農業協同組合新聞 JACOM
   

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農業協同組合研究会

コメ問題でミニシンポジウムを開催
生産、流通、販売がいかに一致してコメを売るか
木徳神糧の木村社長が基調報告



 農業協同組合研究会(梶井功会長)は3月11日、東京都内で「コメ流通の変化にどのように対応するか」をテーマにミニシンポジウムを開いた。当日は、米卸業界の大手、木徳神糧(株)の木村良社長が、米流通の自由化のなかで進む業界の変化と同社の対応、全農の米穀事業改革への評価などを語った。このなかで木村社長は「今後は生産、流通、販売がどう一致して消費者に売るか、その仕組みの構築が課題となる」と指摘し、産地、JAと流通業者の連携の重要性を強調した。シンポジウムには関係者約90人が参加した。基調報告の要旨を紹介する。

◆主役はコンビニにシフト

木徳神糧(株)社長 木村良氏
木徳神糧(株)社長 木村良氏
 当社の米の取り扱い量は20年前は年間3万トンだったが、現在は24〜25万トンにまで伸びている。量販店、生協などと連携して商品開発してきた結果だと思う。
 しかし、最近の米販売の主力はコンビニエンス・ストアに移ってきている。
 月間の米の供給量は2万トンで、このうち玄米は3分の1で残りは精米販売。販売先別にみると量販店、生協が7000〜8000トンで5000トンが中食、とくにコンビニのおにぎり、弁当向けとなっており、その他が1000トン。セブンイレブンの年間のおにぎり販売は10億個とも言われる時代、主役はコンビニとなり量販店は頭打ちとなってきた。
 量販店が低迷している理由のひとつは、どこでもコンビニと同じようなマーチャンダイジング指向になってきたからではないか。すなわち、在庫リスクを負わず、売れる分だけ仕入れる、新商品についても販売リスクは負わないという姿勢である。売場のワクワク感づくりがなく特売日で安く売るなど、同質競争になってしまった。顧客のことを考えずリスクも負わないから、われわれからの大胆な提案も受け入れてもらえないということもあった。
 しかし、最近は変化も出てきた。量販店などの第一線の仕入れ担当者から、コンビニ何するものぞ、と意気込みも聞かれるようになってきた。それがブレークスルーにつながるように卸としても役割を果たしたいと考えている。

◆産地指向強める外食産業

 米の取り扱い量の40%程度が外食向けになっている。
 その外食には、産地と提携して米を調達する動きも強まってきたと思う。たとえば某居酒屋チェーンは自社農場を持ったり産地指定したりして仕入れている。
 外食からの要望は決して価格だけではない。我が社にあった米を提案してほしい、と独自性を求めてくる。その要求に応えるために、2、3年がかりで産地、銘柄を探して商品提案につなげることもある。
 実際、今はすでに18年産米をどう供給するのかというのが外食産業との商談の中心である。それも19年産をどうするかを念頭に置いて担当者は話し合っている。こう考えると外食が流通を担う面も出てきたといえると思う。

◆価格変動リスクをどう回避するか

 当社も15年、16年と2年連続で大赤字だったが、不良在庫をようやく処理して今は新しい時期に入ったところだといえる。
 赤字となった原因は15年から16年にかけての米パニック。15年産の不作で新米価格が高騰し、たとえていえば60kg1万5000円が2万円にもなった。取引先からは、ここで供給できなければ卸ではない、と供給責任が問われ、高値にもかかわらず仕入れざるを得なかった。また、消費者の新米志向は強いと考えていたこともある。
 ところが政府米として古米が販売され、それが消費者に受け入れられると米の販売価格はどんどん下がってきた。16年には価格は下落し、高値で仕入れた新米に大きな差損が出ることになった。業界全体でその額は2年間で400〜500億円になるとみている。
 そして、17年になると各地で大手卸が倒産するという事態が出てきた。15年産米の価格高騰とその後の暴落による損失で、経営が行きづまった結果だ。
 卸には供給責任は一定程度はあるだろう。ある程度の在庫があるから安心して取り引きしてもらえることになる。しかし、今回の件が示しているのは、大幅な価格の変動リスクに卸がさらされると経営が成り立たなくなることだった。
 卸にとって価格変動リスクをいかに最小限にとどめるか、は大きな課題である。そのツールがこれからの経営には必要になると思う。例えば先物取引もその1つである。
 これからは生産者も含め、作った米がどういう価格で売れるか分かったうえで、生産、流通、販売に取り組むことは大切である。
 今後の卸には食品メーカーとしてのものづくりが求められる。安心して商品づくりや品質管理に注力するためにも、有利で安定した価格で仕入れることが大切だ。
 先物取引というと米が投機の対象になるとの懸念も聞かれるが、いかに儲けるかという観点ではなく、価格変動リスクを回避して、産地とともに、安心して新しい企画の仕事に取り組むきっかけになる。また、先物価格が決まることで倉荷証券に担保力がつくことも見逃せない利点だ。それは資金調達の支えになると思う。

◆全農米事業改革は業界にも大きな課題

 全農の米事業改革はまだはっきりと分からないというのが業界の正直なところだろう。
 ただ、販売対策費の問題は、業界の競争上の合理性の問題と、生産者にとっての取引の不明朗さの問題が一緒に議論されていないかと思う。当社は年間約25万トンの仕入れのうち95%が全農仕入れだが、これだけのボリュームを持つものとそうでないもので同一価格というのは、合理的かどうかという気持ちも持つ。
 今後の調達、販売についてすぐに絵が描ける状況にないが調達の多様化を考える必要もあると感じている。実際、JA、農家からの直売はかつてと違って無視できないマーケットになってきている。
 いずれにしても明朗な価格形成、価格変動リスクの回避、生産と流通、販売が一致して築く販売体制など、このどれも単体では解決できない問題だ。
 ただ、消費者は生産までトレースできる米、健康志向といったさまざまなニーズを持ち、業界も特性を出そうとしている。そのためには、生産、流通、販売がお互いに情報の流れを大事にしていく必要がある。そのなかで産地は地域特性を出していくことではないかと考えている。

(2006.3.22)


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