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米緊急対策 月末にヤマ場
政府による在庫処理策や政府買い入れ 強く要求
JAグループ

 暴落を続ける米の需給と販売環境を改善するための緊急対策を政府は、12年産米の第3回自主米入札が実施される9月29日までに決める予定にしている。一部では、需給改善のため来年度の生産調整面積の拡大がすでに決定されたかのように報じられているが、JA全中は「まず生産調整の拡大ありき、という議論ではない」(JA全中食料農業対策部)との考えから、生産調整を拡大する場合の前提条件として、@計画を上回る60万トンの政府米在庫の的確な処理、A政府買い入れの実現、B稲作経営安定対策の充実を強く求めている。
 JAグループとしては、こうした要求が実現された場合に「全体の需給改善のために生産調整の拡大に取り組む」(同)という姿勢で政府との協議に臨む方針だ。

このままでは食料自給率の向上は不可能 全国要請集会で訴える

 JA全中と全国農政協は、9月12日、東京・日比谷公会堂で「農業政策確立・危機突破全国要請集会」を開いた。記録的な豪雨が東海地方に大きな被害をもたらしたこの日、交通機関の混乱で上京できなかった関係者も多かったが、それでも2000人が席を埋めた。
 開会のあいさつで原田睦民・JA全中会長は「稲作農家の不安は頂点に達している。野菜の価格も輸入の急増で下落し、これ以上農業を続けられるのかといっても過言ではない状態」と指摘、「生産者に食料生産を担える誇りを与えていただきたい」と出席した与党国会議員に訴えた。

 この日の集会では@水田営農対策、A青果対策、B畜産・酪農対策、C砂糖・甘味資源作物対策について要請。水田営農対策の代表要請に立った千代正直JA全中副会長(水田農業対策本部委員長)は「いかに時代が変わっても日本農業は国民生活の基盤。今こそ政治の真髄を発揮してもらいたい」と強調した。

 12年産自主流通米価格は、暴落している。第2回入札(8月29日)の平均指標価格は60キロ1万6350円と過去最低を記録。昨年同時期にくらべて1478円も下回った。
 米以外でも、たとえば野菜は「無秩序に輸入が拡大し先が見えない不安がある。自分たちの努力だけではどうにもならない」(丸本正憲青果対策本部委員長)のが現状だ。JAグループとしては野菜の価格補てん事業の確立や輸入を制限する一般セーフガードの発動などを求めた。

「政治の責任を痛感。抜本策打ち出す」と松尾利勝自民基本政策小委委員長は言うが…。

 米をはじめとしたこのような農業の現状をどう捉えるのか。
 要請集会であいさつした松岡利勝自民党農業基本政策小委員会委員長は「価格は市場に委ねるが所得は政策で保証するとの考え方で稲作経営安定対策をつくったが、価格は暴落の一途で所得も下がっている。政治の責任を痛感している」と政策の不備を認め「3兆5000億円も農業予算がありながらその効果はどこへ行っているのか。もう一度やりなおさくなくてはいけない」と抜本的な政策の見直しをする意向を示し、とくに米の緊急対策については「思い切った支援が必要」と語った。

生産調整拡大は在庫処理策など条件の実現が大前提

農水省の米の需給見通しでは、今年10月末の持ち越し在庫は政府米260万トン、自主流通米20万トンの合計280万トンになる見込み。計画よりも61万トン上回ることになる。さらに12年産の9月1日現在の作況が「103」と発表された。この作況指数なら、30万トン程度の生産オーバーとなり、来年10月末の在庫も275万トン程度になると見通されている。
 このような「かつてない厳しい需給環境」を打開するために政府、与党、JAグループは12日から協議を始めたが、自民党は13日の農業基本政策小委員会で論点整理を行った。

 その内容は「9月中をめどに総合的な米対策を決定する」ことを前提に、
 @12年産米の生産オーバー分は生産者団体の主体的な取り組みとして主食用以外に可能な限り処理。
 A11年産自主流通米の販売残は政府持越米と交換し加工用等に処理。
 B13年産の生産調整については生産者団体の検討状況をふまえ引き続き検討。
 C政府持越在庫は、早期にその水準を適正化。また、自主米価格の安定を考え、緊急食料支援の活用や販売凍結による市場隔離も実施。
 D稲作経営安定対策については昨年決めた拡充措置の効果や自主米価格の動向を踏まえて検討、となっている。

 このうち生産オーバー分の主食用以外の処理については青刈りやホールクロップサイレージによる収穫前の調整も手上げ方式で実施することも検討課題としている。

 農水省が同委員会の示した論点メモでは、生産調整について、米価安定を図る観点から13年産の生産調整規模拡大に取り組む必要があるとした。ただし、JAグループとしては生産調整規模の拡大を視野には入れてはいるものの、13日の同委員会で「60万トンの過剰を政府の責任で処理するなどの確約が前提」(JA全中・山田俊男専務)との立場を明らかした。そのほか、政府買い入れと稲作経営安定対策の強化の実現も前提条件として強く求めており、自民党の論点整理でも「生産者団体の検討状況をふまえ引き続き検討」となった。

 最終的には、9月26日から28日の間に政府・与党で緊急対策が決められるとみられるが、その前に生産調整規模の拡大にあたってJAグループの求める前提条件をめぐる農水省との協議が焦点になる。協議は今週から進められまとまれば、25日のJA全国会長会議でJAグループの最終的な方針を固めることになる。



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