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農業協同組合研究会 |
第6回シンポジウム in十日町 地域活性化と農協の役割を考える |
地域活性化と農協の役割 ◆農地政策改革と地域活性化 農水省はこの8月に114戸の経営状況継続調査結果を公表し、経営規模や農業所得の推移を示した。それによるとこの10年間に経営面積は6haから8haへ34%も増えている。しかし、農業所得は逆に23%も減った。これが今の農政がもたらしている現実だ。 ◆農山漁村活性化計画の課題 関連してもうひとつ関心を払わなければならないと思うのは、5月に国会で成立した農山漁村活性化法である。農山漁村における定住と都市との地域間交流を促進するための措置を講ずるのが趣旨。この趣旨に即して県または市町村が活性化計画を策定することになっており、計画策定には農林漁業団体も協力することになっている。農協組織もそれに加わることをいずれ要請されてくるのだろう。 水田農業地帯の農協経営の現状 ◆厳しい農家経済を反映する農協経営 農協の事業経営基盤である農家(販売農家)経済の推移をみると、90年代、農産物価格が低下するなか生産資材価格が下がらないために農業所得が継続して落ち込んだ。農外所得も不況の影響を受けて厳しい状況で農家総所得もずっと減り続けてきた。 ◆リストラで維持する収支改善 このことは他の農協事業にも反映し農協の経営収支に跳ね返っている。事業総利益は1996年を100とするとずっと減り続け、05年で83と10年間で17ポイント下がった。事業総利益が減少しているなか、事業管理費を抑えるという努力をしているが、02年まではまだ事業総利益を超えるような事業管理費の抑制にはなっていかなった。しかし03年から事業管理費の削減幅のほうが上回り、ここ3年ほどは事業損益は改善する傾向をみせている。96年の事業損益を100とすると01年、02年では50台にまで落ち込んだが、いわゆる人件費削減などリストラを進めたここ数年は実は100近くにまで回復している。 ◆農協経営の地域格差 ただし、全国一律にこういう厳しい現状が指摘できるのかといえば、地域によって格差がある。都道府県別に当期損益の5年平均値を出してみると、神奈川と愛知がかなり大きな当期利益を出している。01〜05年の全国損益合計は960億円程度だが、この2県で300億円近い。3分の1弱を占めるということになる。 一方で非常に厳しい地域があり、当期損益レベルだけでは必ずしも十分ではないが、抜本的な対策が求められている農協があることが分かる(表)。もちろんここには地域経済の格差という問題も大きく反映していると思われる。 農村部の農協は準備金、積み立て金の取り崩しや、人件費の削減、支店の統廃合などリストラをして利益を出し、なんとか収支を改善してきた。 ただ、いつまでもこういう対応ができるだろうか。さらなる合理化が必要だということになって、支店の廃止などを進めれば組合員は農協から離れ、本来の事業基盤が縮小、一層、事業量の減少という縮小スパイラルにはまっていくのではないか。 ◆利用構造の変化に着目 農村部の農協の今後の対応方向を考えた場合、まず今の農協事業がどういう人たちに利用されているか、農協の利用構造というものを考える必要がある。 ◆准組合員の地域づくり参加 ただ、農協が実際に動いている方向は実は非農家、員外利用の拡大という方向に動いている。県内の農協へのヒアリングをした結果でも員外利用を増やさなければ事業は縮小する一方だという認識が示されている。 |
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法人化推進におけるJAの経営戦略と地域に同化する取り組み ◆生産組織の法人化を促進 JA十日町管内の主産業は織物で最盛期は年間600億から700億円の生産額があった。ところが今はその10分の1以下、50億円から60億円にまで大変に衰退してしまった。 ◆地域の意識も高揚する 集落を基盤にした生産組織の農業生産法人では今、4つの株式会社が設立されている。 ◆改革の確実な実行 JA十日町の経営理念は簡単に言うと「素敵な笑顔と元気な挨拶」。役職員で挨拶もまともにできないものがいたら、組合員のみなさんが離れていく。これは10年以上前からのことだが、今でも徹底させている。 ◆地域に同化する農協 われわれは他の農協と特別に変わったことをしてきたつもりはないが、農協運営の基本について、かつて「あくまでも私たちの目的は地域密着。コマに例えると組織は鋼鉄のように強くしっかりとした軸で結ばれていることが大事。その軸を回すには地域の輪がなくてはならない。地域に広がるJAづくりをしていけば遠心力がついてJAはいつまでも回り続けると確信している」と言ったことがある。今でもこの考え方は間違いだと思っていない。地域の輪を広げるために運動をしている。 ◆地域住民を大事にする さらに重要なことはお客さんを大事にすること。そのためには教育が大事だ。職員教育については中央会の研修なども活用しているが、われわれは管理者養成学校、企業人材クリニックなどを盛んに利用してきた。企業的な研修で非常にすばらしい成果が出ている。もちろんコストがかかるがこれはもったいないどころかもっと使っていいのではないかと思う。今後は職員研修のために年間1000万円程度かけてやるべきではないかと考えている。 ◆誇りを持てる地域に努力 食品の人気ブランドではある新聞の調査によると1位が夕張メロン、2位が魚沼コシヒカリだった。しかし、最近は魚沼米といえどもなかなか売れなくなってきている。今間違うとおそらく大変なことになると思っている。何としてもわれわれの地域では1等米比率を95%以上にもっていく努力をしたい。何でもいいから出荷すればいいというのは通用しない時代になった。たとえば5割減減などは当たり前の話。この地域ではやっと3割減減に取り組んでいるが、さらに無農薬の栽培も求められるだろう。そのうえで安全・安心な米づくりができればまた評価も高まると思う。そういうブランドとして誇りを持つ努力が必要であるという気がしている。 |
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(2007.9.19) |
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