野菜の価格暴落を防ぐ緊急輸入制限措置(一般セーフガード)の発動が迫っている。対象にはネギ、トマト、タマネギ、生シイタケ、ピーマン、イ草の6品目が挙がった。発動には農水、大蔵、通産3省の「政府調査」という手続きが必要だが、農水省はすでに事前調査を進め、24日には谷洋一農相から両相に政府調査に入りたいと申し入れた。この調査の結果次第で措置が決まるが、発動となれば、日本政府としては初めての実施となる。
世界各国はすでに世界貿易機関(WTO)体制以後、米国や韓国など7ヵ国が発動しており、それ以前のガット体制下では各国が147回も発動している。
WTOの一般セーフガード協定は、発動条件の中に輸入が何万トン増えたとか何%伸びたという定量を定めておらず、ただ「国内産業に重大な損害を与え、または与える恐れのある増加数量」としているだけだ。
だから政府の決意次第で発動できるのだが、輸出国の対抗措置を招く恐れがあるなどの事情から実施しなかった。一方、特別セーフガードのほうは手続きが簡単で、輸出国が対抗措置をとれない条件になっているが、適用対象がウルグアイラウンドで関税化された品目に限られている。
JAグループは野菜への一般セーフガード発動を要請して、政府方針が固まる月末に向け、青果対策特別運動を展開中だ。ヤマ場の29日には「野菜・果樹対策確立、セーフガード実現」を掲げて全国代表者集会を開く。21日にも約200人の全国集会を開いた。
席上、JA全中の原田睦民会長は「野菜生産額は平成10年にコメを抜いて農畜産物の1位になったが、輸入増加で価格が下落。生産者の損害は大きい。緊急事態だ」と述べ、また全中青果対策本部の丸本正憲委員長は「このままでは農業経営は維持できない」と精力的な要請行動を訴えた。
一方、全国の地方議会の発動要請の決議が相次ぎ、野党では共産党が発動を早くと強く求めている。
自民党の農業基本政策小委員会では「輸入増加の影響は明らかだ。発動をためらっている場合ではない」「国益を考えよ」「政治主導で緊急対策を」「市場に対する適切なメッセージが必要」など農水省を突き上げる意見が出て、すでに発動の実現に向けた対応の強化を確認している。
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