生産資材:元気な国内農業をつくるためにいま全農は
【生活リテール部】織田展男部長に聞く 地域のくらしを支える生活事業2014年1月24日
・新たな生活実践運動を提案する
・3つの「見える化」と出向く体制の構築
・若い世代中心にJAファンを組織化
・JAらしい売り場をもつAコープ店舗に
・「全農ブランド」の開発で素材型から脱却
・生活事業の中心的な担い手は女性たち
JAの「経済事業改革」のなかで縮小均衡策をとってきたJAの生活事業は、いま地域のくらしを守っていく拠点として改めて事業を再構築していかなければならない大きな転機をむかえている。そのたJA全農生活リテール部は3つの大きな柱を掲げて積極的に取り組んでいくと織田展男部長は力強く語った。
◆新たな生活実践運動を提案する
平成27年度までの「全農3か年計画」のなかで生活事業が重点的に取組んでいる大きな柱として、織田展男生活リテール部長は次の3つをあげた。
1つは、JAにおける生活事業の活性化、2つ目はAコープの経営基盤の強化と店舗の競争力強化だ。そして3つ目の大きな柱が、国産農畜産物を原料とする「全農ブランド」商品の開発と販売促進だ。
1つ目の「JAにおける生活事業の活性化」とはどのような内容のものなのか。
これまでJAの生活事業については、「経済事業改革」のなかで、拠点型店舗の統廃合進められるとともに、収支分析などで不十分なこともあって、「赤字構造」という事業体制の縮小・合理化が行われてきた。
しかし、最近は、中山間地などを中心とする地域で、高齢化や人口の減少によって、生活インフラが維持できなくなってきている。
こうした時に地域のくらしを支えるインフラを維持・構築していくのはJAグループの使命だと考えて、「新たな生活実践運動」を提案し、「経済事業分野で生活インフラを支える取組み」をしていく。これは第26回JA全国大会決議にある「地域のくらし戦略の策定」と足並みを揃える運動だといえる。
この実践運動は、JA大会前の平成22年度から着手されており、25年度では70JAで取組まれ、今後、26年度で100JA、27年度で140JAで取組むことを目標としている。
(写真)
織田展男JA全農生活リテール部部長
◆3つの「見える化」と出向く体制の構築
それでは、JAでは具体的にどのような取組みをするのか。織田部長は「3つの見える化」をあげている。
一つ目は「組合員ニーズ」の見える化だ。これは、組合員アンケートなどによって組合員のニーズを的確に把握し、組合員の要望や意見を「見える化」することだ。
それに基づいてJAの生活事業をどう構築していくのかという「将来ビジョンの見える化」が二つ目だ。そして従来の生活事業では「どんぶり勘定」的な要因もあって、どこに課題があるのか、どうやったら収支改善できるのかかが見えていないケースが多かったので、収支を含めて「経営の見える化」をしっかりやっていこうという、「3つの見える化=3つのステップ」への取組みだ。
具体的な手法として、高齢者や独居老人をはじめとする組合員のところに出向く生活渉外の専門担当者の設置や移動購買車の導入など「出向く体制」の構築を織田部長はあげる。
買い物弱者対策としての移動購買車は、現在、全国のJAで20台ほどが導入されている。事業として黒字化することは難しいが、「収支均衡を明確にして、使命・役割が発揮できる体制をつくれるような提案をしていきたい」と考えている。
また、「安否確認」については、警備保障会社との提携についても検討していくという。
さらに地域の生活インフラ対策として、JAの購買店舗の朝の営業開始時間を通勤・通学時間帯に合わせ、弁当やおにぎり、惣菜、調理パンなどを主力商品とした地域密着型の「Yショップ化」店舗にし、夕方の営業時間も延ばし、地産池消の商品も導入して、組合員のニーズに応えていくようにしたい。
◆若い世代中心にJAファンを組織化
