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紙面審議会
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農協運動の発展にどう寄与するのか 「農業協同組合新聞」紙面審議会(上) |
◆紙面審議会委員(五十音順) ◇座長・梶井 功 東京農工大名誉教授 ◇安 澄夫 福岡県・JAおんが組合長
梶井 農協協会の規約第4条に「本協会は、農村における協同組合運動実践者の同志的結集を図る」とあります。「農業協同組合新聞」は、協同組合運動という観点にたち、それをさらに発展させるような役割を果たす新聞になっているのかについて、いろいろな側面から率直に語りあいたいと思います。 山地 新聞発行から50年余が経っているそうですが、新聞というのは明治以来、吸収合併の多い分野で、制度的な放送とは違って紙面で生きていますから本質的に融通無碍なところがあります。それがうまくいけば非常に伸びるわけです。この新聞は、農業分野の新聞では直球で一番切れのいい球を投げている新聞だとみています。 梶井 形式的な枠にはまっていないところがいい… 山地 何が、誰が現れるか分からないというのは、編集者は大変でしょうが、いいと思いますね。 梶井 小島さんは新聞の批評を随分されていますが、いかがですか。
小島 第一に新聞の性格が一番問題だと思います。農協協会の主張を浸透させるための新聞なのか、そうではなくて会員に対するサービスとして協同組合に対する理解を深めるとか時々刻々変化する環境に対する知識をもってもらうためなのかをハッキリさせないと、これでは売れない新聞だと思います。読んでもらうということになれば、協同組合に対しての内外からの批判を積極的に出さないと、全然、面白くないし、政府の官報のようになってしまう。
第三に、新聞はニュースなり変化なり、読者に提供していかなければいけないことがたくさんあるわけですが、この新聞を読んでいると、ニュース的なものとか、各地の農協でどういう問題があるのかといったことが、ほとんど、載っていない。会員のネットワークが活かされていないのではないかと思います。そして、全国連の動きをもう少しキチンと出さないと、農協全体としての機関紙的役割もなかなか果たせないのではないかという感じがします。 安 「新聞でありながら、雑誌的な」というより、雑誌なのに新聞の形をとっていると考えましょうや。(笑) 上山 私は現役のときから、この新聞は、小さいけれど他の新聞とは違った切れ味があると思っていました。それは、この新聞がわりあいに自由に編集していますので頑張って欲しいという気持ちがあったからです。また、文化面で「農協人文化賞」をやっていますので、応援したいという気持ちもありました。
梶井 小島さんからご指摘があった3番目の「ニュース性」については、松下さんはどう思われますか。 松下 この新聞は日刊紙ではありませんから、ニュースを取り上げるのは難しい面があると思いますが、新聞である以上、その時代のものは取り上げなくてはいけないとは思います。
阿部 この新聞は、農協の役職員層を対象にしていると思います。ニュース的なものは、他にたくさんあります。それらとは違った味のある新聞で私は大変に重宝しています。例えば、谷口信和東大教授の「“集落営農”は本当に担い手としてみとめられたのか」(4月22日号)を読んで、なるほどこういう論調もあるなと思いました。いろいろな面でタイムリーに問題点を掘り下げて解説し議論してくれているのは、現場の人間にとっては論点整理ができます。 三嶋 パッと見た感じ紙面が硬いですね。農業関係のいろいろな新聞を取っていますが一番硬いですね。逆にいえば真面目だという印象を受けますが、取っ付きにくいですね。
梶井 私が感心をしたのは、有明干拓について、そもそものところから説き起こして問題の所在をまとめていましたが、これは地元紙ではありましたが、他ではみたことがありません。それから、青森と岩手県境の不法投棄についての記事も記憶に残っていますね。こうした腰を落ち着けたニュース解説をしているのは、非常にいい点だと思いますね。 坂本 この新聞を読みますと相当に詳しく分析してあり、たいしたものだなと思います。経営者としてみてみると、早い情報は他にありますから、この新聞を読むことで、もう少し深く入れるなと直感的に思いました。 今村 私は、この新聞に時々書かされており、そういう人物は本来、紙面評価委員になるべきではないと思っているのですが、それはさておき、農業関係の新聞がいくつかありますが、役職員に対するメッセージとか問題提起はこの新聞が一番やっていると私は思っています。
太田原 私も何度か書かせていただいて、自由に意見がいえる貴重な場だという感想をもっています。発行間隔からいうと週刊誌の性格をもっているので、いい意味での週刊誌的ゲリラ性を売り物にしたら歓迎されるのではないでしょうか。 北岡 この新聞は日刊紙ではないのでニュース性は遅れた部分があると思います。それを補完する内容で一歩踏み込んだ内容が欲しいと思います。新聞の販売面から見て、JAグループの内側への、役職員への情報発信のスタイルだと思います。
安 私とこの新聞の出会いは、忘れもしません。昨年10月9日の朝でした。ひょんなことからホームページ(HP)を覗き、JAひたちなかの先崎さんが書かれたJA大会を批判する提言に出くわしたのです。いまからJA全国大会のために上京という急いでいるときでした。赤い糸でしょうか。直感的に読みもしないで印刷だけして空港へ行き、飛行機のなかで読み「これは凄い」と思いました。羽田に着いて中央会職員に20部コピーを頼み、一緒に上京した県内の組合長さんや県連幹部に渡しました。大好評でした。大会イベントの間、退屈しなかったそうです。
