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生産資材:元気な国内農業をつくるためにいま全農は

【生産資材部】省力化で高い評価 ICTクラウドサービス「アグリネット」2013年10月11日

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・データ管理の手間いらず
・生活スタイルに変化
・「匠の技」を見える化
・ハウスの自動化も検討
・情報ツールとしての普及に期待

 農業ICT(※)クラウドサービス「アグリネット」が正式にサービスをスタートしてから約1年。JAでは、JAちばみどり(千葉)、JAたまな、JAやつしろ(以上、熊本)が導入し、そのほか地域単位で導入しているところもある。ただし、これまでにない新しい技術のため、問い合わせはあるものの現場への導入はいまだに様子見というところも多い。しかし、利用した組合員、JAではおおむね好評を得ているという。JAちばみどりの導入例をもとに、現場の声と今後の展望を紹介する。
(※ ICTとは、Information and Comunication Tecknology=情報通信技術の略)

◆データ管理の手間いらず

 「アグリネット」はJA全農が国内暖房機器メーカー大手のネポン、NECと協力して開発し、平成24年11月に販売した。
 ネポンのハウスカオンキと各種センサーを使い、ハウス内の栽培環境のデータを集積。NECが提供するクララウドサーバーを経由して、登録した生産者やJA営農指導員などに、施設内の環境や異常警報などをPCやスマートフォンに自動配信するサービスだ。
 初期費用としてアグリネット加入料15万8000円、環境モニタリングセンサーセット14万8000円の計30万6000円がかかるが、月額利用料は2980円。クラウドサービスなので、データの記録はすべてNECのデータセンターが管理し、データが失われる心配はない。また、利用者側に管理コストがかからないといった利点もある。

アグリネットのしくみ

◆生活スタイルに変化

 JAちばみらいは、千葉県東部の九十九里浜沿岸を管内に持つ、全国でも有数の園芸産地だ。
 アグリネットを導入したのは、ここで高品質なキュウリを生産する旭胡瓜部会の部会員だ。現在、16人が導入している(25年9月現在)。
 越冬キュウリの栽培には、ハウス内の環境を常に最適にしておく必要があり、特に季節の変わり目には注意が必要だ。そのため、1日に何度もほ場を回り、ハウス内の気温、生育状況の管理、病害虫や凍結の有無などを確認しなければならず、また、夜でも盗難防止の観点からも見回りが必要だ。
 こうした労力を少しでも軽減したいという思いからアグリネットは導入された。
 利用者の1人は、「ほかの仕事などでハウスに出向けない場合でも、スマートフォンでほ場の状況が確認できるので、家族に暖房機の設定や水やりなどを指示することができる」と、その効果を語る。
 例えば、部会の役員などになると自身のほ場を回れない日も多々ある。そんな時でも、スマートフォンでハウス内の環境を逐一確認し適切な指示を出すことができるので、「安心して外出することができるようになった」。
 女性生産者からは、「見回りの回数が大幅に減り、安心感も得られる。家事をしながらでも、きめ細かな管理ができるようになった」と、アグリネットの導入により生活スタイルにも余裕が出てきたと喜んでいる。

◆「匠の技」を見える化

この制御盤にセンサーのデータが集められ、クラウドサーバーにデータが送られる。 省力化とは違った視点でのメリットを伝える声もある。
 データを取ることで、これまでカンや経験で行われてきた農作業に、数値による裏付けがなされた。それにより、「作業に自信を持てた」という。
 例えば、ハウスでのキュウリ栽培では、炭酸ガス濃度の調整が大きなポイントとなる。「これまでは一般的な学説や経験をもとに調整していたが、炭酸ガス量などのデータが目に見えるようになったので、どのタイミングで供給すれば、どのぐらい消費されるかがわかるようになった」。
 そのほか、曇天時に加温すると光合成が促進される、といった経験もデータで裏付けられた。「温度、水分などのデータが、1日とか、1作とかの長いサイクルでグラフ上で見られるようになり、作物がどのような対処を必要としているかがわかるようになった」。
 こうした、農業技術はこれまで長年の経験に頼ってきた。しかし、アグリネットにより、いわゆる「匠の技」が可視化された。「優良生産者のノウハウが客観的に示され、共有できれば、安定生産や技術の継承も容易」になり、後継者育成や地域全体のブランド力向上にも一役買うことになるだろう。

(写真)
この制御盤にセンサーのデータが集められ、クラウドサーバーにデータが送られる。

◆ハウスの自動化も検討

 JAの営農指導員は、アグリネットをどう評価しているのか。
 JAちばみどり営農センター旭の担当者は、「労力削減という点では、かなり喜ばれている」と評価する一方で、「より直接的に、収量増とか高品質化とか、そういう目に見えて手取りを増やす効果が認められれば、普及スピードも早まるだろう」と、今後の普及に向けた課題を語る。
 アグリネットの導入には、前述のような費用がかかる。それに見合う費用対効果が保障されなければ、なかなか導入に踏み出せない、というのが生産者の声だという。
 収量増や高品質化でそれを実現するには、さらなるデータの蓄積や、その共有化が必要となる。しかし、それとは異なる費用対効果として期待されるのが、ハウスの自動化技術だ。
 例えば、大手の花き生産者からは「ICTによって、施設が全自動化されれば大変ありがたい」という意見があったという。
 すでに、アグリネットのさらなる展開の可能性として、ハウス内の環境変化に応じて自動的にカーテンや天窓の開け閉め、温度・湿度の調節など、ハウス内の設備を自動で管理する仕組みが検討されている。
 しかし、例え全自動で管理されたとしても、「病害虫の発生や生育状況の確認など、どうしてもハウスに足を運ばなければわからないこともあり、また、生産者側には、全自動で本当にうまくいくのか、という不安もある」のが現状だ。これらのメリット、デメリットが克服され、さらなる省力化、コスト削減を実現する技術が、現場では期待されている。

◆情報ツールとしての普及に期待

ほ場に設置されたモニタリングセンサー その一方で、「実は、収量増とか高品質化とかコスト削減とか、そうしたメリットよりも、コミュニケーションツールや情報提供ツールとしての展開の方が、普及は早いかもしれない」ともいう。
 全農では、前述の自動化のほかに、アグリネットをグループウェアとして機能強化させるねらいもある。
 アグリネットの登録者には、JAから部会や売り立ての情報などをメールで逐次送信するサービスが実装されている。JAちばみどりでも、希望者に市況情報を配信するなどのサービスを行っている。
 今後は、こうした情報発信ツールとしての役割を発展させ、農薬の散布履歴の記帳などを、アグリネットを通じて手軽に行える機能が検討されている。
 「高齢の生産者には、まったくIT機器を使えない人もいるが、今後、こうした機器が郵便や電話にとって代わることになるだろう。アナログな部分への対応を残しつつ、情報管理ツールとして強化されれば、導入メリットは増す」と期待している。

(写真)
ほ場に設置されたモニタリングセンサー


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