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検証・改正JAS法と食の「安心・安全」(6/10)
  「国産」への信頼 高められるか?
   JAグループは「安心システム」の構築めざす


 改正JAS法(農林規格・品質表示法)が6月10日に施行された。同法のポイントは、(1)すべての生鮮食料品について原産地表示を義務づける、(2)有機農産物と有機食品のJAS規格を定めこの規格にあったもののみ「有機」表示ができる、の2点だ。施行に合わせ、生産、流通現場では、どう対応しようとしているのか、また、国内農業の振興のためには何が求められているのかを考えてみた。


資料1 ・ 「JAS法改正のポイント」

■原産地表示 7月から義務づけ

 生鮮食料品の原産地表示は、1996年にブロッコリー、サトイモ、根ショウガなど5品目から始まり、その後、98年にゴボウ、アスパラガスなど4品目が加わった。 表示義務づけのきっかけは輸入品の急増で産地が打撃を受けたためだ。このため先の農政改革議論でも国産農産物を守る重要な制度として表示の充実を求める声は強かった。

  今回の改正で、すべての生鮮食料品について品名と産地名を記さなければならなくなった。7月から実施しなくてはならない。
  輸入品は国名、国産の農産物については都道府県名または市町村名を表示する。畜産物は国産であること、または主たる肥養地。水産物は原則として水域名だが、特定が困難な場合は水揚げ港を表示し、養殖の場合は都道府県名を記す。

  (株)イトーヨーカ堂では、表示法として迅速に書き換えが可能な“黒板方式”の採用を現在検討しているという。「産地からダイレクトに仕入れたものは表示が簡単だが、市場経由のものは午前と午後で産地が異なることもあり、間違った表示にならないよう速やかに表示を変えるため」(同社広報室)だ。一方、輸入品については「仕入れ本部で一括輸入しており、表示のための情報はきちんと整理できている」と話す。

  ジャスコ(株)は、すでに100%産地表示を実施しているため「特別な対応は必要としない」(同社広報室)という。 昨年11月に農林漁業金融公庫が実施した調査(「生鮮食料品の原産地表示及び有機表示に関する意識調査」)の結果では、原産地表示された場合、「輸入品より国産品を購入する」という回答が野菜、果物のほか牛肉、豚肉などすべての品目で80%以上を占めた。

また、現在は原産地に注意を払わずに購入している人でも、表示されれば国産品を選ぶとの答えは「野菜」と「米」で80%以上になっている。
  こうした結果をみると原産地表示の義務づけは国産農産物の消費拡大につながりそうだといえる。

■有機JAS品 秋にも登場か

 一方、今度の改正JAS法でもっとも注目されているのが、もうひとつの柱である有機食品の検査認証・表示制度の創設だろう。
  この制度の導入によって、JASで定めた有機農産物、有機食品の規格に合ったもの以外は「有機」の表示はできないことになる。その検査・認証は、農水大臣が許可した登録認定機関(民間の第三者機関)が行い、無認証で「有機」と表示した場合は罰金が科せられる。

  登録認定機関はほ場ごとに生産者を認定する。認定のための手続き(「有機農産物の生産行程管理者の認定業務マニュアル」)は農水省が5日に公表した。
  それによると、有機栽培をしていることを証明する過去の栽培記録や使用した資材、農機、種苗などのデータも生産者に提出を求めることになっている。

  この登録認定機関の資格を得るための申請は、施行と同時に始まっている。今のところ、申請機関数は、20〜30程度になるといわれる。
 農水省によると登録認定までは、約2か月近くかかる見込みで、その後、順調に認定機関による認証が実施されたとすると、早ければこの秋にも有機JASマークのついた食品が登場することになりそうだ。

  ただし、有機JASマークしか認められなくなるのは、来年の4月から。それまでは従来の“自称”有機食品でも罰則の対象にはならないめ、来年4月までは、店頭で有機JAS品と混在することも考えられる。

  この制度では、有機農産物の認証を受けるには費用がかかることになる。その費用は生産者側が負担することになるが、簡単に価格に上乗せできないとなればコスト増になってしまう。逆に、有機食品の検査・認証をビジネスチャンスと捉える動きすらある。

  こうした生産者の負担増の問題などを解決しようとする動きがJAグループにも出てきた。
  JA兵庫中央会は、先ごろ、登録認定機関の資格申請することを明らかにした。
  「改正JAS法は消費者保護の視点に立ったものだが生産者側に負担がかかる面もある。また、兵庫の農業をよく理解していない機関が新ビジネスだとばかりに乗り出してくるのはどうか。やはり産地に近い機関が認証すべきではないか」(同中央会営農農政部)とうのが申請を決めた理由だという。

