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生産資材:JA全農燃料事業

【JA全農燃料事業】野口栄部長に聞く2013年3月29日

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・石油事業―マスタープランに基づくセルフ化の促進
・LPガス事業―保安の確保を最重点課題に数量を維持
・新エネルギー事業―家庭用・産業用・再生可能エネルギーの3分野で

 東日本大震災と原発事故を契機に燃料事業・エネルギー分野は大きな転換期を迎えたといえる。再生可能エネルギーへのシフトが加速化される一方で石油、ガス需要減少傾向が続くなど、エネルギー供給・消費構造の急速な変化が予測される。
 こうした環境下で、JA全農の燃料事業としては、石油・LPガス事業の小売分野強化も含めた体制整備を進めるとともに、太陽光発電をはじめとした新エネルギー分野の事業化やJA・子会社などに対する省エネ提案を通じて『総合エネルギー事業』の構築に向けた展開をはかっていこうとしている。その具体的内容を、野口栄全農燃料部長に聞いた。

JA全農燃料事業のこれからの重点課題

新エネルギーの事業化などで
「総合エネルギー事業」を構築


需要掘り起こすことで新たなビジネスを展開する

 
石油事業
マスタープランに基づくセルフ化の促進

野口栄JA全農燃料部長◆セルフSSが800カ所を超える

――まず石油事業の重点課題からお聞かせください。
 「石油事業では『マスタープラン』に基づくセルフ化戦略を進めておりまして、22年度からの3カ年では、24年度末全国800カ所セルフ体制をめざして事業をすすめてきましたが、ほぼ達成できる見通しです」
 もう少し正確にいいますと25年1月末のJA―SS総数は2875カ所と前年度より80カ所減っていますが。セルフSSは59カ所増えて779カ所(うちコンパクトSSが被災地4カ所、その他3カ所です)となっており、着工分を含めれば24年度末でのセルフSSの見込みは803カ所となっています。セルフ化率は28.3%となります」


◆SS過疎地には機能限定コンパクトSSを

――お話に出てきた「コンパクトSS」とはどういうSSですか。
コンパクトSS 「現在、商系では経営効率の悪い小さなSSや老朽化したSSをどんどん廃止しています。さらに25年2月からの消防法省令改正施工によって、40年以上経過した老朽化タンクへの対策が義務付けられたことで、需要が限られた地域でのSS廃止がすすんでいるからです。そのことでSS過疎地(『供給不安定地域』)問題が全国的に拡大する状況となっています」
 「JA―SSでもマスタープランのなかでこれに対応することにしていますが、タンクを入れ替えたりするのではなく、機能を特化し、数量が少なくても採算がとれるコンパクトなセルフSSにしませんかと提案しているものです」
 「コンパクトセルフは(写真)投資額を最小限に抑えたレイアウトと機能となっており、(1)最低限必要なものだけを設置した省スペース設計、(2)取扱油種を最小限にしたシンプルな設備、(3)精算方法をカード類に限定して現金管理を簡素化、という基本設計になっています」

(写真)
コンパクトSS


大震災被災地にもコンパクトSSが


――東日本大震災の被災地にも設置されていますね。
 「津波で甚大な被害のあった地域ではSSも流されてしまったわけです。そうした地域でどうしてもSSを設置したいという要請がありましたので、コンパクトSSの思想を提案し、23年10月に岩手県・JAおおふなと・セルフたかたSS、そして宮城県・JA南三陸の本吉セルフSSを、24年11月に宮城県・JA名取岩沼の玉浦SS、12月に宮城県・JA南三陸の志津川セルフSSを全農が建設し、各JAが運営するという復興支援Sを合計4カ所開設しました」
セルフ化によるSS再配置と老朽化対策が重点
――営農用A重油などは…
 「営農用A重油や軽油さらに乾燥用の灯油など営農用エネルギーの安定供給、低コスト対策も必要になってきます」
 「ガソリンを含めて化石燃料の需要そのものはこれから減少傾向になりますので、全農が持っている施設やタンクローリーなどの効率化をはかっていきたいと考えています」
――営農用も減少傾向ですか?
 「ハウスを2重にするなど省エネ施設に変えたり、A重油を焚かなくても栽培できる品種に転換したりしてA重油の消費量は減少しております」
――JA―SSの25年度以降の重点課題としては…
 「SSの運営改善・競争力強化、マスタープランに基づくSS再配置とセルフ化、そしてコンパクトSSを含めた老朽化対策。そして営農用と配送の合理化に取組んでいきます」

 JASS数・セルフSS数の推移

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 (↑ クリックすると大きくなります)


