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第22回JA全国大会特集
「21世紀に向けて食料・農業・農村に新しい風を」



農と共生の世紀づくり
国民の信頼得られる実践を

木勇樹 農林水産事務次官
 
聞き手/若林英毅JA全青協会長

 JA全中は、9月7日の理事会で第22回JA全国大会の議案を正式に決定した。議案は10月12日の大会で採択されることになる。今回の議案は、21世紀の食料・農業・農村を切り拓くJAグループの取り組み課題を示したものだが、行政の立場ではどう評価し期待しているのか−−。議案の決定前にJA改革を中心にした提言を提出したJA全青協(全国農協青年組織協議会)の若林英毅会長が木勇樹農林水産事務次官に聞いた。

●●● 若い担い手のJA経営参画が重要 ●●●

 若林 今回のJA全国大会議案についてはJA全青協としても提言を出しました。(第22回JA全国大会議案に対するJA全青協の提言)高木次官にも生産者団体への期待や提言があると思います。まずその点からお聞かせいただけますか。

(たかぎ ゆうき) 昭和18年群馬県生まれ。東京大学法学部卒業。昭和41年農林水産省入所。平成4年食糧庁管理部長、平成6年畜産局長、平成7年大臣官房長、平成9年食糧庁長官、平成10年より現職。

  JA全青協のみなさんにはこれまで政策提言能力を高めてほしいとお話してきました。
 そういった観点から大会議案に対するJA全青協の提言を見ますと、たとえば「青年部のJA経営への経営参画」とありますが、21世紀に責任を持って農業を担っていくというみなさんがきちっと経営に参画するのは当然で、これをわざわざ提言しなければならないということが私は問題だと思います。

 そのほか、生産資材の価格引き下げや営農指導の指導力、販売力の強化なども議論がされているようですが、取り組みが遅きに失していると感じますね。担い手対策の強化についても単にお題目ではなくきちっと地に足のついた形で担い手の育成をしなければなりません。これには国も取り組んでいきますが、やはりJAがいろいろな取り組みを自主的にやるということがいちばん大事だと思っています。
 したがって、私はJA全青協の提言に全面的に賛成で、一部でも取り入れてもらえたらいいということのほうが問題だと思います(笑)。

 若林 3年前の大会ではJA合併推進を決めましたが、正直言ってあの大会は組合員のためではなくてJAの生き残りを中心に考えた大会ではなかったかという思いがあって今回の提言をまとめたんです。
 このなかでも強く言いたいのが、経営管理委員会制度の導入ですね。もうすでにJAは農家から選ばれた理事さんが運営できるような状態ではないわけですから、専門知識のある人の常勤体制と組合員の意見を集約する理事と分けた体制にする必要があるということと、それから後継者を育成するための定年制・任期制の導入ですね。

●●● 学校給食で地産地消の推進を ●●●

 若林 また、食農教育の促進についてはJAにも要求していきますが、同時にJA全青協としても今後、学校給食会への働きかけをやろうと考えているんです。

  食料自給率目標は国内農業生産の増大によりその達成をめざそうとしているわけですが、これは単に農産物を作るということではなく、質の高い、価格も合理的なものを提供するということです。
 そのなかでいちばん大事なのは農業者の努力が地域のなかで生かされるということです。それには学校給食への農産物の提供は、いわゆる地産地消ということになりますし、学童が地域の農産物を食べるのですから、親も含め農業にも関心が向くし、食料、そして農村を自然に理解することになっていきますから非常に大事なことです。
 そういう動きは事実出ていまして、たとえば埼玉県は小麦の産地ですから地域で穫れた県産小麦100%のうどんを学校給食に提供していますね。

 ただ、学校給食というシステムにはいろんな制約があることも事実で、たとえば、数年前にO−157による食中毒事件があってから、安全に神経を使いすぎている面があって、何でも火を通せと普通の食べ方になっていない場合もあります。ただ、これは地道な話し合いを通じて、課題を一つひとつ明らかにしていかなければならないでしょう。その過程で国がやるべきことがあればどんどん提案してもらうのが重要だと思うんです。やはり国のほうから画一的に示しても、地域の実態を考えると必ずしもうまくいかないと思います。

(わかばやし ひでき) 昭和35年山形県生まれ。置賜農業高等学校卒業後、就農。平成11年度山形県農協青年組織協議会委員長、平成12年度JA全青協会長。水稲4.4ha、受託3.6ha、採草地2ha、繁殖牛26頭。

