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市場主義強める社会 今こそ、協同組合の出番 農業協同組合研究会が第1回研究会を開く |
■実態をふまえた議論求める この日の報告者は前明治大学教授で同研究会理事の北出俊昭氏。報告では(独)産業経済研究所の山下一仁上席研究員の論文『農協の解体的改革を』(日本経済新聞 2005年6月7日付け)を中心に農協批判論の問題点と農協改革の課題などを話した。 ■農業政策こそ問われる課題 講演終了後の参加者との意見交換では、山下論文の問題点として北出氏が指摘したように「政府の政策の誤りをすべて農協組織の責任であるかのような論調は問題」との声が多かった。また、「論文掲載紙に反論掲載を実現するなど、組織としてきちっとした反論ができていないのはJAグループとして問題だ」とのJA役員からの意見もあった。北出氏が提起した組合員が自発的に参加する組織強化については、現在、生産現場で課題となっている集落営農組織に関連させて、今後の農政の方向を問題とした意見も多かった。 「担い手の議論のなかで集落営農組織が決め手のように議論されているが、実際には集落の人間だけでは農業ができなくなっている現実もある。農家が減って他の集落の人に任せなければならず農業用水などの資源をどう管理するかが深刻」との意見や「集落営農を担い手として認めるといっても農水省は法人化が要件だという。なぜ、法人化しなければならないのか」との指摘もあった。こうした意見については「法人化を担い手要件とすること自体、担い手限定政策の現れ。集落営農を発展させるためではないことは明らか」との意見がある一方、「水田農業にはすでに選別すべき担い手がいないのが現状ではないか。担い手を特定していかなければ将来の地域農業が成り立たないという地域もある。法人化も持続的な営農のためには必要」との指摘もあった。 そのほか水田農業が農協にとっても最大の課題という観点から「自給率40%でありながら米は余っているという矛盾がある。単純な規模拡大ではなく、何を生産者に作ってもらうか画期的な水田利用についての農協営農指導が問われている」といった農政のあり方から農協を論ずるべきとの声もあった。 そのほか組合員の農協離れの根本的な問題として広域合併の進行も指摘され、なかでも金融自由化に対応して貯金残高や正組合員戸数を目標に掲げて合併促進策を打ち出した1980年代に入ってからの全中総合審議会答申について「改めてこの研究会で総括することも課題解決には不可欠ではないか」との意見もあった。 意見交換をふまえて研究会会長の梶井功東京農工大学名誉教授は「農協をどう改革、発展させるかの問題の前にやはり日本農業の将来をどう描くかの議論が必要だ」と指摘した。 【講演要旨】
●真の「民」の視点を農協に 戦後農政は農地改革からスタートしたが、GHQは小作人が再び小作人に転落しないための保障措置として農協設立を勧告、農協法制定につながった。つまり、戦後最大の農政改革は農地改革と農協設立にあるといえる。そして、食管制度のもと米流通の責任団体とされ、食料安定供給上、農協は重要な役割を担わされた。農政改革を阻んでいるのが農協と批判するが、山下批判はこれまでの農政の反省を抜きにした批判だ。問題の根源は農政にある。 ●農協解体は日本農業の解体 山下論文や規制改革会議答申などは農協の平等原則を批判している。しかし、協同組合原則では性別、社会的、人種的などの差別は行わない。つまり、協同組合は人の組織であって、農協も経営規模などで差別をしない。資本の組織と違い人の組織では平等は要。平等の否定は協同組合の否定にほかならない。 ●地域社会と総合農協の役割 信用・共済事業の分離論も出てきているが、この問題で注目しておきたいのは1980年のレイドロウ報告(西暦2000年における協同組合)だ。レイドロウは、その報告でこれから大事なことは協同組合地域社会を建設していくことだと強調している。そしてその点では、事業ごとに分離された協同組合ではなく日本の総合農協が重要な役割を果たしていると評価している。こうした協同組合の価値を基礎とした農協の改革、発展を探るべきだろう。 ●協同組合の活動に誇りを われわれは協同組合の価値と役割を再認識する必要がある。
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(2005.9.8) |
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