農業協同組合新聞 JACOM
   
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第24回JA全国大会主要分科会レポート
JAグループの総合力を発揮した農業経営支援 −第3分科会
決め手はトップの決断 JA本来の役割追求を


◆どうする体制整備

 JAグループによる担い手の経営バックアップが注目されている。組合員の経営と暮らしを安定させることはJA本来の役割。JA全国大会決議は、その役割の発揮を新たな観点からうたった。具体的にはJAの経営管理指導体制を整備していくことなどを挙げている。
 きめ細かい農業経営支援はJAの各事業にまたがることになり、タテ割り体制では対応が困難だ。総合力の発揮が求められる。激しい総合農協批判に対峙していく上からも経営支援の取組みは非常に重要だ。
 分科会はヒト、モノ、カネの投入を必要とする経営支援の体制をどうやってつくっていくのかを議論。やはりJAトップの決断が決定的であるという結論になった。
 経営支援事業はたいていが赤字覚悟のスタートとなる。黒字転換までには何年間かの辛抱が必要だ。
 しかし例えば記帳代行にしても〈どうせ赤字事業だから〉といった中途半端な姿勢で取り組んだところは失敗しており、決意を固めて本腰を入れたJAは成功している、などという体験談も先進JAから出た。
 情勢では銀行などの農業融資参入が指摘された。三菱東京UFJ銀行の場合は会計事務所と連携し、財務データにもとづいて低金利の無担保無保証人融資を行っており、500万円程度までなら窓口ですぐに借りられるという。そうした競争の中で生き残りをかけてJAグループの経営支援が推進されることになる。
 また品目横断的経営安定対策の導入や畜産・園芸を含めた経営の大規模化・複合化の進展などに対応して経営支援はますます重要であるとの強調があった。

◆申告支援を超えて

 一方、この取組みは大規模法人からも期待されており、JAは今後、法人税対策をぜひやらなくてはならないが、都市部のJAでは資産管理会社を持っていてすでに法人税対応を実施しているとの報告もあった。
 分科会では最初にJA全中営農・担い手対策室の生部誠治室長が課題提起をした。
 それによると取組みの現状は、決算書を活用して農業経営指導をしている都道府県中央会は4県に過ぎない。総じて確定申告までの支援にとどまっており、経営指導には至っていない。
 JA段階では▽決算書にもとづいて経営指導をしている▽組合員に(JAとの取引の)仕訳データを提供している、がどちらも20%(109JA)と少なく、記帳代行をしているJAも21%だ。しかし確定申告を支援しているJAは83%と多い。
 経営指導に至らない理由(複数回答)で1番多いのは経営指導のできる人材がいない43%(151JA)、経営指導の位置づけが明確でない40%などとなっている。
 事業ごとに異なるJA情報システムのもとで名寄せシステムがないという回答も33%にのぼった。
 こうした現状を踏まえて室長は経営支援の必要性を説き、JA農業経営支援事業のイメージを示した。
 さらに同事業によって期待される利用者(組合員)のメリットとして(1)煩雑な経理業務を外部化することで事業に専念できる(2)JAは税理士・会計士と比べ低料金を実現できる(3)青色申告への対応で節税できる(4)経営分析・診断結果のデータ活用で経営改善ができる(5)指導を受けられる(6)有利な融資などの支援が受けられるの6点を挙げた。
 次いで3氏が実践報告を行い、宮崎県農家経営支援センターの岩村洋事務局長は、県行政と県内のJAグループが一体となって農家経営支援策を実施している状況を報告した。

◆成果挙げる宮崎県

 同県では農業生産が稲作から畜産へと軸足を移したため、経営感覚不足の農家対策が必要となり、平成13年から支援事業を始めた。 県下13JAの正組合員計6万8000人余のうち7000人余が青色申告会に組織され、そのデータが県のセンターに入力されている。
 これをもとにした5年間の経営分析によって経営不振の農家にコンサル指導を実施し、再建計画を策定させ、経営改善を確実に実行させるという仕組みだ。コンサル団は県広域普及員と試験場技術者を中心に62人で構成している。
 コンサル件数は17年までの5年間に627戸。うち407戸が負債を減少させるという成果を挙げた。負債減少額は合計約25億円に及ぶ。
 事業予算は県と県内JAグループが半分ずつを負担しており、またJA県中央会事務局に中央農家経営支援センターを置いている。
 今年度からは経営悪化を早期に発見し“早期治療”ができるように農家経営モニタリングができる体制をつくるという。
 引き続いての実践報告では同県・JAこばやし農業経営支援室の山下嘉親室長がJA段階の支援実践を報告した。
 ここでは農家ごとに作物別の収入がわかる一覧表を作成し、問題点がすぐつかめるようにして、それを品種改善の指導につなぐなどの成果を挙げている。
 また例えば過剰投資とか未収金などの改善点もすぐわかるように数値をそろえた上で指導をしている。
 さらに「赤字になるような作物は作らないという指導をさらに進めて、趣味でものを作るようなことはやめてもらう。JAとしても農家が1人やめたら職員も1人やめるといった覚悟で農家経営支援を実践している」と強調した。

◆JAはが野の実践

 このあと栃木県・JAはが野の杉山忠雄常務が確定申告支援記帳代行について実践報告をした。
 青色申告の組合員は約1000人だが、JAが担い手対策として今年から実施した記帳代行の利用者は100人(複式簿記)だ。今後PRをして300人程度に増やす計画だ。
 利用料は年間3万円(税理士は1か月で3万円、申告時は4万円が相場)で、代行の経費に見合う利用者数は300人以上という。
 JAは農家の大型化や営農集団の法人化、また集落営農の共同経理などにともなって記帳代行のニーズはさらに増えるとみて代行の事業をスタートさせた。
 また昨年からは広域的に営農指導を実践する営農経済渉外員という専門職を設置し、9人が園芸特産の農家約1700戸を巡回しており、組合員の評価は高い。青色申告農家の大半はこの巡回先に含まれている。(「第7分科会」のレポートはこちらへ

(2006.10.24)


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