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紙面審議会
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農協運動の発展にどう寄与するのか 「農業協同組合新聞」紙面審議会(下) |
◆紙面審議会委員(五十音順) ◇座長・梶井 功 東京農工大名誉教授 ◇安高 澄夫 福岡県・JAおんが組合長
梶井 今後、この新聞で取り上げるべきテーマは何かについてご意見を伺ってきました。関連して農協のあり方についてもご意見がだされましたが、この点についてもう少しお話をいただきたいと思います。 今村 いま904単協があります。私なりの達観した考えでは、そのうち優れているのは200、どうにもならない下が300、間の中が400ではないかと見ています。上の200のうちのトップ50は非常に優れています。だから、どこに焦点をあてて農協を良くするのか、つまり、農協改革一般をとりあげるだけでなく、それぞれの状況に対応するかたちで問題提起する必要がある、つまり温度差が相当にあります。 山地 僕は、50なら50の農協をキチンと紹介するなり、いま現場で何が起こっているかということを伝えるために、ネットワークを作り、多少、稚拙でも生の声を載せ、それに対して意見がいわれて積み重ねられていく。そういうことを、いまこそやっていくべきではないかと思いますね。 梶井 今村さんからかなり具体的な数字があげられましたが、なんとかすれば上にいけるのが400ある。この400が本当の農協になればだいぶ違ってきますかね。 今村 私は、下の300をいかにして中に上げるかということが、当面する最大の改革ではないかと思いますね。 安高 そうです。私も人だと思います。それも農協のレベルではなく、農家組合員のレベルだと思います。農業者のレベルで農協のレベルが決まる、という意識をもつことが大切だと思います。 増田 現場を見ていると、若い人の力が活かせていないなと感じることが多いです。トップの役割が重要なのは確かですが、若手の力をどう引き出すか、知恵を絞る必要があります。 ◆時代の変化に対応した事業のあり方 梶井 系統組織のあり方についてはいろいろな意見があります。それをどう紙面に提示していけるかは大いに議論したほうがいいですね。 上山 私が入会した頃は、共販運動を一所懸命にやりましたし、出来すぎたときには調整保管をしたりしました。たしかに時代は変わってきています。しかし、いかに時代が変わっても個々の農家は販売能力はありません。代金回収もできませんから、どうしても協同して売らなければならないことは間違いありません。そのために農協はどうしても必要だと思います。いろいろ農協への批判はありますが、共同販売できなければ、農家の営農はできません。流通の形態がまったく変わりましたから、新しい流通に対応した共販をどう作り上げるかだと思いますね。 今村 その通りです。これまでの農協共販、つまり無条件委託販売方式は、無責任委託販売だと批判され、どんどん逃げられています。JA−IT研究会に結集している皆さんの販売戦略、例えばJA甘楽富岡の改革新路線などを、大いに勉強してもらい広げたいと考えています。 松下 JAバンクとかJAブランドといっていますが、私はJAブランドではマイナスになる面がでていると思います。農協は一つだといいますが、実際には格差がありますから、悪いところに足を引っ張られるわけです。私のところが平成7年に合併したときに6500億円の貯金があり、その年は23億円伸びましたが、8年は6億円しか伸びませんでした。住専問題があって農協はダメとなり、農協として全部くくられてしまったわけです。それがいまは250億円くらい年間で伸びるようになりました。農産物の販売でも無登録農薬問題が出ると、私どもは関係なくても、農協のものはとなってしまうわけです。 ◆農協が動けば地域農業は変わる 阿部 ここで農協の死亡診断書を書かれては困るわけです。 梶井 そうですね。農協が活力をもつような議論をしないといけませんね。 阿部 農協が動けば、農協運動を起こせば、地域農業を動かすことができます。地域には農協以外の農業団体がありますがこれを動かすこともできる。また、市町村の農政も動かすことができます。そういう存在感が、農協にはまだまだあります。