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訃報 JA全農 鈴木郭史常務が死去 (10/19)

 JA全農(全国農業協同組合連合会)の鈴木郭史(すずき・ひろし)常務理事が、10月19日午後2時45分、東京都内の病院で亡くなった。享年58歳。死因は脳出血。
 鈴木常務は昭和18年福島県生まれ。東北大学経済学部卒業後、昭和42年入会。平成6年東京支所次長、7年米穀販売部次長、8年同部部長を経て、11年7月に常務理事に就任(米穀事業担当)。

 ○通夜/10月23日(月)午後6時〜
 ○告別式/10月24日(火)午前11時30分〜午後1時
 ○場所/護国寺 桂昌殿(ごこくじ けいしょうでん)
     東京都文京区大塚5−40−1
      TEL 03−3941−0764
     地下鉄 有楽町線「護国寺駅」下車
 ○喪主/妻 鈴木悦代(すずき・えつよ)氏



 鈴木常務は、9月28日に決定した「緊急総合米対策」のとりまとめに尽力され、8月初めにJAグループが緊急対策の検討に入ることを決めて以来、多忙な日々を送っておられた。
 JAグループが緊急対策の検討に入ったのは、12米穀年度末に計画を大幅に上回る在庫が予想されたこと、備蓄運営ルールからすれば12年産米の政府買い入れ量がゼロとなり全量自主流通米で販売せざるを得ないこと、さらには12年産の豊作基調による供給過剰から、一層の価格下落が懸念されたことなど厳しい販売環境が想定されたからだった。
  鈴木常務は、これをかつてない異常事態と認識、いかにすればこのような事態に陥らないか、その対策の確立に心血を注がれ、在庫圧縮対策、政府買い入れの実現、生産オーバー分の別途処理策などの政府への要求づくりやJAグループの取り組み課題検討の先頭に立たれた。とくにJAグループ内に向けては、県間競争の排除と入札での慎重な対応を求め、8月末の本紙記者のインタビューでは「ここで米価を守るんだという決意が関係者には必要なんだ」と強調されていた。

 「緊急総合米対策」の決定が目前となった9月の最終週からは、早朝から政府との折衝やJAグループの会合が連続する過密スケジュールの日が続いていた。
 決定した「対策」には、在庫処理対策や、政府買い入れ、全農による一元的な調整保管の仕組みなどJAグループの主張が盛り込まれたが、鈴木常務は本紙10月12日号への寄稿(「JAグループの米穀事業の改革について」、別掲)で「対策を機にJAグループとしても自ら実施する対策も含めて流通の混乱を是正するとともに良品質の国産米が正常な姿で安定的に消費者に供給されるよう全力をあげて取り組んでいかなければならないと考えています」と、この対策が生産者だけでなく消費者にとっても重要なものであることと、同時に生産調整の緊急拡大の達成など今後の実践が大切なことを強調されていた。
 そのため、10月に入るとJAグループ内はもちろん、米関係業界に対しても連日の会合の場で、対策とその改善効果について理解されるよう精力的な説明に取り組まれていた。とくに12日に開催された「拡大米穀事業研究会」に向けては資料づくりに力を注ぎ、当日は自ら司会し質問にも答えられていた。

 毎朝、8時過ぎにはJAビルで仕事に取りかかり、常務就任後も毎日の米販売実績に目を通すなどまさに現場で陣頭指揮をとってこられた。とくに今後の緊急総合米対策の実施については「JAグループ一丸となって仕上げていこう」と繰り返し語っておられたという。米の需給と価格安定の実現に向けて仕組みづくりが本格化する矢先の急逝だった。志半ばで旅立たれてしまった。JA全農米穀販売部・水野文雄部長は「我々JAグループは対策を確実に実践することで鈴木常務の思いを実現し、遺志に応えなければならない」と語っている。

追悼 鈴木常務の死を悼む   JA全農 白幡豊明常任監事

 亡くなる直前まで「緊急総合米対策」をこれからいかに仕上げるか、そのことがいちばん心にあったと思う。
 長く仕事をともにしてきたが、とにかく正義感が強く信念を持って目的に向かってひたすらまっすぐ進むような人だった。米政策をめぐって行政と堂々と渡り合う場面もしばしばあった。
 ただ、一見、豪放磊落に見えるが、一つひとつ階段をつくり、一歩、一歩前に進めていくという実は大変に几帳面で緻密に仕事をする人だった。会議で話す内容にしても、一字一句、自分で原稿を書いていた。大ざっぱとか、適当に、ということができなかったのだと思う。
 米の需給と価格の安定の実現という鈴木常務の熱い思いが込められた「緊急総合米対策」を今後、後輩たちがしっかり仕上げていくことが、彼の遺志に応えることになると思う。(談)

遺稿 「JAグループの米穀事業の改革について−米の需給と価格安定の実現へ」
        
        (農業協同組合新聞 2000年10月12日号  この原稿も鈴木常務自ら筆をとられた)



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