生産資材:JA全農がめざすもの
【JA全農がめざすもの】第3回 燃料部・太陽光発電支援事業2014年10月2日
・再エネ法に対応し合同会社設立
・すべては合同会社が実施
・積極的に環境を保護ジェイエイビバレッジ佐賀
・4?5℃の遮熱効果が実現した
・農業を後世に残すための初期投資に
東日本大震災による原発事故を契機に、エネルギーに対する環境は大きな転換期に入り、再生可能エネルギーや新エネルギーへのシフトが加速している。JA全農燃料部においても、石油事業、LPガス事業に新エネルギー分野を加えた「総合エネルギー事業」として時代の変化に対応した取り組みを進めてきている。
今回はそのなかから、農業施設などを利用した太陽光発電支援事業にスポットをあててみた。
JA施設の屋根を有効活用
(写真1)
ジェイエイビバレッジ佐賀関東工場
◆再エネ法に対応し合同会社設立
新エネルギーとして注目されている一つに、太陽光発電がある。すでに民間企業などで大規模な発電施設が設置され稼働しているが、JA全農では、平成24年10月に三菱商事、JA三井リースとともに「JAMCソーラーエナジー合同会社」を設立し、太陽光発電支援事業に取り組んできている。
この合同会社は、24年7月に開始された再エネ法にもとづく「固定価格買取制度」に対応し、農業施設利用太陽光発電支援事業を行うための特別目的会社として設立された。
具体的には、JAの倉庫や選果場など共同利用施設やJAグループ関連会社の工場の屋根、敷地内遊休地等に太陽光発電を導入するにあたり最適な設備の提案と施工・維持管理などの支援を行っている。
太陽光パネルの設置場所としては、JAの選果場や集出荷施設、農業倉庫、JAグループ関連会社の工場や倉庫、遊休地などを有力候補とし取り組んできている。
施設の屋根や遊休地は、多くの場合、いわば遊んでいる資産ともいえるので「有効に使えるなら…」という声や高い関心が寄せられた。
◆すべては合同会社が実施
合同会社の太陽光発電設備導入スキームは、図のようになっているが、合同会社がJAなど施設所有者から施設の屋根などを提供してもらい、太陽光発電設備を設置・所有する。また、電力会社への売電に必要な申請作業も合同会社が実施する。
JAなど施設所有者は、売電収入の一部を受取るとともに、契約期間終了後は設備を無償で譲り受けることができる。
つまりJAなどでは、初期投資なしで太陽光発電設備が設置でき、売電収益の一部を享受できるということだ。
合同会社の先行物件として、全農いわて純情米集出荷センター(約800kw/h)やJA全農青果センター神奈川センター(約900kw/h)が25年9月から発電を開始していることは知られているが、今年8月末現在で、50発電施設で15MWが稼働している。
◆積極的に環境を保護 ジェイエイビバレッジ佐賀
そうしたなかの一つで、合同会社の第一号事業として設置・稼働しているのが、栃木県下野市にある(株)ジェイエイビバレッジ佐賀の関東工場だ。
同社はJA佐賀の子会社だが、旧佐賀県園芸連が農産加工場として設立し、みかん濃縮果汁の製造を行ってきているが、現在は、佐賀県鹿島市の本社・鹿島工場と関東工場でジュースだけではなくスポーツドリンクやお茶、炭酸飲料などを受託製造している会社だ。
関東工場は昭和54年に消費地工場として稼働し、現在も清涼飲料水などの製造を行う缶・紙・大型ペット・小型ペットラインをもつ大型工場として稼働している。さらに鹿島工場も含めて、HACCPやISO9001はもちろんのこと、食品安全マネジメントシステム「FSSC22000を取得し、安全・安心な製品づくりに積極的に取り組んでいる企業としても知られている。
同社では、高効率コンプレッサーの導入やLED照明設備の導入など環境保護にも積極的に取り組んでおり、そうした考え方の延長として太陽光パネルの設置に同意したという。
太陽光パネルが設置されているのは、工場の敷地に入ってすぐ左側にある製品などをストックしておく倉庫の屋根だ(写真1)。
この倉庫は24年5月にできた新しい建物で、25年4月に「全農から太陽光パネルを設置しないかという話がきた」と、25年6月から7月までの設置工事のすべてに立ち会ってきた古舘博昭同社関東工場製造課長。
この倉庫が選ばれたのは、新築なので1枚20kgあるパネル(写真2)を建屋・下屋の屋根に合わせて825枚設置しても構造計算上の問題がないからだ。
建屋1800平方m、下屋800平方mの屋根に設置された825枚の太陽光パネル(写真3、4)に発電量は最大200kw/hだという。
同社の鹿島工場にも太陽光パネルが設置されており、両工場で年間約386MW/hの発電量があり約121トンの二酸化炭素削減効果が見込まれており、環境保護に貢献していると古舘課長。
(写真2)
ソーラーパネルの取り付け工事
◆4?5℃の遮熱効果が実現した
太陽光発電というと、太陽光パネルを設置すればいいと思うが、実際には太陽光パネルで発電された電気を集め(直流)、直流を交流に変換する装置である「パワーコンデショナー」まで送るかなり太い「幹線」(ここでは500m以上)を敷設。
さらに6000ボルトの交流を電力会社(ここでは東電)に送電する装置やケーブルなどの施設が必要になる(写真5)。
太陽光パネルを設置した倉庫は、必要があればギフト品を梱包する「オフライン作業」を行う作業場としても使われているが、空調設備はない。
古舘課長によると、太陽光パネル設置前の24年8月と比べると設置後の倉庫内温度は4?5℃下がっているという。
屋根への設置で太陽光パネルが断熱材となり建物内の温度が夏は下がり、冬は上がるという遮熱効果の研究データが公表されているが、そういう効果があることが、実際の使用場面で証明されたといえる。
遮熱効果は屋根に使用される材料によっても異なるといえるが、この倉庫の屋根にはタイトフレーム鋼板材が使われており、写真でもわかるように凹凸の差が大きく15cmほどある(写真2)ので、ここに空気層があり、風が流れることも大きいのではないかと古舘課長はみている。
(写真5)
右の2基がパワーコンデショナー、その奥が東電への送電量計測器
◆農業を後世に残すための初期投資に
同社関東工場で、太陽光発電設備の導入計画から設置工事の全てをみてきた古館課長は、直近の環境問題やエネルギー問題への貢献はもちろんだが、それだけではなく、「売電による収益の一部を厳しい環境にある農業を後世に残すための初期投資と捉えている」とコメント。
ほとんど使われていない資産である施設の屋根が環境やエネルギー問題への一つの解決策となると同時に、次の世代へ日本農業を引き継いでいくために貢献できれば、JA全農を先頭にこの事業に取り組んでいく意味がさらに大きくなっていくことは間違いないだろう。
(写真3)
下屋の屋根に設置されたソーラーパネル(左)
(写真4)
建屋屋根のソーラーパネル(右)
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