どう仕掛けてどう実行するかです。 石田 女性の農協運動への参加が急速に高まってきました。正組合員化、女性総代、女性参与も理事となり、いまこそ農協の改革期を迎えたと思っています。またかつてのように、女性参加を促すために女性席を設ける時代は過ぎ去ろうとしています。 安高 農協は変わらなければならないのですが、農協を誰が変えるのか。農業の協同組合ですから、紛れもなく農家組合員が変えなければならないのです。突き詰めるならば、農家組合員自身の「意識」が変わらなければならないのです。 ◆組合員の参加意識をどう育てるか 山地 阿部さんが運動という言葉を使いにくくなったといいましたがどういう意味ですか。 阿部 農協運動ということが風化してしまって、事業論だけだということです。事業論も私は農協運動は事業活動の中にあると考えますので、全国連との関係でいえば、農協運動に根ざした徹底した分担論なら見えるのですが、全国連と大きくなった単協との新たな系統二段階制の機能分担があいまいになっていると思います。また、経済事業改革も、事業論だけでは成功しないと思います。協同組合運動論を前提において、機能分担論を仕組んでいくことで見えてくると私は思います。そうでないと損か得かの話だけになってしまうでしょう。 今村 そのときに運動の主体は誰ですか。 阿部 中心にならざるを得ないのは単協の役員だと思います。 今村 役員だけでしょうか。 阿部 農協運動の原点は、地域農業をどう仕組んでいくかだと思います。それをやるには組合員の組織化を通してやっていかなければできません。その組織化を通して農協に結集する。そこに自然に運動が生まれますよ。どこに何をどうすればいいという…。それをどんどんやっていくことがいま必要ではないかということです。 梶井 そういう議論を、どのように紙面に反映させるかですね。 日和佐 基盤は生産者・組合員ですね。これは生協と共通する問題です。生協も組織が大きくなって、組合員の意識が、何で生協に入ってくるのかというと、便利だからというのが大半を占めるようになっています。その中でどうやって組合員意識を育てていくのかが、大きくなった生協の最大の悩みなんですよ。一人ひとりの組合員が、私たちの生協なんだと思って、生協というのはみんなが力を合わせてここまできたんだという自覚をどうやってもたせるかを、頑張ってやっていますよ。 梶井 参加意識をもたせることですね。 日和佐 それは農協も同じだと思いますね。 阿部 仕掛けるには、役職員の意識改革をどうするかが先だと思いますね。先ほどの運動を仕掛けるのに1年かかりましたが、そういうときにこの新聞が素材として活用できると思いますし、活用できるような編集をして欲しいですね。 梶井 日本の農協の一番弱いところは、組合員の参加意識がないことだと思いますね。 太田原 事業と運動の統一ということでは亡くなられた宇佐美繁さん(宇都宮大学教授)が、農協事業の「一国二制度」ということを唱えていました。市場出荷も産直対応も両方キチンとやり、消費者と組合員の多様化に対応するということですが、それを成功させているところもあります。こういうところを取材したいですね。 ◆食料自給率論の展開を 梶井 協同組合のあり方ということで、いろいろなご意見が出ましたが、その他でこういうテーマをということはありますか。 阿部 取り上げてもらいたいのは「食糧自給率論」です。これは地産地消とか食農教育、農地がどれくらい必要かとか担い手の問題、都市と農村の問題など、ありとあらゆる問題に関わる問題ですので。これこそ農協運動の今日的なテーマだと思いますし、これをどう仕組んで運動を起こすかが、農協運動を復活させるテーマだと思います。1年間ぶっ通しでもいいから取り上げてもらいたいと考えています。 ◆現場での具体的な事例による検証が大事 北岡 農協サイドからみれば生産された農作物がどうなるのか。消費者の動きがどうなるのかを知りたいわけです。 三嶋 農協のあり方について、一方的に型にはめるはどうかなという気がしています。時代が変われば農協の理念も随分変わっていますから、あまり片意地はらずに考えてもいいのではないかと思います。例えば、農協と生産法人がよくぶつかりますが、僕は、一つの枠にはめないで、やりたいことをやればいいと思います。