  判定業務の公平性・透明性を確保するために、学識経験者や消費者で構成する「判定審議委員会」もつくる予定だ。
  兵庫県では、県独自の認証制度がすでにあり、26の生産グループ(栽培面積計40ヘクタール)が認証受けている。県のアンケートでは約半数のグループが中央会の認証を受ける意向を示しているという。当面、これらのグループを対象に業務を行うほか、有機農産物の栽培グループを育てているJAも対象にしていく方針。検査員については現在、JAの営農指導員OBなどに交渉して体制づくりを行っている。

 「環境保全型農業の推進は大きなテーマ。県内JAへの啓発にもしたい」(同)というのも目的だ。

  流通現場は、どう対応しようとしているのか。
  ジャスコ(株)は有機農産物や減農薬農産物などのPB(プライベート・ブランド)商品を従来から扱ってきたが、5月にブランド名を「TOPVALUグリーンアイ」として発売した。
  ただし、同社は「いままでの有機農産物と変わるわけではなく、農水省のガイドラインに沿って栽培している農家と契約し、有機表示をしてきた。改正にともなったテコ入れではありません。今後は、認証機関の認証を受けたものからJAS有機の表示をしていくことになります」(同社広報室)と話し、これまで扱ってきた有機農産物のすべてが認証されると自信を示す。同ブランドは減農薬などを含めて52品種。今年度は100億円の売り上げを目標にしている。

資料2有機農産物及び特別栽培農産物に係る表示ガイドライン

  ただし、(株)ダイエーは、「ガイドラインに準拠した減農薬農産物は扱っているが、有機は高価になる可能性があるため基本的には販売を考えていない」とし、 また、(株)西友には「完熟屋」というPB商品があるが「完璧な有機農産物はほんのわずかな生産量しかないはず。それをクローズアップする方針はありません」と同ブランドのラインナップに加える意向はないという。

  減農薬、減化学肥料など特別栽培農産物は扱っているところは多く、農薬の散布回数や種類などガイドライン以上に厳しい自主基準を設けているところもあるが、むしろ「食品スーパーとしては食料の安定供給をメインに考えている。その点では、産地表示をしっかり実施して消費者の信頼を得ることに力を入れる」(西友)という対応が基本のようだ。コストの問題もあって有機認証制度の実施で、有機の取り扱いを増やす傾向はみられない。

  改正JAS法による有機認証制度は、初めての法律によるシステムであり信頼度は高い。それだけに注目されるが、しかし、一方で対象は輸入品も含めた有機農産物に限定されているという面もある。
 日本の自然条件では有機農業が難しい地域や作物もあり、国産食料の多くは慣行栽培で生産されている。その栽培法でも、たとえば適正な防除が実施されていれば安全性は確保されているが、そうした多くの農産物の安心・安全を認証するシステムはない。

  こうしたことからJAグループでは、JA全農が全農安心システムによる認証制度を立ち上げ、今春から試験的に実績づくりを始めている。8日に決定した第22回JA全国大会組織協議案にも「消費者に信頼される農産物の供給」というテーマでその取り組みの必要性が盛り込まれた。(別掲記事)

  このシステムが、JAS法有機と異なるのは、国内農畜産物のすべてを検査・認証の対象にしようという点。取引先との合意で農薬の使用法など栽培基準をつくり、認証委員会で認定していく。残留農薬などの検査も義務づけることにしているため、安全性の確認ができる。たとえば、慣行栽培であっても安全性が確認されているなら、それにお墨付きを与えようという考え方である。これは生産者に適正防除の必要性の認識を深めてもらう一方、消費者にも安全性についての正しい知識を持ってもらうことにつながる。
  「つまり、このシステムの基本は、国内農産物全体の信頼性をどう確保するか。国内農業振興をバックアップし、安定供給を行うのが狙い」(JA全農大消費地販売推進部)という。

  今回の改正JAS法によって、消費者への情報開示が一層進んだことになる。ただし、国内農業生産の振興と消費者への安定供給という課題に応えることも問われる。そのためにも大会議案の討議が重要になるといえそうだ。

資料3 ・ 消費者の視点から見た全農安心システムとJAS法有機認証システムの違い


資料4
・ 「全農安心システム」の概要



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