LPガス事業
保安の確保を最重点課題に数量を維持

◆携帯電話網を活用した「ガスキャッチ」が38万件に普及

――LPガス事業についてはどうですか。
 「LPガスを安全に使っていただくための保安の確保が最重要課題です。そのために安全化システム『ガスキャッチ』の普及拡大をして、保安の高度化に努めています」
 「従来のJAグループの安全化システムは電話回線でつながっていましたが、『ガスキャッチ』は従来の電話回線ではなくFOMA網、つまり無線で情報をやり取りするシステムを積極的に導入しており、安全化システム加入の130万件のうち、導入後5年間で38万件(25年2月末)に導入済みです」

“ガスキャッチ”年次別設置数

 (↑ クリックすると大きくなります)

 

◆灯油や電気からの燃料転換を提案していく

――ガス事業の販売力強化も課題だと思いますが…
 「LPガスの消費量は減少しています。いま家庭で使われているエネルギーは、厨房はガス、暖房と給湯は灯油、照明は電気にセパレートされていますが、もっと一体化したホームエネルギーの時代になっていくと思いますので、化石燃料と自然エネルギーである太陽光を一緒にしたようなエネルギーの多様化が進んでいくのだと思います」
 「いまガス事業で進めている燃料転換は、灯油や電気を使っている給湯分野については、環境面とコスト面で消費者にメリットを提供できるガスでという提案をしています。そのときに屋根には太陽光発電が一番マッチングするので、合わせておすすめしています」
 「いずれ各家庭でガスから電気をつくる燃料電池・エネファームが出てきます。つまり1戸1戸の家がガスをエネルギー源にした発電所を持つわけです。あわせてその電気を蓄える蓄電池もでてきて、トータル的にホームエネルギーが実現すると思います」
 「こうした事業を進めていくためには、知識やノウハウをもった人材の育成が大事ですから、人材育成に取り組み、事業基盤の強化を図っていきたいと考えております」


新エネルギー事業
家庭用・産業用・再生可能エネルギーの3分野で

◆新しいビジネスチャンスに挑戦

――そういう意味では、「新エネルギー事業」の取組みが重要になってくるのではないですか。
 「新エネルギー」事業では大きく3つの分野に取組んでいます。それは家庭用と産業用、そして再生可能エネルギー(三菱商事と会社をつくって取組んでいく大型太陽光です」
 「家庭用は先ほどガス事業で説明したような内容です。あまりいわれませんが太陽光だけではなく『太陽熱』を利用した温水器も取扱います。これらを含めて家庭用エネルギーの推進を考えています」
――産業用では…
 「ESCO・オンサイト事業といいますが、JAグループの食品工場や飲料水工場、病院などエネルギーを大量に使う施設が多くあります。こうした施設では従来はA重油を使ったボイラーがほとんどでしたが、これをLPガスやLNG(液化天然ガス)に転換するだけではなく、ボイラーなどの設備もこちらが持ち、そこから出てくるエネルギー蒸気・熱・温水などをお客様に供給するというビジネスを行っています」
――全く新しいビジネスですね。
 「いままでは石油やガスを1リットルいくらとか1キロいくら、ボイラーはいくらですといったようなビジネスをしていましたが、そこから出てくる蒸気などを買っていただくESCO・オンサイト事業という新しいビジネスに参入したわけです」
 「25年度以降もJAグループの施設に積極的に提案していこうと考えています」

◆再生エネルギーに対応した新会社を設立

――再生可能エネルギーについては…
 「24年10月に『JAMCソーラーエナジー合同会社』を三菱商事などと設立しました。この会社は太陽光発電導入支援のために昨年7月に開始された再エネ法に基づく「固定価格買取制度」に対応する特別目的会社です」
 「太陽光発電システムの設置候補先については、JAなどの選果場や集出荷施設などを中心に約187MWをリストアップしましたが、そのうち設置可能と思われる約105MWの現地調査。そのうちの約57MWについて、発電設備の詳細設計を行い各地域の電力会社に対して接続検討の申し込みを行い、国への設備認定申請を行っているところです。最終的にできるだけ多くのサイトが稼働できるよう取り組んでいます。」
 「今後も畜舎や遊休地を中心にリストアップを実施していくことにしています」
――燃料事業も従来に比べるとかなり様変わりしていきますね。
 「これからは石油やガスを利用して出てきたものを売るビジネスになっていくと思いますし、そういうビジネスに手をつけ、新しい需要を掘り起こしていかないと事業そのものが難しくなります」
 「総合エネルギー事業構築にむけて、この1年も積極的に取り組んでまいります」

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