 若林 米飯給食の普及という点でいえば地方は回数が多くても、消費地では増えていません。われわれも消費地にいかに働きかけるかを課題にしていて、ちょっと極端かもしれませんが最近は家庭でご飯を炊かないということですから、学校給食はおかずだけにしてご飯を家から持ってくることにしてはどうかとも考えているんです。

  それも一つの発想だと思いますね。それには東京都の石原慎太郎知事に会いにいくとか(笑)、会えないまでも知事と親交のある人と一緒に提言するとか、すぐには解決するとは思えませんがそういうルートをつくる努力も必要でしょう。
 たとえば、みなさんの声を聞いた石原知事自身が、学校給食に対してはやはりきちんとした姿勢を示さなくてはならないんだなと思ってもらわないと、行政レベルへの働きかけだけではなかなかうまくいかないと思うんです。
 JA全青協の会長さんなんですから遠慮することなく、どこへでも出かけていっていいと思いますよ。

●●● 現場からの地に足のついた政策提言を ●●●

 若林 青年農業者など担い手に対する支援策についてはどんなお考えをお持ちですか。

  基本的に行政がやることというのは、枠組みづくりなんですよね。枠組みをつくるその過程でみなさんの本当の声を聞き、現場がどういうことを求めているのか、それをふまえて枠組みをつくる、と。
 たとえば、機械の導入にしても経営の立ち上げ資金にしても、いろいろ地域によって実態が違うと思うんですね。国はどうしても一律的な政策を作らざるを得ないわけです。しかし、県、市町村とはどういう役割分担をするのか、そういうことをきちんとふまえないとうまくいかないと思うんです。

 ですから、逆に言うとみなさん方が今ある政策の枠組みを使ってみて、こういう点が使いづらいとか、効果がなかなか出ないというところがあれば、それをきちんと整理して、仕組みとしてここに問題があると言っていただきたいと思うんですね。
 しかも、この点についてはこれだけの支援が必要であり、それもたとえば5年間やってもらえればその後は自分たちの自助努力でうまくいくんだ、というような提案ですね。
 一般論としては、当然のことながら、担い手、新規就農者に対して支援をしますが、本当に生きた支援にするにはどうしたらいいかということだと思います。税金を使うんですからいちばん役に立つ使い方をしなければなりませんから。

 若林 昨年、「水田農業活性化対策大綱」が策定されたとき、われわれの提言もずいぶん盛り込まれました。今、大綱を検証していますが、たとえば、飼料作物生産に取り組んだ現場からはやはりこの条件は厳しいという声があがっています。しかし、この政策で少なくとも捨てづくりはなくなった、もう少し経ってから要求を出そうという意見も出る。意識が変わってきたんですね。ともかくまず検証してみて、その上でどういう施策があればいいのか考えて提言していきたいと考えています。

  それもぜひ継続してやっていただきたいですね。

●●● 議案をどう実践するのか−プログラムも示すべき ●●●

 若林 JA全国大会では、この議案を採択することになります。今後のJAグループについて提言があればお聞かせください。

  大会議案は「農と共生の世紀づくり」となっていますが、要は実践を本当にできるか、その裏付けがあるのかということが本当はきちんと示されないといけないと思います。それがないと絵に描いた餅ということになってしまう。
 ですから、大会の決議が決まったらどういうタイムスケジュールでどうやって実行していくのかということがないと、私は国民の理解と信頼は得られないと思うんです。ちょうど21世紀の前の年の大会ですから本当に意義のあるものにしないと。国民がみんな見ているわけです。ぜひ、国民の期待にそむかないような実践力のある決議がなされ、あわせてこういうプログラムで取り組むということも明らかにしてほしいですね。

 若林 ありがとうございました。


対談を終えて
 JA全青協では、昨年度より農業を取り巻く状況に適切に対処し、かつJAグループや農林水産省、政府等に政策提言を行うため、4つの専門部会(土地利用型営農、地域振興、環境、国際)を設置しました。
 それぞれの部会で課題の抽出と今後の方向について検討し、政策の内容をまとめ提言活動を実施しました。これまでの単に要求する活動から自ら取り組む課題も踏まえた上で政策のあるべき方向を提言していくという活動に変化しています。

 こうした活動の質的変化は、政策提言能力を高めていくことが全青協に期待されておりそのことを実現してほしい、という木事務次官の言葉に大いに触発されてのことです。
 今回のインタビューを通して、政策提言能力を高める必要性を再度教えてもらいました。青年部活動の基本軸として継続していきたい。
 また、今後JA全国大会の決議事項や今回の提言がどう実践されていくかに注意を払いたい。いま、JAグループにはスピーデイ―な改革が問われており、その進行管理に目を光らせていきたいと思います。(若林)




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