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解説記事
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「もっと近くに。そして一緒に。」をテーマに |
JA全農の16年度燃料事業を山田宣夫自動車燃料部長に聞く |
JA全国大会の決議によって本格的に経済事業改革が始まった。なかでも燃料事業は、JA―SSの収支改善など注目を集めている事業だといえる。石油事業では昨年すでにエリア戦略を見直し「新たなJA―SSネットワークの構築」を提案し、競争力のある石油事業の方向を打ち出している。そこでこの1年を振り返り、今後の課題は何かを山田宣夫部長に聞いた。 |
◆統合の成果活かし、一体的な運営体制を確立
――まず初めに、16年度からは支所が廃止され、自動車事業がなくなりますが、それにともなう事業体制はどうなるのでしょうか。 山田 自動車事業が終焉したことから、4月1日から部の名称が「燃料部」となります。そして、支所がなくなりLPガス事業の場合は本所集中型になります。そのときにどういう課編成にするかですが、従来の支所体制では、エリア別でしたが、ガス統括課・ガス小売対策課・ガス地域戦略課・ガスシステム課というように機能別編成にしました。 ――ガス地域戦略課とはどういう仕事をする部署ですか。 山田 県間の物流合理化のためのアライアンスとか、商系とのアライアンスなど、縦割りではなく横との連携をとり、コストダウンをはかる使命を持たせた部署です。 ――ガス小売対策課は… 山田 小売推進力が弱まっていますので、これを高めていくための機構です。 ――石油事業の体制はどうなりますか。 山田 支所廃止にともなって、全国10ヶ所に「石油事業所」を設けます。これは、いままでは意思決定段階が多段階となっていたものを短縮化し、JAとの双方向の情報の伝達をスピードアップすることを期待しての改革です。せっかく統合したわけですから、県本部と支所の機構を合わせて「石油事業所」にして、JAとより密接した事業推進をしようというのが基本的な考えです。 ――県本部から石油事業の部署がなくなったわけですか。 山田 まだ、全県ではありません。中国石油事業所は鳥取・島根・岡山・広島・山口の5県を担当しますが、この5県本部では石油事業の機構は県本部から離れ、県本部と全国本部の人間が一緒になって、JAへの対応を行うことになりました。 ――他はどうですか。 山田 完全にそうなったのは中国石油事業所だけですが、岩手・茨城・東京・大阪・徳島の5都府県本部でもそういう体制になりました。17年度中には、同様な一体化をもっと多く実現していきたいと考えています。 ――機構図でみると、事業所は本所の課と同じ位置づけですね。 山田 そうです。JAからの情報が早く伝わり、部長に直結することになったわけで、意思決定が早くなります。JAとの間で「もっと近くに。そして一緒に。」が実現しやすくなると考えています。 ――それは、いまの業界の流れでもありますね。 山田 流通ルートの短縮化は業界でも進んでいます。その流れに沿ったかたちで、JAグループの石油事業も再編していく必要があります。 山田 「JA全国大会」での決議もあり、JAも連合会も同じ目線で作業をしましょうということになったので、JA―SSの収支改善をはじめとする諸施策を進めるうえでは追い風になったと感じています。 ――共通の土俵ができたわけですね。 山田 石油事業ではいままで、JAは小売分野、連合会は卸ということでしたが、そうした垣根を取り払って、一体化して事業を進めるという運動の枠組みができたと評価できる年だといえますね。 ――石油事業では、JA―SSの収支改善が大きな課題となっていますね。 山田 石油事業の事業基盤は、JAのSSや配送用の施設ですから、競争力を持って商系と戦えるようにしなければ、連合会の事業も成り立たないわけです。JA―SSの半数近くが収支赤字では、100%が黒字のときと比べれば力が半減していることになりますから、これを黒字化させることが一番の主眼だといえますね。 ――3月10日の「生活事業委員会」でもその点が議論されたわけですね。 山田 「経済事業改革指針」にもとづいて、収支実態を明らかにして、再編計画や行動計画をつくっていくための条件を整えるために、もう一度確認作業をするということですね。 ◆県域マスタープランを策定し収支改善を促進 ――13年度から「収支改善運動」を進めてきていますね。 山田 13年度から5年計画で、毎年200SSずつ収支改善しようと取り組んでいます。取り組んだJA―SSの6割くらいでは収支が改善されています。しかし、その反面で、黒字が減少したり、黒字から赤字になったところ、赤字が増えたSSもあります。 ――その原因はどういうところにあるのですか。 山田 一つは、セルフSSの急増や販売競争の激化で小売市況が悪化し、小売マージンの低下で収益が減少したことですね。二つ目は、洗車などカーケア商品の取組みが弱かったことです。それからコスト面で大きな比率を占める人件費削減にむけた、要員の削減やローテーション管理、パート・アルバイトの活用が計画通り進まなかったことなどがあげられます。 ――その点は「経済事業改革の指針」ができたわけですから、今後は改善される… 山田 そういうことですね。全JA―SSの実態を把握して、「JAエリア戦略」を見直して「県域マスタープラン」を策定し、これをJA・連合会が一体となって実行していくことで収支改善を加速させていくことで足並みは揃ったと期待をしています。 ――「新たなJA―SSネットワーク」の構築を提案されていますが…。 山田 基幹SSのなかから一定の条件を満たすSSに加盟してもらい、販売や販促の施策を統一し、フランチャイズ・チェーンのようなかたちでつくっていきたいということです。 ――進捗状況は…。 山田 エリア戦略の見直しを行っていますが、これがキッチリと進めば促進されると思いますね。 ◆セルフとフルサービスを的確に組み合わせて ――核になるのはセルフですか。 山田 15年末で、全国に3273ケ所のセルフがあり、セルフ化率は6.4%です。11年3月末では85ヵ所でしたから、大変な増え方ですね。JAグループは現在まだ51ヶ所で、セルフ化率は1.1%です。すべてがセルフというわけにはいかないと思いますが、人件費を中心とするコストを下げて運営するためには、中心になるといえますね。 ――欧米のようにすべてがセルフにはならない… 山田 欧米人は自動車を移動のための道具だと割り切っていますが、日本人は宝物のように大事にしますから、カーケアの需要が根強くありますね。その需要を一定程度取り込むしくみを持っていないと、用品屋などにその需要が流れてしまい、燃料マージンが少なくなっているなかで、せっかくある収益源を逃してしまうことになってしまいますね。 ◆小売推進力の強化・コスト削減が課題 ――LPガス事業 ――LPガス事業の課題はなんでしょうか。 山田 一つは、JA段階での小売推進力が弱くなってきて、JAグループのシェアが低下してきていることです。 ――コスト削減はJAの課題ですか。 山田 いえ、全国段階も県段階もJAも含めて、価格が例えば20%下がったとしても、それに十分に耐えられるだけのコスト構造にしなければいけないということです。 ――具体的には… 山田 JAグループのLPガス事業は、輸入基地や全国各地に充填所がありますが、これが固定費になっているわけです。したがって、ボリュームが拡大しないと損益分岐点は下がりません。ボリュームを確保することが、組合員・利用者に安定的に安く供給するための一番大きな命題なのです。そのためには、小売推進力を高めることが、コスト競争力に耐えうる体質をつくることにもなるわけです。
――小売競争力を高めるためには何を…。 山田 顧客接近型の事業を実践するために、16年度では全国90JAを対象に売れる体制をつくるための「業務改善提案」を実施します。しかし、そういう体制をつくることが困難なJAには、連合会が小売販売事業を受託するという提案も行いながら、JAグループ全体での小売推進力を強化していきます。そのために今回の機構改革で「ガス小売対策課」を設置したわけです。 ――県域を越えた物流は進んでいるのでしょうか。 山田 県だけではなく、商系を含めて広域でと、茨城・千葉と出光で充填所や容器検査所をつくろうといま工事をしています。これが成功すると弾みがつくと思いますね。
――石油もガスも受託事業をすることになっていますが、どれくらいのJAから話があるのですか。 山田 全国本部の関連では、石油では10を超えるJAから話があります。ガスの場合には、JAあきた白神をすでに受託していますが、統合前から県本部が受託をしているところは数多くあります。 ――受け皿づくりも必要ですね。 山田 4月1日から、全農燃料ターミナル・全農テクノ・全農オートの3社が合併して、全農エネルギー(株)が発足しますが、この会社が、私たちが小売にウィングを伸ばしていくときの実務部隊となります。 ――16年度は条件が整ってきたので、3か年計画を着実に進めていくということですね。 山田 「経済事業改革元年」として、石油事業は土俵ができたので着実に仕上げていく。LPガス事業は、機能別体制によって地道な努力を積み重ねて、小売競争力を強めていくことだと考えています。そしてJAとともに「もっと近くに。そして一緒に」を実践していきたいと考えています。 (2004.3.31)
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