残渣型バイオスティミュラントで環境保全を推進「脱炭素地域づくり協議会」設立2023年9月8日
AGRISMILEは9月7日、農業協同組合、製造企業、金融機関などの多数のステークホルダーの参画を得て、同社が代表を務める「バイオスティミュラント活用による脱炭素地域づくり協議会(Eco-LAB)」を設立した。農業産地のニーズに対応したバイオスティミュラントの適切な活用を支援するとともに、カーボンクレジット取引の促進を目指す。
バイオスティミュラントは、政府の地球温暖化対策『GX戦略・みどりの食料システム戦略』にも掲げられている農業生産資材。植物本来の機能を引き出すことで環境ストレスを緩和させる特長を持ち、収量や品質の向上効果で注目されている。収量や品質の効果が見込めるため、化学肥料の使用量低減を実現する手段として期待を集めている。
このうち、食品残渣を原料として開発された残渣型バイオスティミュラントは、フードサプライチェーンの食品廃棄問題を解決しながら、農業生産量の拡大や化学肥料の使用量低減に寄与できるため、脱炭素社会の実現と、環境保全型農業の実現が両立できる画期的な生産技術。EUでは、2022年7月に「欧州肥料規則」でバイオスティミュラントを定義化し、EC圏販売するには、バイオスティミュラント商品にEU加盟国基準証明である「CEマーク」の取得を義務付けている。
Eco-LABは、日本の農業産地がバイオスティミュラントを活用しやすい環境づくりを行い、食品残渣を活用したバイオスティミュラントの社会実装を図ることを目的に、設立。「食品残渣BS開発コンソーシアム」「BS栽培検証コンソーシアム」「炭素クレジットコンソーシアム」の3つのコンソーシアムから構成され、各コンソーシアムの活動を通じて、地域を巻き込んだ脱炭素の取り組みを推進する。
同協議会の設立にあたり、代表者でAGRISMILEの中道貴也代表取締役は、「バイオスティミュラントのリーディングカンパニーとして我が国の普及をサポートしていきたい。当社の特許技術を用い、食品残渣由来のバイオスティミュラント開発や、作用メカニズムが解明された安全で信頼できる資材の利用推進、栽培活動が生産者の所得向上に繋がる仕組みづくりを行い、農業界に貢献していく」とコメント。また、Eco-LABに参画する食品残渣BS開発コンソーシアム代表者のJAきたみらい大坪広則代表理事組合長は、「このコンソーシアムは、バイオスティミュラントが持つ可能性の一つを研究するにすぎないが、廃棄物をバイオスティミュラントという活用資源に変えるという画期的な取組で、その成果は農業界、食品製造業界の救世主になり得ると確信する」と話している。
Eco-LABの活動
また、BS栽培検証コンソーシアム代表者でJAはが野の国府田厚志代表理事組合長は「JAはが野では、以前からバイオスティミュラントを使用しており、収量や品質への効果を確認している。バイオスティミュラントは、高温障害や病気の軽減などの適応を期待できるが、商品によって効果が異なるので、特長や作用メカニズムを理解して、目的にあった資材を選択することが重要。現在、バイオスティミュラントと併用しながら、化学肥料の使用量を低減させる栽培計画を立てており、コンソーシアムの活動を通して、バイオスティミュラントの利用に関わる課題を解決していく」とコメント。さらに、炭素クレジットコンソーシアム代表者でJAとぴあ浜松の齊藤直司常務理事は「地域農業を将来にわたって持続可能なものとするため、環境保全型農業を実践し、炭素クレジット実現に向けた新たな農業の取り組みを進めることで農家組合員の所得向上を目指す」と話している。
◎Eco-LABの活動
(1)食品残渣BS開発コンソーシアム
食品残渣型バイオスティミュラントの開発と普及によって、食品ロス削減と再資源化を促進。農業生産・収穫段階に発生する残渣(収穫時の非可食部廃棄物や出荷基準を満たさない規格外廃棄物等)や、食品製造・加工段階に発生する残渣(製造過程の副産物や非可食部廃棄物等)など、大量に廃棄されている未利用資源について、再資源化の有効利用手段としてバイオスティミュラント資材開発を検討し、開発を進める上での課題解決を図る。また、農業産地が持つニーズと照らし合わせて、生産現場で利用し得る商品基準を協議する。
(2)BS栽培検証コンソーシアム