石田 他の農業関連新聞もありますがニュース性や解説性とかではなく、各農協それぞれの運動の歴史と対応の違いはありますが、いま農協としての方向性をいろいろな面から指摘し課題を提起してくれる、農業・農村・農協を知り尽くされている日本を代表する先生方の意見が他にはない形で紙面に反映されています。多少の時代変化はあるとしても、大きく構成を変える必要はないと思います。 増田 日刊紙との対比では、「速報性」か「解説性」か、また、「農業」か「農協」かという問題があると思います。速報性は日刊紙に譲りながら、問題を当事者や専門家がやや詳しく解説するといったスタンスが求められていると思います。また、農業全般というよりも、農協にこだわったテーマ設定が期待されているのではないでしょうか。私も全国連の当事者の解説や対談を興味深く読んでいます。
日和佐 最初にこの新聞を読ませてもらったときの感想を率直にいうと、機関紙的な性格が強いな、新聞とはいわないのではないかと思いました。 梶井 消費者の観点から取り上げた記事は、そもそもありませんね。 日和佐 そういう意味合いでは、ちょっと残念ですね。
梶井 現在の紙面についてのご意見や感想を伺ってきましたが、今後、この新聞で取り上げていくべきテーマについてはいかがでしょうか。
山地 今後の展開として一言いっておきたいのは、農協事業の内容が変わってきているので、現場の良い例を発掘し、みんながそれを見て自分のところでもこなしていく。その試行過程とか実験過程が紙面に出るという積み重ねができると良い新聞になっていくのではないかと思いますね。 今村 私は農協改革などについて「農協のあり方についての研究会」の座長をはじめいろいろなことをさせられてきました。しかし、いま、一番力を入れているのは、JA−IT研究会、つまり農民塾の農協版、農協改革塾です。いま、70ほどの単協を中心に勉強会を手弁当でやっていますが、ここでは内発的なエネルギーに富んだ改革への議論がすすめられています。ここでの問題提起された論点などを大いに広く紹介してほしいと思います。 梶井 この新聞で取り上げるべきテーマとして、今村さんから内発的な改革への議論をというご意見がありました。山地さんからは、JAが取り組んでいる内容やそのなかでどういう問題があり、どういう議論があったか、組合員がどう評価しているのかを、もっと取り上げるべきではないかというご指摘がありました。また、先ほど小島さんから全国連についても的確に伝えるべきではないかという指摘もありましたが。上山さん…。
上山 私の農協に対する想いを少し述べさせていただきたいと思います。 阿部 私は「農協運動」という言葉が最近はなくなってしまい、使うのが農協内部でも恥ずかしいような気がして大変寂しい思いをしています。協同組合をもう一度、原点から考え直さないと協同組合がなくなったしまうのではないかという危機感にさいなまれています。私どもの地域は農村地帯のなかの農村で、まだまだ担い手もいます。法人化しなくても、まだまだ農民がおります。その農協運動に徹したいと思います。
坂本 法人として地元の組合員になっていますが、実際には、自分の組織を守るのが精一杯で、活動をなかなかお手伝いできないという恥ずかしい立場になっています。ただ、阿部組合長がおしゃった「農協運動」という言葉にはジンとくるんですね。農業者として現場で、牛と付き合い、米や花と付き合い、生き物と付き合えば、何が牛が喜ぶ、お米が喜ぶ、果樹が喜ぶシステムなのか、法人でも家族経営でも兼業であろうとそういう視点が重要だと思います。 梶井 坂本さんは農業経営者として法人の強化をはかりながら、同時に、消費者とのタイアップを強化するために、消費生活協同組合まで組織されたわけですよね。そういう点では、従来の農協運動はちょっと幅が狭すぎたんですね。 坂本 戦後直後は、協同ということで立ち上がらないと日本の国は守れなかったと思います。
坂本 転作が始まった頃が、大きな変革の時だったわけですが、これだけ大きな組織ですからしかたがないでしょう。でも、まだ遅くはないです。市場が求めるものをどうわれわれは供給していくのか、ということを真剣に考える中で取り組まなければいけないと思います。 石田 農協運動の改革期に農業協同組合発足以来、下部的な組織として農家組合が存続してきました。時代の大きな流れでその役割が形骸化してしまい、また多様化した農村においても必要としなくなってしまいました。私たちの農協では時代に対処しなくてはならない組織と、組合員に必要であろうと思われる新しい農協組織をつくろうとこの2年間、大学教授にも参加していただき研究会を開催してきました。戸から個への組織、子どもから老人、女性、すべての人が参加することにより地域の話題などが家庭の共通の話題となる。そして、参加の意義も分かりやすくするため世代別に整理し活動することで、地域とともに元気の泉が掘り出せるようにしていくJA会として、モデル集落を各地区に設定していく取組みが始まります。
増田 協同組合のあり方も時代とともに変わってきています。農協が何もかもやるのではなくて、地域の農業者と地域住民を広く包含する従来の農協と、産直や直売所、グリーンツーリズムなど、農業者有志がつくるさまざまな自立的な協同組織とが、つかず離れずの関係で協力する関係が重要だと思います。そうした先端的な動きを紹介し、理論化していくような試みもおもしろいのではないでしょうか。 関連記事 「農業協同組合新聞」紙面審議会(下) (2004.6.21) |
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