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検証・時の話題
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韓国の農政と農民(上) | ||
韓国、「直接支払い」で稲作農家を支援 ―チリとのFTAではコメを除外― 北出俊昭 明治大学教授 |
韓国における最近の農政課題は、わが国と同様、WTO・FTAの国際化対応と米対策の2つに集約されているような感がある。ここでは実態調査に基づき、この2つの課題を中心に、韓国農政が当面している課題について検討したい。 |
◆所得政策 環境保全も目的に直接支払い
韓国では1999年に「農業・農村基本法」が制定された。この法律はUR農業合意後の農政展開と同時に、1997年末の通貨・金融危機に対応するために制定された法律である。この法律は第2条で、食料供給、国土環境保全など農業がもつ経済的・公益的機能の重要性を強調し、あわせて農業人が自立と創意を基に経済的主体として成長すること、農村固有の伝統と文化を保存することなどを基本理念として規定した。 この「農業・農村基本法」の第3章「農業構造の改善」では「家族農の経営安定」、「後継農業人の育成」、「専業農業人の育成」などを規定しているが、表の「経営移譲直接支払制度」はこうした法律の農業構造政策を先取りしたものである。現在のレートはほぼ10ウオン=1円なので、経営移譲すると1ヘクタール約28万円の助成措置が講じられることになる。 最近、韓国の農政上でも強調されているのが親環境農政である。「親環境農業直接支払制度」はそのための助成である。環境保全は「農業・農村基本法」でも強調していることで、農地を「国民食糧の安定供給及び環境保全の基盤」と位置づけ、「大切に利用・保全」する必要性を明記している(第19条)。なお、「水田農業直接支払制度」、「米所得補てん直接支払制度」は米政策とも関連するので、詳細は後述する。 これらに加え、「条件不利地域直接支払制度」がある。これは04〜05年はモデル的に実施し、06年から全国的な実施が予定されている政策である。 以上のように、韓国でも大きくは農業者、農産物所得、地域の3つを対象とした所得政策が実施されているが、こうした政策方向はわが国とあまり異なっていない。ただ、ここで注目したいのは、「農業・農村基本法」の条文をみるとわが国の「食料・農業・農村基本法」との間に重要な違いがみられることである。 韓国の「農業・農村基本法」の第39条(農業人に対する所得の支援)は次のように規定している。 「政府は、農業人の所得及び経営の安定のため必要と認められるときには、次の各号の支援を行う。 1、零細農等のための支援 2、土壌等環境の保全のための支援 3、農業災害に対する支援 4、農業経営の規模化等構造調整のための支援 5、条件不利地域に対する支援 6、その他農業生産と直接関係しない所得の補助」 このように所得政策の対象を具体的に示した規定は、わが国の「食料・農業・農村基本法」にはみられない。法律の目的や基本理念はあまり異なっていないにもかかわらず、所得対策規定ではわが国と韓国の基本法には大きな差がみられるのである。
◆FTA交渉 セーフガード発動も盛り込む 韓国の国会は2月16日、チリとの自由貿易協定(FTA)批准同意案を賛成多数で可決した。その主な内容をみると次の通りである。 (注)「WTO体制下の日韓農業の進路」(報告論文集)63ページ (2004.3.31) |
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