各地域・各品目におけるバイオスティミュラントの栽培技術を確立し、「みどりの食料システム戦略」にもとづく環境保全型農業を目指す。農業産地におけるバイオスティミュラント資材に関わる要望調査を行い、収量・品質の向上/化学肥料の使用量低減/土壌炭素貯留量などの影響について、客観的なデータを元にバイオスティミュラント資材を評価するとともに、生産現場に潜在するバイオスティミュラントの利用課題や問題意識に対する提言をまとめ、農業産地の発展に貢献する。
(3)炭素クレジットコンソーシアム
バイオスティミュラントを活用した農業産地や生産者が、炭素クレジットを受け取れる仕組みを整備。食品残渣を活用したバイオスティミュラント農法による温室効果ガス削減効果を算出し、Jクレジット制度を利用したカーボンクレジットなど、環境保全型農業の活動を可視化して資金循環をつくることで、農業従事者の新たな収益源・所得向上の実現を目指す。
<今後の計画>
2023年9月7日:設立総会
2023年9〜12月:各コンソーシアムの活動
・食品残渣型バイオスティミュラント開発の課題の提示
・農業産地のバイオスティミュラントに関する問題意識の提示
・炭素クレジットの方法論の考え方の提示
2023年1月:代表者会議
・各コンソーシアムのとりまとめと提言の議決
2023年2月:代表者会議
・各コンソーシアムの提言の最終案の合意
2024年3月:第二回総会
・活動状況と2024年度の活動計画案の提示など
<参画団体>
■農業協同組合
JA遠州中央
JAきたみらい
JAとぴあ浜松
JAはが野
JA三ヶ日町
■企業
株式会社AGRISMILE
ICS-net株式会社
株式会社ウェイストボックス
キユーピー株式会社
日本オーガニック株式会社
BIPROGY株式会社
株式会社パナソニックシステムネットワークス開発研究所
■金融機関
tsumiki証券株式会社
株式会社三菱UFJ銀行
重要な記事
最新の記事
-
【石破総理 新春インタビュー】政治の大転換期、新たな農業政策へ どう一歩踏み出すか(2)2025年1月1日
-
【石破総理 新春インタビュー】政治の大転換期、新たな農業政策へ どう一歩踏み出すか(3)2025年1月1日
-
【石破総理 新春インタビュー】政治の大転換期、新たな農業政策へ どう一歩踏み出すか(4)2025年1月1日
-
2025年度 農林水産関係予算 2兆2706億円 前年より20億円増2024年12月27日
-
【特殊報】モモほ場で「モモ果実赤点病」県内で初めて確認 愛知県2024年12月27日
-
【特殊報】ブドウにシタベニハゴロモ 県内の果樹園地で初めて確認 富山県2024年12月27日
-
【注意報】かぼちゃにアブラムシ類 八重山地域で多発 沖縄県2024年12月27日
-
米輸入めぐるウルグアイ・ラウンド(UR)交渉 過度な秘密主義に閣僚も「恥」 1993年外交文書公開2024年12月27日
-
1月の野菜生育状況 さといも以外の価格 平年を上回る見込み 農水省2024年12月27日
-
(416)「温故知新」【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年12月27日
-
東京23区の12月の消費者物価 生鮮食品の前年同月比は2桁増2024年12月27日
-
JA全農あきたがスマート農業研修会 農機・担い手合同は初2024年12月27日
-
【農協時論】石破新政権へ期待と懸念 地方創生自任し民主的な議論を 今尾和實・協同組合懇話会代表委員2024年12月27日
-
ブランドかんきつ「大将季」登場 銀座三越で「鹿児島の実り」開催 JA全農2024年12月27日
-
「鹿児島県産 和牛とお米のフェア」東京・大阪の飲食店舗で開催 JA全農2024年12月27日
-
【世界の食料・協同組合は今】化石補助金に対する問題意識(1)循環型社会 日本が先導を 農中総研・藤島義之氏2024年12月27日
-
【世界の食料・協同組合は今】化石補助金に対する問題意識(2)化石資源補助削減が急務に 農中総研・藤島義之氏2024年12月27日
-
【人事異動】日本農産工業(2025年4月1日付)2024年12月27日
-
TNFDを始める企業必見 農林中金・農中総研と共同セミナー開催 八千代エンジニヤリング2024年12月27日
-
「産直白書2024年版」刊行 記録的な猛暑で農業の難しさが顕著に 農業総研2024年12月27日