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生産資材:JA全農がめざすもの

【JA全農がめざすもの】第2回生産資材事業の重点課題 安田忠孝・生産資材部長インタビュー2014年7月25日

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・ノウハウ蓄積へ施設園芸の実証施設
・現場の発想から「負けない商品」を
・具体的な提案で農家の所得向上へ
・農機レンタルや広域部品センターの充実
・旧JAの施設老朽化中長期視野で対策
・農機事業を支える人材の育成に力
・プラントの施工管理担当者認定制度も
・現場の声を感じ取り、仕事を広く深く

 生産資材部の一番の特徴は「間口が広い」ことだ。その広い間口のなかで、いままでにさまざまなことを進めてきたが「すでに、実になっているモノ」もあるし、「これからも進めていかなければならないこともまだ多い」が、それは「これからの楽しみがたくさんあるということ」であり、それが「仕事をしていて楽しいことにつながっている」と、安田忠孝部長は、インタビューの冒頭に笑顔で語ってくれた。

生産・出荷・流通
すべての段階に貢献

 

◆ノウハウ蓄積へ 施設園芸の実証施設

安田忠孝・生産資材部長 そう話す安田部長がいま一番楽しみにしているのが、今年度から栃木県栃木市に建設しているトマトの実証用施設の進捗状況を毎日確認することだ。
 この施設では、ベテランの優秀な生産者を技術主管として迎え、全農の職員を配置して、生産資材を含めた生産技術を実証しノウハウを蓄積していく。現在はハウスを建設し、設備を整えている段階だが、毎日、現地から進捗状況を知らせる画像がネットで送られてくるので、それを「見るのが楽しみ」なのだ。
 ハウスに必要な一つひとつの資材はいままでも取り扱ってきているが、それらをまとめて「一つのパッケージとして、提案をしたいという発想があった」。
 それを実現することで、「一つひとつの品目(資材)もさることながら、それら資材が組み合わされ一つになったときにどんな効果があるのかが、きちんと実証できる」ことが大きいのだという。
 このトマト実証ハウスは、既存の施設より天井を高く大規模にし、収穫段数25段以上(土耕)で、単収40トンを目標に設定している。さらにICTクラウドサービス「アグリネット」で生産・データ管理を行う。定植は8月の予定だが、こうした資材を活用した実際の栽培ノウハウも蓄積することで、資材の提供だけではなく栽培ノウハウを含めた総合的な提案をしていきたいと考えている。
 生産資材の活用から栽培まで、施設園芸の多くのノウハウをもつこうした施設は全農では初めてだという。

(写真)
安田忠孝生産資材部長

◆現場の発想から「負けない商品」を

 これとは別に生産資材部では「負けない商品」づくりを推進している。具体的には、価格、品質、サービスなどの「どれかで、どこにも負けない商品を新しく作っていく」という取り組みだ。
 生産資材部は「生産の初期段階から出荷・流通まで何を取り扱ってもいい」し、「うまく組み合わせることで強くなっていく」のだから、本所やメーカーだけではなく、共に仕事をしている県域の人たちやJAの人にも参加してもらい、一緒になっていろいろなアイディアを出し合い、商品を一つひとつ作り上げていくという取り組みだ。
 すでに複数県域による「研究会」を開催しており「本所も県域も一緒になって仕事をしていくこと」が定着してきており、「ここからいろいろなモノが出てくる」と期待を寄せている。
 そうした中から、園芸用支柱やトロ箱養液栽培システム「うぃずOne」などが商品化されている。
 いま、国をはじめとして「生産コストの削減」が大きな課題として取り上げられることが多い。

 

◆具体的な提案で農家の所得向上へ

栃木県栃木市に建設中のトマト栽培の実証施設 安田部長は「私たちが提供する生産資材」は、生産コストを下げるのに役に立つだけではなく、「生産者が作る農産物の付加価値を高めることができる」ものもあり、大事なことは「どういう効果がある」かをきちんと提案できることだと強調する。
 しかし国などは、ある程度「生産コストを下げる」という目標観を持ち、その実現を求めてくる。
 そうした要請に応えるために、例えば水稲なら「育苗の手間をすべてなくす」ことも一つの方法だといえる。そのためにはどういう栽培体系が適しており、そのための機械化体系やこれに適合した新資材をどう開発するのかなど、新しい生産技術を構築していくことが、「私たちのこれからの仕事になっていく」という。
 いま全農が積極的に取り組んでいる「鉄コーティング水稲直播栽培技術」も、そのための重要な柱だといえる。
 つまり、生産資材価格はこれまでにも十分に引き下げられてきており、これから一つひとつの価格を引き下げるにしても、トータルな生産コストに与える影響はそれほど大きいとはいい難い。
 それよりは、すでにある生産資材の組合わせ方を変えることで、生産時間が短縮され労働費が軽減できたりすることがある。あるいは組合わせ方を変えることで、例えば「収量が2倍になれば、当然、単位収量当たりのコスト比率は下がりますし、農家の所得は増える」。これから目指すのは「そういう方向」だという。

(写真)
栃木県栃木市に建設中のトマト栽培の実証施設

 

