農業協同組合新聞 JACOM
   

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農業協同組合研究会

「合併農協の課題 −参加型運営のトライアル」
農業協同組合研究会 第4回シンポジウム

営農経済渉外員を軸に組合員の声を聞く
JAはが野(栃木県)杉山忠雄 常務理事


杉山忠雄常務理事
杉山忠雄常務理事
 平成9年に6JAが合併したが、合併にあたっては共和国ではなく、旧6JAの垣根を取り払い真にひとつのJAにすることを考えた。たとえば、農産物販売は共計100%のJA一元化を図り、そのために部会も統一しいちごなど主力品目ごとに広域営農指導員を設置、旧JAの6地区をカバーして農産物生産の高位平準化をめざした。
 また、バランスのとれたJA経営をめざし、農産物販売では、合併当初の販売高251億円が現在では238億円になったものの、米の販売額の落ち込みを青果物の努力でカバーしている実績となった。
 合併のメリットとしては、労働生産性の向上や、規模効率が信用・共済事業で現れたことがある。たとえば合併前にくらべて貯金は290億円伸びた。また、金融・共済の事務も高位平準化した。合併によって高齢者福祉事業など新しい事業分野に取り組むこともできた。生活関連事業が黒字化しているのは、介護保険制度のスタートに合わせ高齢者福祉事業に取り組んだことが大きい。
 一方、合併によるデメリットと感じているのが、集落座談会への出席者減少など組合員や各種の組織との結びつきが弱くなったこと。また、役員数の減少で地域代表としての機能も低下しているのではないか。
 農産物販売では一元化をめざしたが、一律対応では地域のユニークな取り組みが生まれてこないという面もある。
 そこで組合員との結びつきを強める一環として、営農経済渉外員制度を導入した。これまでは、職員が訪問するのは共済、貯金、購買などの推進のとき、というイメージを組合員に持たれているので、それを変えるため、営農経済渉外員には、推進はしなくていい、まずは顔を出せと言っている。対象は認定農家などだがJAとの関わりでいえば5〜6割を占める。そういう組合員から、意見要望などを聞いてくる、という役割だ。それが評価され組合員からは、JAに自分の意見を言える場ができた、推進をしない職員に初めて会うことができた、という声も聞かれるようになった。
 そのほか生活活動刷新方策を策定し、総合企画部に女性組織の事務局を置き、女性部員の減少に歯止めをかける取り組みも提案した。やらされる活動からやってみたい活動へと転換を図り、自主的にもっと楽しい活動ができるような組織をめざしている。また、女性の正組合員数2000名を目標に推進し現在600名まで増えている。女性総代枠も30人つくることになった。
 今後は18支所を各市町1支店、計6支店とする再編が合意され具体化する。一層の渉外活動の強化のため、現在70人のLAを100名に増やす予定。施設の利用についても地域に望まれる活用を考えていきたい。


見通しをもった農業振興計画こそ参加型運営への道

愛媛大学 村田武教授

愛媛大学 村田武教授
愛媛大学 村田武教授

 JA糸島(福岡県)の取り組みを紹介し「参加型運営」をどう実現するかを提言したい。
 JAは平成7年に「ロマン溢れる糸島農業がめざす基本構想」を打ち出し農業振興の基本計画を確立した。その理念は糸島農業を担う「活力ある人づくり」、農を基盤とした「魅力ある豊かな地域づくり」、消費者に信頼される「すばらしいものづくり」の3本柱だった。
 活力ある人づくりについては、基本構想を打ち出した平成7年から「糸島地域づくりリーダー研修会」を毎年開催し、中核的担い手とリーダーの育成に取り組んでいる。また、生産組織の育成、農業法人や女性農業者などへの支援にも取り組んできた。
 魅力ある豊かな地域づくり、では地域づくり推進協議会を発足させ、行政の支援も得て支店単位で支店長が地域づくり運動を責任を持って進める取り組みをしている。また、14年にはJAが事務局となった「食料・農業・環境糸島地域フォーラム」を立ち上げ食と農の共生を目的に、地産地消、学校給食への地元食材の提供、食農教育などの実践を通じて地域住民との相互理解を深める活動を展開している。注目されるのはフォーラムのメンバーに地域内にある生協の共同購入班も参加してもらっていることだ。まさに地域住民の暮らしをどう支えるのかという地域協同組合の視点をもった取り組みといえるのではないか。
 すばらしいものづくり、という点では中核農家への農地利用集積を進める農地保有合理化事業の推進と大型施設園芸への転換を図るなどの取り組みを通じて、糸島ブランド品の育成、新技術の開発、環境保全型農業などを進めている。
 農業振興基本計画はその後の改訂を経て、14年に新たに「生命産業をめざす糸島農業基本構想」として策定された。基本はいずれも見通しをもった地域農業振興計画をJAが打ち出すというところにあると考える。
 そのなかで重視しているのが、女性活動と生活関連事業。女性の正組合員を増やすため、JAでは購買事業利用でレディスカードを発行し割引制度を導入するなどメリットを具体的に提示した。女性の正組合員比率20%超、総代13%を目標に運動を進め今年度には目標を達成するという。また、女性部ではグループ活動を積極化し、5名以上参加のグループが234にまで増えた。一方で合併にともない支所統合も実施した。ただし、支所が廃止された地域には高齢者などの不便を考え、Aコープ店まで運行する「無料買い物バス」をJAが運営している。
 見通しをもった農業振興策とともに地域住民を対象にしたさまざまな事業、運動、サービスを提供し、住民の心をつかむことが参加型運営の実現にとって重要なことではないか。

(2006.12.4)



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