巷では有機リン系殺虫剤の害ってやつで結構な騒ぎになっている。トンボの大敵、空中散布を巡って、やめるのやめないのって騒ぎが起こっている。
有機リン系殺虫剤は、トンボのような昆虫にとっては確かに恐い物質だ。それが、人間様にも、神経系に害になるということで、某県議会でも話題になり、その県では無人ヘリによる空中散布を自粛するようにお達しが出た(注)。これは、トンボにとってはとてもありがたいことだ。だって、あの無人ヘリコプターのエンジン音が聞こえたら、あわてて逃げていたのに、その必要がないんだもの。
ただ、それまで無人ヘリ防除のおかげで害虫防除から救われていた人たちにとってははた迷惑な話かもしれない。だって、夏のくそ暑い時期に、田んぼに入って、我が者顔で稲を喰いまくる害虫をやっつけるのって、経験した者でないとわからないほど辛いものだと聞いたことがある。それに加えて、農家も高齢化が進んでおり、辛い防除作業をするだけでも一苦労な人が増えているので、その苦労から開放してくれる無人ヘリ防除に感謝している農家も多いと聞く。
そんなメリットを無くしてまでも無人ヘリの空中散布やめるのって結構勇気がいったんじゃないかな。農家とかから異議が出なかったのだろうか。ま、自粛を決めた理由ってのが「人間に害を及ぼす恐れがある」からということらしいので、「いやいやこんなにメリットがあるから使わせて」と言ったって通用しないかもね。
ただ、有機リンの代わりに人間に害が少ないという新しい薬が登場することになるんだけど、その対策をねらなきゃならない。というのも、有機リンってのは結構早く消えてくれるから、トンボにとって対策が練りやすいんだよね。だって、有機リンの代わりの新しい農薬ってのは、長く田んぼに残っているもんだから、逃げている期間が長くなる。長いあいだ田んぼを害虫から守ってくれるから、散布労力も減らせて農家にとって良い薬であることの証明でもあるんだろうけど、トンボのような昆虫にとっては結構つらいものがあるんだよな。
ところで、人間の神経系に害を及ぼす恐れがあるということだけど、農薬って登録までにそれは厳しい毒性試験をパスして、人間に害を及ぼさないようなものしか登録されないんじゃなかったっけ。使い方も、作物や人間に害が出ないように厳しく制限されているはずだよな?
加えて、薬によっては農薬登録が更新される際に新しい追加データが求められたりして、万全な対策が取られているはずだよな? それなのに何故「人間に害を及ぼす恐れ」があるんだろう。
新しい知見が出た? じゃ今まで何十年も使われていて問題が起こっていないのは何故なのだろう。この辺のところを明確にして、賛成派も反対派も納得のいく結論を出さないと、この問題は終わりそうにないですな。まっ、どっちにしろトンボにとっては、「無人ヘリ=逃げる」の図は変わらないのだけどさ。
(注)詳しくは群馬県のホームページ http://www.pref.gunma.jp/ を参照(編集部)
(田端とんぼ)
|