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検証・時の話題 |
大規模JAが抱える課題が浮き彫りに (社)農協協会「JA総合事業にかかわる意識調査」を見て 梶井功 東京農工大学名誉教授 |
◆全国平均規模以上を対象とした調査 以下考察するJA「意識」調査は、農協協会が“各県で組合員数が上位7位までのJA”に、“上記以外のJAで特色ある取り組みや実績のあるJA”若干をプラスするというかたちで選んだ356JAに調査票を配布、回答のあった226JAについて集計したものである。対象選定方法からも容易に推定できるように、対象JAは大型JAに偏っており、たとえば平均組合員数は1万7400人になっている(図1)。03年総合農協統計表によれば全国1JAあたり組合員数は9610人だから、ほぼ倍近い。集計は組合員数2万人以上の65JAを大規模JA、1万2000人以上2万人未満の79JAを中規模JA、1万2000人未満82JAを小規模JAとして行われているが、全国JAの規模別分布からするなら、小規模JAとしたそれが全国平均規模、中規模JAとしたJAが大規模JA、大規模JAとしたJAを巨大JAと読み替えてみてもらったほうがいいかもしれない。 厳しい経営環境、明るくない収益予測 ◆共済・購買事業で厳しい見通し JAを取りまく近年の状況が厳しいことは、改めていうまでもないところだが、大型JAといえども例外ではなく、JA諸事業が伸び悩んでいることが本調査でも明瞭に示されている。調査JA全体の03年にくらべての04年の各事業実績増減状況(△はマイナス)をみると、貯金+1.9%、貸付△0.8%、長期共済△2.3%、短期共済+2.7%、購買△2.2%、販売△0.4%になっている(図2)。長期共済と購買両事業の落ち込みの大きさに注目すべきだろう。 ◆“渉外活動”に多くの課題 JA経営の二大支柱になっている信用・共済両事業の収益増強施策として各JAが何を重視しているかをみると、信用事業では“住宅ローンをはじめとする各種ローンの増強”をあげるJAがダントツに多く(図4)、調査JAの77%を占めている。共済事業の“契約増進対策”として“最も重視していること”では、既存顧客については65%のJAが“日常活動を通じた信頼の獲得、顔つなぎ”をあげ(図5)、新規共済契約獲得策としては50%のJAが“世帯内未契約者への推進”をあげている(図6)。 ◆システム経費削減は最優先課題 信用事業の収益増強策で私が注意を引かれたことに、%は住宅ローンよりかなり低く10%だが、“JAのコスト削減”が住宅ローンのつぎにあげられていたことである(図4)。 ◆量販店直接取り引きと配送方法 販売事業で“今後の販路拡大に向けて有効と思われるもの”として、最も多くのJAがあげているのは“生協・量販店との直接取り引き”であり、65%のJAがあげている。ついで“地産地消の取り組み”54%、“直売所”52%になるが(図8)、都市部では“直売所”がトップ(74%)、都市部以外では“生協・量販店との取り引き”(69%)がトップという地域差があり(図9)、JA規模別では、大規模JAは“直売所”“生協・量販店との直接取り引き”“地産地消の取り組み”が65〜69%でならんでいるが、中規模JA、小規模JAでは“生協・量販店との直接取り引き”に期待する割合が高くなっている(図10)。統一仕入れでバイイング・パワーを強めている量販店との“直接取り引き”で成果をあげるためには、強い販売力をJAが持つ必要があるが、その強化策はどうなっているか、気になる点である。 |
(2006.2.6) |
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