◆農機レンタルや広域部品センターの充実

 水稲だけではなく、野菜作関係でも機械化の提案をしていきたいと考えている。その場合、「初期投資がリスクもあり」大変なので、6年前から「農機レンタル」制度を導入している。レンタル制度は、コストそのものを抑制するだけではなく、「新しい品目へ挑戦しようとする生産者のリスクを低減する効果」が大きいといえる。
 とくに野菜作用農業機械は、生産台数が多くないこともあって、機械そのものの価格は割高になるので、生産者が直接購入するよりは、必要な時に「借りて」使用する方がコスト負担が少なくて済むといえる。
 農業機械の関連でいえば、できるだけ長くその機械を使ってもらうことで、「農機の生涯コストを下げる」ことも大事なことだ。そのために全農では「バックヤードの仕事として、部品在庫の充実や即納率の向上等の能力を上げる」ことに取り組んでいる。
 現在、全国7カ所に広域部品センターを設置しているが、これは「国内で一番能力が高く、サービス力も一番高い」と自負している。
 この7つのセンターのさらなる充実はもちろんだが、まだ広域化されていない地域を「広域部品センターのエリアのなかに取り込んでいく」ことも含めて、さらに「合理的な姿を検討し、生産者の要請に十分に応えられるようにする」ことが重要だと考えている。

 

◆旧JAの施設老朽化 中長期視野で対策

 コストの抑制として、生産資材部門がいま課題と考えていることに、旧JAごとに設置していた共同乾燥施設や集出荷施設あるいは農業倉庫などの施設の維持コストの問題がある。
 これらの多くは建設後20年?30年経っているものが多く、老朽化対策が必要だが、個別施設ごとに対策を講じてもコストばかりがかかるので、将来を見越しながら、補改修を合理的に行うと同時に、中長期的にみて効率的な体制にしていくことが重要だ。
  そこで全農では、現在、CE総合コンサルとして、「JAの人たちとプロジェクトを組んで」、実際の稼働状況や品質面、経営面、運営対応などの視点から、そのJAにとっての施設の合理的な姿はどうあるべきかを検討し、具体的な提案をする取り組みを始めている。

 

◆農機事業を支える人材の育成に力

 農業機械の検定制度など「JAの中核となる人づくり」も生産資材部の重要課題だ。安田部長は人づくりについて「危機感を持っている」という。
 農業機械事業のピークは昭和51?52年で、その2?3年後に各JAが農機センターを設置し、「農機担当者が一番増えた時期」になる。ところが現在は、「そういう人たちがリタイアする時期」にきている。そして昭和50年代半ば以降、農機事業の規模が縮小していくこともあって、農機担当者の新規雇用も減少、「技術の要である中間層がいない」状態になっている。
 最近は、農機担当者が不足してきたので若い層が増えてはきているが、本来ならばOJTのなかで教育していく仕組みが、技術の要である中間層が少なくしかも忙しいために、現場でなかなか機能しなくなってきている。
 そのため「職場のOJTの中心になれる人、技術の核になれる人をきちんと位置付けて育てないと、農機事業そのものを続けることが難しくなる」というのが、安田部長が強調する「危機感」だ。
 JA全農では、かねてより初任担当者を対象とした「農業機械基礎講習会」を実施しているが、3年前から中核となる人材を育成するために「JAグループ農業機械検定」を始めた。これまでは、1級と2級の検定を隔年で実施してきたが、今年度は、1級と2級の検定を同時に行う予定にしている。
 全農のこの検定はかなり厳しい内容となっており、それだけ合格者の水準は高いといえる。「この厳しさを維持しながら合格者を増やすことで、JAにおける合格者の認知度を高めていきたい」と安田部長は考えている。

 

◆プラントの施工管理 担当者認定制度も

 人材育成のもう一つ大きなテーマとして掲げられているのが「プラント(機械設備)担当者の育成」だ。
 「プラント担当者」は、JAグループにのみに存在する仕事だといえるが実際には、機械メーカーや施工側が提案してくる仕様書や計画書を読み取り、実際に使用するJAの側の要望にきちんと応えたものかどうかを判断する非常に高い能力が要求される仕事だ。
 その「プラントがほんとうに性能通り稼働することが見えて評価できるようになる」のは、JAグループの中で「独自のノウハウと経験値を積み重ね、伝えていくしかない」といえる。しかもJAのプラントは、JAの事業が多様であるように、コメ関係から野菜さらには畜産関係と非常に多岐にわたるのも特徴だ。
 プラントは県域の担当者が中心となるが、ここでも人事異動などの関係もあってベテランから次の世代にノウハウを引き継いでいくことが難しくなってきているので、これまで蓄積されてきたことを「体系化」し、それを理解した人を認証する「プラント施工管理担当者認定制度」を今年度から実施し、この分野での人づくりにも力を入れていくことにしている。

 

◆現場の声を感じ取り、仕事を広く深く

 紙幅の関係で、ここでは詳細には触れないが、東日本大震災復旧対策はもちろん、関東甲信で今年発生した大雪による園芸施設を中心とした雪害対策についても、生産現場で、全農としての総合力を発揮して対応している。
 「私たちの仕事は、生産を始めるところから出荷・流通するまでどこにでも貢献できる仕事なので、いろいろな現場から『こういうことをして欲しい』『ああいうことをして欲しい』という声が寄せられる。それに応えられるような仕事をしていきたいし、もっと仕事は大きくなると考えています」。
 そして「そうした現場から声を直接感じ取れるように全農の職員をどんどん現場に出していくつもりです。そのことで、仕事が広がり、深まっていくと考えています」と最後に語ってくれた。

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