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コラム 農民は考える
とも補償

 とも補償ナンテ、訳の分からないことには参加しないと、私は3年間いっさいとも補償だの、互助会などへの加入を断った。
 私はこの3年間、生産調整配分面積より約20a余分に減反(転作)をしてきた。その結果、3年間、とも補償や転作助成金などは一銭ももらっていない。つまり、とも補償などに加入してない人には、たとえ配分面積以上の減反(転作)をしていても、転作助成金などは一銭も支払いません、というのが減反政策である。
 このことを裏返してみると、転作助成金などのカネはいらないヨ、という人は減反しなくてもよいということになる。
 それなら、はじめから助成金などのカネを必要としない人は減反しなくてもよい、と説明すればよいものを江戸時代の武士と同じだと思っている役場やJA職員は、減反は「強制」だと説明する。
 ところで、とも補償ってなに、である。
 たとえば、Aさんが10a余分に減反し、Bさんが10a配分面積に未達成だとする。この場合、Bさんの稲作収入の方が、Aさんの転作収入より多いので、その差額をBさんがAさんに支払う。これがAさんとBさんの「とも補償」であると。
 よく分からないが、これが「とも補償」であるとするなら、「とも」とはナニか、であり、ナニを補償するのか、である。
 全国とも補償とは、全国の稲作農家が「とも」である、ということになり、こんなバカげた話はない。
 その人の所得に応じて、生産調整面積を配分した上でのとも補償ならまだ分かる。日当5万円の役場の兼業職員も、借金をかかえている農家も同じ比率で生産調整面積を配分すること、そのこと自体がまちがっている。
 農家所得がゼロでも生活できる人と、農業所得を主たる生活費にしている農家とでは、そもそも「とも」ではないのだ。私は全中の兼業職員と「とも」にはならない。ナニを補償するか、である。
 稲作と転作の収入差を前提にして、稲作から転作にカネが動くことを補償と言うのなら、何年も前からこの前提はなくなっている。
 中山間地では、転作助成金の方が稲作収入より多いからである。とも補償の「補償」は、農家間のカネの移動だけではなく、稲作放棄に対する慰謝料も含まれているのであろうか。さらに、JAの「利益」も含まれているのであろうか。よく分からない。
 私が配分面積以上に減反する理由は、10a1〜2万円の所得で稲作などやっていられないからである。
 そして、これだけ不透明な、しかも道理の通らない生産調整がそれなりに行われている理由は、生産調整の目的に反して、米価が下がっているからである。

(岩手県東和町・渡辺矩夫)



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