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シリーズ 食糧法改正とJAグループの米改革
米の新時代を拓くライスパワー
米消費拡大事業の新たな幕開く


JA全農主催 ライスパワーシンポジウム開く

 米のエキス「ライスパワー」が注目されている。麹菌、酵母、乳酸菌などの作用で生まれた「ライスパワー」は、胃炎の原因とされるヘリコバクター・ピロリ菌の増殖を抑制したり、胃潰瘍の予防、再発防止効果があることが分かってきた。また、アトピー性皮膚炎の発症予防、悪化防止効果も証明され、米の持つ新しい薬効として関係者の関心を集めている。
 3月7日、JA全農はこの「ライスパワーエキス」の効果について専門医の講演によるシンポジウム「第1回 米の新時代を拓くライスパワー」を東京都内で開催した。同シンポジウムは米の用途についてこれまでの「粒」や「粉」から、まったく新しい「医薬用途をベースにした米の抽出物」に焦点を当てたもの。日本人が3000年食べ続けてきた米に秘められた力による「米の新時代」の展望が語られた。シンポジウムの概要を紹介する。

◆新たな需要を創出し「健康」と「環境」にも貢献

開会の挨拶をする木下順一JA全農経営管理委員会会長
開会の挨拶をする木下順一JA全農経営管理委員会会長

 開会にあたり、木下順一JA全農経営管理委員会会長が主催者として挨拶した。
 木下会長は、「米のエキス、ライスパワーは私たち日本人が3000年にわたり作り食べ続けてきた米とその文化に育まれた発酵技術の結晶。日本人の暮らしのなかで共生してきた微生物の力を借りてできあがったもの」と紹介、胃潰瘍などの病気予防、改善効果という画期的な成果が認められることから「新たな米の消費拡大の幕開け」と強調し、今後は米の粒や粉としての従来からの用途拡大に取り組みつつ、ライスパワーに着目した「新たな需要の創出を図り、健康と環境に貢献していきたい」と語った。

◆日本型バイオテクで36種類のエキスを開発

 ライスパワーエキスは、麹菌や酵母、乳酸菌などによる発酵によって米から生み出された抽出物である。発酵法の組み合わせによって、数多くのエキスが生み出され、現在36種類のエキスが開発されている。そのうち9種類がスキンケアやヘアケア、胃の粘膜保護剤などとして実用化されている。
 製法の違いによりその機能が異なることが知られ、それぞれにナンバーがつけられている。
 このうち、ライスパワーエキスNo.11は、皮膚が水分を保つ能力を改善することで乾燥肌やアトピー性皮膚炎をも予防するという効果が認められ、厚労省から新規効能として「皮膚水分保持能改善剤」の承認を受けている。
 このNo.11のようにライスパワーエキスの特徴は、体に起きている炎症などをターゲットにその改善を狙う対症療法的な成分ではなく、生体の機能そのものを健全化させる機能にある。もともと米から作られているため、薬のような効能や効果を持ちながら食品にも化粧品にもなる。また、安全性も確認されているという。
 このように病気の予防や治療だけでなく、あらゆる飲食品を通じて日常的に摂取されれば健康維持にも役立つことから、米の需要拡大にも結びつくことが期待される。

◆日本農業の活性化につながる米の総合利用

徳山孝氏
徳山孝 ライスパワープロジェクト代表

 ライスパワーエキスを開発した徳山孝・ライスパワープロジェクト代表(勇心酒造代表取締役)はシンポジウムでライスパワーエキス開発の背景など「お米の総合利用研究」の概要について紹介した。
 徳山氏は、ライスパワーエキス開発は、“米を食べている日本人の肌はなぜ美しいと言われるか”、“世界の最長寿国となったのはなぜか”の視点で始まったことを紹介。
 また、かつては米から清酒、焼酎、味噌、麹など数多くの用途が開発されてきたが、明治以降では新たな用途開発が行われていなかったことから、醸造発酵技術という日本型バイオを活用し、米の新たな可能性を引きだそうと考えたという。
 「日本人の思想や文化の源泉ともいえる米について、生活の場を通じて理解されるには新たな商品が必要。新たな用途開発は米の総合利用に結びつき、農業の活性化をもたらす」と徳山氏は語り、ライスパワーは米の新時代を拓くだけでなく、「21世紀を米を中心とした天然素材の時代」とする幕開けでもあると強調した。

ライスパワーエキス
その効果を研究者が報告

 シンポジウムでは専門家がライスパワーエキスの効果についての実験結果などを紹介しながら、その効果について学術的に解説した。

◆胃粘膜防御機能を増強

渡辺純夫氏
渡辺純夫
秋田大学教授

 秋田大学第一内科の渡辺純夫教授は、ライスパワーエキスが胃潰瘍に与える影響について解説した。
 胃の粘膜は、粘膜への攻撃因子(胃酸、ストレスなど)と防御因子のバランスが保たれているときは異常はないが、バランスが崩れたときに胃炎や潰瘍が起きるという。これまでの潰瘍治療薬は、たとえばH2ブロッカーのように胃酸の分泌を抑える薬や防御因子を増強させる薬だった。渡辺教授は、高濃度のアルコールによって胃潰瘍を発生させようとするラットに、ライスパワーエキス(No.101)の投与実験をしたところ、胃潰瘍の発生の阻害を確認したほか、潰瘍の治癒も促進したという。この作用は胃粘膜の防御因子の増強によると考えられると指摘した。

◆ヘリコバクター・ピロリ菌による胃炎抑制作用を発揮

杉山敦氏
杉山敦
信州大学助教授

 胃に生息するヘリコバクター・ピロリ菌の感染者は日本人の約半数と言われている。この菌は、慢性胃炎の原因、胃癌の因子であることが判明している。信州大学消化器外科の杉山敦助教授はヘリコバクター・ピロリ菌に対するライスパワーエキスの効果をスナネズミを使って実験した。その結果、ライスパワーエキスはピロリ菌の除菌はしなかったものの、増殖抑制効果が認められたほか、慢性胃炎の活動の抑制、胃粘膜細胞の増殖抑制が認めれたことから、「ライスパワーエキスは、ピロリ菌による慢性胃炎を抑制し、胃潰瘍や胃癌に対しても発症抑制の可能性があることが示唆された」と話した。

◆アトピー性皮膚炎の発症・悪化予防効果

荒瀬誠治氏
荒瀬誠治
徳島大学教授

 子供から大人まで悩んでいる人が多いアトピー性皮膚炎は、食事やダニなど環境によって引き起こされるアレルギー素因だけではなく、皮膚のバリア障害も大きな要因になっている。徳島大学皮膚科の荒瀬誠治教授は、皮膚バリア障害の改善に着目し、ライスパワーエキス(No.11)に皮膚水分保持機能の改善効果、つまり、バリア機能回復効果があることを基礎実験で確認した。また、臨床試験を行ったところ、アトピー性皮膚炎の患者でバリア機能が強化され、カサカサして乾燥しているなどのアトピー皮膚の症状を、速やかに軽快させることが明らかになったという。こうしたことからライスパワーエキスはアトピー性皮膚炎の予防・悪化防止に効果があると報告した。
 
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