全国連との関係でも、現場でこういう問題があるけれども、例えば全農はそのことについて何をしているのかを紙面にだしてもらえるといいと思いますね。 梶井 販売事業一般論ではなく、具体的な場の中で、現場の農協と全国連がどういう事業分担でいくべきなのかというような点が不足しているということですね。 三嶋 協同組合運動そのものも変わるものですから、どこの時点をとらえて協同組合運動といっているのかよく分からないことがありますね。 梶井 マーケットも違いますしね。相手にするスーパーなどのバイイングパワーも変わってきているなかで、協同としての販売力をどう強めていくかを具体的な場で検証していくことが大事ですね。 増田 広域合併がすすみ、一部には県域農協もできてきました。その意味では、単協と連合会との関係、あるいはそもそも連合会とは何なのかが問われる段階にあると思います。巨大化した全農機能がどのように再構成されるのか、さらに中央会機能の再編も今後の重要な問題でしょう。また、なんでもかんでも系統組織内部で自己完結すべきだという時代でもないと思います。系統外の企業との提携のあり方についても考えないといけないと思います。
梶井 この新聞で取り上げるべきテーマについて、さまざまなご意見がでましたが、最後に、これだけはキチンと抑えて編集した方がいいというご意見はありますか。最初に小島さんから包括的な問題提起がありましたが、いままでの論議を聞かれて小島さんいかがですか。 小島 農協の機関紙的に特化しろというご意見と伺っていました。しかし、役職員は別にして若い人たちがこの新聞を読む気になるのかと考えると、魅力のある紙面を考えないといけないと思います。自発的に買わせるようにしないといけないと思います。そうすると執筆者にしても登場人物にしても、身内だけではなくて、また農業経済学者だけでなくて、もっと広い範囲の人をどんどん登場させなくてはいけないと思いますね。 太田原 農業経済学者もかなり混迷しているところがありますから、執筆陣の幅を広げるのは大賛成です。最近はスローフード運動などさまざまな人が農業や農協への期待を表明していますので、大論文でなくてもエッセイやインタビューでこういう声を紹介して現場を励ますのがジャーナリズムの役目だと思います。 梶井 地域には農協だけではなくて、頑張っている組織や個人がいるが、それをつかみきれていない農協の弱さがあると今村さんが指摘していましたが、これを統合していくためにはどういうことがあればいいと坂本さんは考えていますか。 坂本 人間が生きていくためには、経営だけでは生きていけない。と同時に、農政活動だけではいまの時代、分からなくなってしまった。そういう視点で考えていかないといけないと思います。そういう意味で、先ほど申し上げた、新しい農協活動を立ち上げて欲しいと思います。30アールのご夫婦と私たちのように50ヘクタール作って牛を何百頭も飼っているのを、一緒の教育をするのは無理でしょう。だけど法人だってはみだして一人で勝手にやっていこうというものは、一人もおりません。協同組合活動としてやりたいのです。それをどう束ねていくのか。新しい日本の農業の方向をぜひ考え、その入口をつくって欲しいですね 安高 JAグループはこの新聞の購読推進をしていない。この点はとても素晴らしいことです。保護を受けている産業は進歩しません。保護を受けている新聞が発展してはならないのです。辛口の新聞であり続けることが、この新聞の存在価値なのです。自らの力で、選ばれる新聞、魅力あるHPになってください。 石田 農協が果たしてきた役割、そして次世代へ形を崩さず承継しなければならない問題がたくさんあります。その記事に農業経済学者のコメントを載せ、また新しい時代に向けた心構えや現世の人としてやっておかなければならない問題なども記事化することも必要だと思います。 増田 JAバンクシステムや経済事業改革の動きを見ていると、画一的規制の動きが強まっているのではないかと懸念します。地域の実情に対応した個性的な農協が育ってくることも、大事なことだと思います。そうした農協を応援する紙面づくりにも期待したいと思います。 梶井 長時間ありがとうございました。
関連記事 「農業協同組合新聞」紙面審議会(上) (2004.6.30)
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