【農業機械安全性検査新基準の解説】機械の側から危険な作業をなくす 農研機構に聞く(2)2025年4月1日
農研機構は4月から、農業機械安全性検査を新たな制度で再スタートした。農作業死亡事故に占める農業機械による事故の割合は依然として多く、農業機械のさらなる安全性向上が求められている。そこで、農水省での議論をもとに主要な機種について新たな安全機能の装備を盛り込んだ安全性検査基準を策定し、受検者の負担軽減も盛り込まれた。新基準の背景となっている事故の具体的な事象や今後の取り組みを、農研機構の志藤博克安全検査部部長に聞いた。
安全性検査合格証
――受検者の負担が軽減された。
市販前検査や書類簡素化で負担軽減
検査基準強化の一方で、依頼者の負担軽減も図っています。例えば、馬力違いの乗用型トラクターのシリーズを受検していただく場合、代表的な型式だけを現物で確認し、残りは書面審査としていましたが、これは一連のシリーズ機が同時受検する場合だけでした。新年度からは、すでに受検したシリーズ機に続くシリーズ機が新たに受検する場合についても、既合格機と安全上の機能等が同様と認められる場合は、実機確認をせずに書面審査のみとします。また、従来は市販段階の農機を検査していましたが、検査結果で手直しが必要になると、それまでに生産した市販機すべてを直す必要があります。そこで、ほぼ完成品と同じ構造であることを条件に、市販化前のプロトタイプでの受検も受け付けることとしました。
また、安全キャブ・フレーム検査は農研機構の施設で強度試験を行っていましたが、条件を満たせばメーカーの施設に私どもが出向く、立会い試験も行います。手数料減額にもなります。
――基準作りの経過と今後の取り組みは。
新基準は農業機械メーカー、学識経験者や農業者のみなさんにも入っていただき、農水省の検討会で議論してきました。令和7年度からの対象5機種以外の機種は一般性能試験という枠組みで対応します。一般性能試験は、安全性の他にも農業機械の性能、取扱性、耐久性など、依頼者の要望に応じて評価試験を行う制度で、安全性検査のような合否判定結果の公表は行いません。そのため自由度が高く、現在の検査基準に適合しない部分があっても、適合するためのアドバイスを行うなど、農研機構のコンサルティング機能が発揮できます。
検査対象外の機種についてはこの他、農水省の「農業機械の安全性能アセスメント委託事業」でも特定機種の安全性を評価し、一般に公表してレベルアップを促していきます。また、農研機構独自に農機メーカーと連携した研究課題を立ち上げ、新たな検査基準の策定と安全装置の検討も同時並行で取り組みます。令和9年度から11年度までのできるだけ早い時期にスピードスプレヤーを、農用運搬車、農用高所作業機についても同時期の検査対象化を目指しています。
――農業ロボットなどの安全性検査やグローバル展開の可能性は。
ロボット・自動化の検査は国際規格も
市販ベースの農業ロボットは日本が世界のトップを走っているので、その安全性の試験方法も世界に先んじて実用レベルで運用されています。ロボット機能を持つ乗用型トラクターや自脱型コンバインの場合、自動運転中に障害物を検知し、一定の距離に近づくと警笛を鳴らし、さらに近づくと自動で止まる機能や、通信が遮断された場合は自動で止まるといった機能を装備することが求められます。検査ではロボット機能に備えられるべき安全機能に加えて、乗用型トラクターや自脱型コンバイン単体の安全性も確認します。昨年は新たに、人や障害物を検出するセンサーとしてAIカメラを搭載したコンバインが市販化されましたが、これに間に合うよう、農機メーカーと情報を共有しつつ、AIカメラに対応した人・障害物検出試験方法を策定しました。早速、1型式が受検し、合格しました。
日本のロボット農機を海外で販売する場合、安全性を確認する検査が課せられることが予想されます。もし、日本での検査結果が海外でも通用すれば、日本のロボット農機は海外に進出しやすくなります。農研機構のロボット・自動化農機検査の乗用型トラクターと田植機は昨年夏、国際規格であるISO18497-4:2024に掲載されました。例えば、欧州などでロボット農機を流通する際の共通ルールとしてISO18497が適用された場合、日本国内で受検しておけばEU圏内はどこにでも流通することができるようになるでしょう。
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