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生産資材:年頭あいさつ2015

市川 秀夫 氏(日本肥料アンモニア協会 会長)2015年1月1日

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 平成27年の年始にあたり、農業関連団体から農業協同組合新聞・JAcomに寄せられた年頭のごあいさつを紹介します。

肥料の役割ますます高まる
社会へ重要性訴える


市川 秀夫 氏(日本肥料アンモニア協会 会長) 新年を迎え、謹んでご挨拶申しあげます。
 昨年を振り返りますと、内外ともに波乱に満ちた1年だったと申せます。
 いわゆるアベノミクス効果によって景気動向も明るくスタートし、消費税増税前の駆け込み需要も旺盛でしたが、4月に実施された消費税増税後の第1四半期(4?6月)のGDPの落ち込みは、第2四半期(7?9月)も回復せず、2期連続の前年割れとなりました。需要反動の大きさと同時に、個人消費の脆弱さを痛感いたしました。
 このような状況を受け、安倍首相は、今年10月に予定されていた再増税を、17年4月実施に延期し、その是非を一つの争点に衆院解散し年末に総選挙が行われた結果、与党が大勝し第3次安倍内閣の発足につながりました。新内閣は、アベノミクスの継続、不安定な為替動向、デフレからの脱却、集団的自衛権、農業改革、TPP問題など様々な政策課題を抱えていますが、改めて成長戦略の実行を期待したいと思います。

◇   ◇

 一方、海外では、米国経済が順調な景気動向に回帰し、FRBは金融引き締めに舵を切り(米国金利上昇)、一気に円安・ドル高が進む一方で、ユーロ圏を含む欧州経済は依然として低迷を続け、中国を始めとする新興経済圏諸国の成長鈍化も顕在化した一年でした。
 為替相場は年初来、対米ドル100円台前半で安定していましたが、それ以降円安が急速に進行、12月には120円台を記録し、輸入原材料の高騰を招きました。
 昨年第3四半期に大きく動いた原油市況の動向にも目が離せません。
 世界の経済活動が停滞、米国におけるシェールオイルの相次ぐ設備増設の影響で、原油価格は徐々に低落しておりましたが、昨年11月以降急落し、OPEC総会における減産合意に至らなかったことをきっかけにさらに原油相場は低落し、リーマンショック時と同水準(1バレル60ドル台)まで下落しております。
 エネルギー価格が抑えられることは、輸入に依存する我が国にとっては基本的には歓迎すべきことでありますが、過度の原油価格の乱高下は経済活動に与える影響が必ずしもプラス面とばかりは言えず、今後の動向を注視する必要があります。

◇   ◇

 このように、為替相場、原油情勢等が大きく変動する中、新年を迎えました。今年こそ、我業界にとって明るい年になって欲しいと考えますが、我業界を取り巻く経営環境は厳さを増しております。
 私共協会は、化学工業の基礎的な原料であるアンモニアとその関連製品、肥料の製造・販売会社で構成されており、各社にとって輸入原料の確保が深刻な問題となっております。肥料原料である燐鉱石、燐安、塩化カリ、アンモニアの原料であるナフサ、天然ガスなどは、そのほとんどを輸入に依存しており、産出国での資源の囲い込みの動きが活発化していること、為替相場における円安の進展、などの要因による原料高に加え、肥料需要の世界的な高まりを背景に、長期的・安定的な原料調達が困難になりつつあります。

◇   ◇

 農業情勢においてはコメの直接支払い交付金(旧戸別所得補償)の削減、生産調整(減反)廃止、環太平洋連携協定(TPP)の交渉推進…など多くの課題が顕在化しました。米価暴落の直撃を受け、農業者所得の向上を掲げた政府の農政改革は、初年度から見直しを迫られそうな状況となっています。
 政府は、昨年の6月に閣議決定した「『日本再興戦略』改訂2014」、「規制改革実施計画」で、農業を成長産業とするための動きとして、[1]農地中間管理機構の創設、[2]農業委員会等の見直し、[3]農地を所有できる法人(農業生産法人)の見直し、[4]農業協同組合の見直し、の4点を掲げ、1970年代から40年以上続いていた「米の生産調整の見直し」所謂、「減反政策の見直し」を含む農業政策を変革する動きも始まりました。また、「今後10年間で全農地面積の8割が担い手によって利用される」こと「今後10年間で6次産業化を進める中で、農業・農村全体の所得を倍増させる戦略を策定する」ことを成果目標として掲げています。

◇   ◇

 繰り返しになりますが、昨年の生産者米価の急落の影響は甚大です。
 価格暴落の最大要因は国内需要減と、その結果膨れ上がった在庫量にありますが、政府の主要政策である「地方創生」には農林畜水産業の確立が不可欠であります。再度、政策の実現に本気で取り組むことを要望します。

◇   ◇

 次にアンモニア情勢ですが、アンモニアは世界的には肥料向けが主流となっていますが、我が国は工業用が中心となっています。
 アンモニアの内需は、福島原発被災の影響もあり、火力発電所の脱硝用は底堅いものの、内需に占める割合が4割を占めるカプロラクタム、アクリロニトリルと云った合繊原料向けは、長期化する繊維不況から抜け切れず国内の需給体制に大きな変化をもたらしました。海外での生産増強によって輸出条件が厳しくなったこともあり2012年頃から、国内供給者側の生産規模の縮小やアンモニア、カプロラクタム生産の撤退が相次ぎました。今後ともこの動きが続くと予測されており、供給量的にも懸念される状況となっています。

◇   ◇

 世界に目を向けると、領土問題や宗教・イデオロギー対立による紛争が絶えません。一方では、人口の増加に伴い、将来の食糧不足が懸念されております。世界の食料生産能力は、地球温暖化、砂漠化、農業用水の確保等々のマイナス要因も抱え、生産力のアップはあまり期待できない環境にあります。
 食糧消費が着実に増加する一方で、生産が不安定であるという構造的課題が深刻さを増す中で、農産物生産にとって不可欠な肥料の役割は、今後ますます重要性が高まると予測されています。
 当協会としても、「食の安全・安心」、「日本農業」、「農業を支える肥料」の重要性については従来以上に社会に訴えていきたいと思っております。

◇   ◇

 私共協会は1年に1度、一般の市民の方に、食料自給率の向上、安全で安心な農作物の供給における日本農業の重要性、肥料業界の果たす役割など、分かりやすくお伝えすべく「シンポジウム」を企画しておりますが、今年のシンポジウムも農薬工業会様との共催により、下記の通り開催いたします。パネラーには地元水稲農家様にも加わっていただき、「我が国農業を守り、育てることの重要性、農業に貢献する高機能を有した化学肥料の役割」などについて広く一般消費者の方のご理解を深め、興味を持って頂きたいと思っております。多くの皆様のご来場をお待ちしております。

 【肥料・農薬シンポジウム2015 IN 熊本】
 「食の安全・安心と農業の未来のために考えよう」
 日本の農業を応援しよう!
 ○日時:2月15日(日)13:00?16:00
 ○場所:熊本市男女共同参画センター はあもにいホール

 以上縷々申しあげてまいりました通り、私共アンモニアおよび肥料業界には依然として難問が山積しておりますが、その解決に向けて誠心誠意努力してまいりますので、これまでにも増して皆様方のご支援、ご協力を賜りますようお願い申しあげます。
 最後になりましたが、関係者の皆様方の益々のご多幸、ご隆盛、今年が業界と会員各社様にとって、飛躍の年となりますことを祈念し新年のご挨拶とさせていただきます。

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