そのなかでJAのファンを組織化する必要があると織田部長は強調する。いまJAの正組合員が高齢化するとともに、組合員数そのものが減少している。そうしたなかでJAの事業基盤を維持・強化していくために、地域住民しかも若い世代をJAのファンとして組織していく。例えば、店舗利用者懇談会を組織して、そこでAコープマーク品や全農ブランド商品を食べてもらい「商品の良さを知ってもらう」ことでファンになってもらう。
また、全農は国がすすめている「うちエコ」の事業者として認定され、JAグループとして約40名の「うちエコ診断員」がいるが、彼らが利用者の自宅へ出向き、ガス代や電気代を調べ、「こういう家電への切替や照明をLEDにすればCo2削減ができます」などの提案を行っている。
「こうした組合員ニーズに応えた事業展開や出向く体制の構築、JAファンの組織化によって、JAの体制を強化し生活事業を活性化していって欲しい」と考えている。
◆JAらしい売り場をもつAコープ店舗に
二つ目の柱である「Aコープの経営基盤の強化と店舗の競争力強化」については、次のように考えている。
現在、全国にAコープ店舗は800店舗強ありその売上げは5000億円強だ。そのうち会社化された店舗は530店で売上げ高は3300億円となっている。
Aコープのような食品スーパー(SM)業界は競争が激しい。この競争に打ち勝っていけるように会社の経営基盤を強化するために「全農の子会社については広域再編を進め、売上規模の拡大と競争力強化をはかっていく必要がある」という。
また、Aコープ店舗はこれまで、くらしの拠点と国産農畜産物の販売拠点という2つの性格をもっていた。いま販売拠点として、9割近くの店舗で農畜産物の直売コーナーを設置しているが、商系のSMでも設置されておりJAとしての特徴が必ずしも活かされていない。「JAグループらしい売り場をどうつくっていくのか、商品をどうしていくかが課題」だ。
その課題を解決するためには、国産青果物の取扱い強化や、国産牛肉などをいかに売っていくのか。とくに組合員の簡便志向が強まり惣菜関係の需要が増えているなかで、「国産農畜産物の良さを活かした惣菜類をどう強化していくかが大きな課題」だという。
(写真)
売り場では「全農ブランド」と「国産品」をアピール
◆「全農ブランド」の開発で素材型から脱却
これとも関連するが、生活事業の3つ目の柱が昨年11月に正式発表した「全農ブランド」商品の開発と販売促進だ。
「国産農畜産物のよさが改めて見直しされていること、『和食』が世界無形文化遺産に登録されたことなど、いまは絶好のチャンス」だと織田部長は考えている。だから「国産原料プラス和食文化の強みを活かすことがでる商品開発を進めていき」、27年度末までに合計300アイテムを開発していく予定だ。
これまでの全農は国産農畜産物を「素材原料」として販売する「素材型事業」を展開してきたが、これからは「全農ブランド」商品を名実ともに「生産者と消費者をつなぐ懸け橋」としてアピールしていくことができる。「全農ブランド」商品には惣菜やカット野菜などもあり、高齢者や独居老人への対応も十分にできるので、そうした人たちへアプローチできる商品としても期待している。
すでに生協や量販店との商談が進められているが、Aコープ店舗だけではなく、「大手の量販店やCVSへの取扱いを拡大し、全農グループのバリューチェーンを構築」していきたいと、今後への決意を語ってくれた。
(写真)
店の入り口にはその時期にあった「全農ブランド」品を集めアピール
◆生活事業の中心的な担い手は女性たち
そして最後に、全国のJA女性部の人たちに次のようなメッセージを語ってくれた。
「生活事業は、生活感のある女性の視点が重要で、従来からもそして今後も女性組織の支援なくしてはできない事業です。従来からAコープマーク品の開発についても組織討議をしていただきいろいろなご意見をいただいていますが、新しい『全農ブランド』品でも、女性組織の意見を聞きながら商品開発を進めていきたいと考えています。
新たな生活事業実践運動でも、担い手は女性のみなさんです。ぜひ、JAグループの生活事業発展のためにご支援とご協力をお願いしたします」。
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