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検証・時の話題
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韓国の農政と農民(下) | ||
米の市場開放でヤマ場を迎える韓国 ―「特例措置」今年度が期限― 北出俊昭 明治大学教授 |
改革促進が負債の増加に
韓国では専業農家の比率が高く、わが国に比して農家所得に占める農業所得のウエイトが高いことは前述した。しかも農業所得のなかで米は40%以上を占めており、近年高まる傾向すらみられる。その理由は、UR農業合意後の97年頃までは、韓国でも穀物から他作物への転換が進んだが、市場開放で野菜や畜産物の輸入が増大したため、国際競争力の弱い国内生産の困難が増大し、米生産への再転換がみられるからである。 注)「解説 WTO協定」(外務省経済局国際機関第1課編) ◆生産調整も実施 韓国でも消費の減少で米過剰が顕在化しており、政府も03〜05年には2万7000ヘクタール(陸稲)の生産調整を実施している。ちなみに、韓国の水田面積は115万ヘクタール(2000年)である。しかし、米の需給不均衡が拡大し米価は低落傾向を示している。このため、米の政府買入制限による所得補てん対策としての水田農業直接支払制度や価格低下による所得補てん直接支払制度をはじめ、在庫処理などを実施している。こうした状況にあるので、米のミニマム・アクセスの対応如何では、FTA以上に大きな問題となる可能性が強いのである。米独自の問題に加え、農業政策上の課題との関係もある。韓国では農業者所得と他産業従事者所得との均衡を重要課題としてきた。これはわが国の農業基本法でも強調された課題である。しかし、最近の動向をみると図に示したように、94年まではほぼ同じ水準であったが、95年以降は格差が拡大し、02年では農業者所得は他産業従事者所得の73%程度に低下している。それは市場開放の促進による農産物価格の低下と、UR農業合意後の農業改革促進による施設園芸などへの厖大な設備投資資金の返済金が原因といわれている。この返済が滞り、農家負債が増大し、改めて農政上の大きな問題ともなっている。 いずれにしても以上のような状況で、来年度以降の米輸入の特例措置問題は韓国農政の最重要課題となっている。このため韓国政府は、中国、アメリカ、オーストラリア、タイ、ブラジル、インドなどとの二国間交渉を進めることで、既に各国に申し入れをしているという。現在の段階では、交渉はいつから開始されるのかは定かではないが、今年度は韓国農政にとっては注目すべき年となる。 これまで述べた農業情勢を韓国の農民はどのように認識しているのか、これを米問題を中心に行った聞き取り調査をもとに考えてみたい。調査を行ったのは、ソウルと釜山のほぼ中間にある南原(ナウオン)市巳梅面(サメメン)の中山間地の一集落である。全農家戸数57戸の集落であるが、そのうちの15戸について調査した。 一方最近の米価については、全農家が「低下している」と答えた。現在韓国での米流通は「政府への販売」、「農協への販売」、「自由販売」の3つに大別できる。このうち「政府への販売」はわが国の政府米と同様、政府により決定された販売量が自治体を通じて個人ごとに示されている。また「農協への販売」は農協ごとに決めており、「自由販売」は農家が地域にある総合処理所(精米所)へモミで販売する米である。農家の販売価格は「政府への販売」が最も高く、「自由販売」は「農協への販売」とほぼ同じとなっている。 ◆米価は生産費の1.5倍 ただ、ここで農家がいう生産費は家族労働費を含まない支払費用のみと考えられる。実際、統計でみると韓国の米生産費は40キロ当たり4万ウオン程度なので、これと比較すると政府への販売価格で生産費の1.5倍となる。いずれにしても、現在の韓国では米価は生産費を上回っており、この集落程度の稲作規模(1.5ヘクタール程度)であれば、米生産だけでほぼ生活が可能なのである。 韓国とわが国の農業には多くの共通点がある。したがって、これまでのFTA交渉ではWTO交渉と異なり各国の事情に応じてセンシティブな問題を除外して合意されている例が多いので、わが国と韓国の交渉でもそうした対応が可能なのではないか。いずれにしても、今後は国際化対応も含め農業・農民問題では日韓両国の協力がいっそう重要になると思われる。 <関連記事> (2004.4.7)
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