を散布処理した翌日には強度が下がり、壊れやすくなるため、土の中へ鋤き込み、分解を促す処理が容易になる。これにより、使用者が望むタイミングで生分解性プラスチックの分解を促進できれば、処理労力を画期的に低減。利用場面が広がり、ごみの削減に役立つ。
酵素パワーで生分解性プラ製品の分解を加速 農業用マルチの鋤き込みで効果を実証 農研機構
生分解性プラスチックは、最終的には水と二酸化炭素まで分解される高分子化合物で、野菜を栽培する時に畑の表面を被覆する農業用資材のマルチフィルムでの使用が増加している。栽培終了後に、畑に鋤き込んで土壌微生物により分解させる処理ができるため、分解されないプラスチックで問題となっていた使用後に回収する労力と土で汚れたプラスチックの処理が不要となる。
生分解性のマルチフィルムは、様々な環境下で多様な野菜の栽培に用いるために耐久性の改良が進められているが、栽培期間中に壊れにくいように調節された製品は、使いやすい反面、使用後の分解が遅くなる。
農研機構は、これまでに、生分解性プラスチック分解酵素を用いて、使用後の生分解性マルチフィルムの分解を加速できるかどうかを実験で確認。イネの葉や籾に常在する酵母菌であるシュードザイマ・アンタークティカ(Pseudozymaantarctica)が、生分解性プラスチックを分解する酵素(BiodegradableplasticdegradingEnzyme)を分泌することを発見し、その分解酵素をPaEと名付けた。
また、PaEが、生分解性マルチフィルム開発当初の素材であるポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)やポリブチレンサクシネート(PBS)、非結晶のポリ乳酸を分解することを見出している。
最近の生分解性マルチフィルムは、分解が遅い素材であるポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を主成分とする製品や、PBATよりさらに分解が遅いポリ乳酸(PLA)を添加した製品が増加。農研機構は、今回、PaEがPBATを分解することも見出した。
PBSA、PBS、PBATについてそれぞれの素材だけで作られたフィルムをPaE溶液に浸漬すると、フィルムは表面から分解されて、数時間以内にPBSA>PBS>PBATの順で薄くなり、重量が減った。これらの生分解性プラスチック素材を混合した市販の生分解性マルチフィルムも、PaE溶液に浸すと分解。畑の畝に展張した市販の生分解性マルチフィルムの表面にPaE溶液を散布する処理方法でも、翌日にフィルムの強度が下がった。
また、畑に鋤き込んだ後すぐに、土の中や表面から目視で回収できたフィルム断片は、酵素処理をしなかった場合に比べて、大きな断片が減り、総重量も減少。生産現場においても、酵素処理によってフィルムの分解が加速されることを明らかにした。
今後、生分解性プラスチックと分解酵素を組み合わせて使うことで、使用者が分解のタイミングを調整することが可能となり、農業用資材などの野外で用いるプラスチック製品などを土に還す、循環型社会の形成が期待される。
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