集落営農の組織化で環境保全型米づくりも進む
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「フェニックス」登録・上市会見から |
日本農薬(株)が市場投入している、自社開発新規殺虫剤の『フェニックス顆粒水和剤』(有効成分:フルベンジアミド)が顕著な動きを示している。世界にはばたくことのできる、同社にとっては「アプロード」に続く待望の大型殺虫剤と目されており、また、本剤は殺菌剤「ブイゲット」に次ぐ同社総合研究所創出第2号にも位置づけられる。
3月末に開催した記者会見で大内脩吉社長は、「全く新しい化学構造の新規作用性をもつ自社開発剤。高い選択性からIPM(総合的病害虫・雑草管理)の環境適合型資材に位置づけられ、特にチョウ目(鱗翅目)害虫に高い効果を示す」と、本剤の持つ優れた特長を紹介した。
ベンゼンジカルボキサミド系の本剤は、2000(平成12)年から本格的な開発に着手し、同時にバイエルクロップサイエンス社との世界的な共同開発を開始した。2007(平成19)年2月27日付けの農薬登録で、4月中旬から上市されている。
『フェニックス顆粒水和剤』の特長は、全く新しいタイプの殺虫剤でユニークな作用機作を有していること、幅広い種類のチョウ目害虫に高い効果を示すこと、高い食害抑制効果を示すこと、長期間にわたり安定した効果を示すこと、また、既存の薬剤に対して抵抗性の発達した害虫にも有効であること、さらに、天敵類に対する影響が少なくIPMでの活用にも適していること、に集約される。人畜毒性も「普通物」で、環境への影響も極めて少ない。まさに、新世紀型の薬剤と言えよう。
◆国内チョウ目害虫市場は140億円 シェア20%以上の30億円目指す
現在、世界の殺虫剤市場は約8500億円と推定されチョウ目害虫を対象とした殺虫剤市場は約30%(約2600億円)と見られ、地域別には米州35%、アジア35%、欧州30%の順となっている。海外市場は野菜、棉、水稲、果樹、トウモロコシ、ダイズ、ブドウ、日本市場は野菜、果樹、茶、がそれぞれターゲット作物となっている。
一方、国内におけるチョウ目害虫防除剤市場は、約140億円(2005年度、農薬要覧)と見られている。同社では、「フェニックス」においてピーク時、国内チョウ目市場の20%以上のシェア、25〜30億円を目指し、海外においては150億円の市場を期待している。
この分野の主な防除剤としては、「アファーム」、「IGR(主に脱皮阻害)剤」、「コテツ」などが挙げられ、今日では「アファームが1歩も2歩もリードしているのではないか」(業界通)との声もあるが、将来的には、デュポン社の「試験番号:DKI−0001・0002」(有効成分:リナキシピル)も見えており、「ほぼ3年後にはアファーム、フェニックスおよびデュポン社新規剤の3つどもえになる公算が大きい」とも業界の一部では見ている。しっかりした、普及、販売戦略が重要になる。
『フェニックス顆粒水和剤』の登録内容(適用作物・2月27日付け)は、もも、りんご、いちご、トマト、キャベツ、はくさい、レタス・リーフレタス、ねぎ、だいこん、だいず、茶となっているが、同社では、今後、きゅうり、なす、ピーマン、ぶどう、おうとう、ネクタリンなどから、順次、適用拡大をはかり、より生産者にとって使い勝手の良い剤に仕上げていく。
◆地域密着型の普及展開ローテーション散布を推進
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「フェニックス」のパッケージ |
日本農薬では、「フェニックスの最速・最大化と自社保有原体のトータル最適・最大化」が、同社殺虫剤分野のマーケティング戦略だとしている。
同社保有のチョウ目殺虫原体としては、コテツ、ハチハチ、マブリック、ノーモルト、ロムダンがライアップされており、今回の「フェニックス」を中軸とし、各作物においてそれぞれの剤を最適に位置づけることで、自社保有原体の最大化をはかっていく。
同社は「フェニックス」の販売会社として、日本曹達(株)を起用した。2社はこれまでにも強い協力関係にあり、「フェニックス」を野菜、茶、果樹のチョウ目害虫防除分野での基幹剤に位置づけ、「地域密着型営業体制」をベースに普及販売活動を積極的に展開していく。 そしてこれらの普及活動を通し、「フェニックス」をライフサイクルの長い剤として、農業そして会社の収益に貢献できる剤に育てていく方針。
具体的な普及方針としては抵抗性対策を最優先し、コテツのような作用性の異なる剤とのローテーション散布を推進し、また、天敵に優しいという特性から、IPM資材としての活用、各地域・作物に適した普及、さらに現場ニーズを的確に捉えた適用拡大による市場拡大・ブランドの確立を目指す。
昨年末公表した同社の新中期経営計画『日農ステップ・フォワード・プラン2009』においても、「フェニックス」は重要な品目と位置づけられている。
JAグループからのメッセージ
全農肥料農薬部安全・安心推進課
◆生産者と消費者を安心で結ぶ架け橋に
日本農薬株式会社は、創立80年という老舗といった表現が似合う、わが国初の総合農薬メーカーである。JAグループとは、1964年(昭和39年)に全購連(現全農)と取引を開始して以来、本年で43年と長きにわたり取引関係が続いている。
その間、いもち病防除剤「フジワン」をはじめ、半翅目に強く残効も長い殺虫剤「アプロード」、イネ紋枯病防除剤「モンカット」など優れた農薬を次々と世に送り出し、農業生産に大きく貢献してきた。
この会社の技術力、開発力は今でも健在であり、本年になって、全く新しい殺虫剤「フェニックス顆粒水和剤」を登場させた。
本剤は、チョウ(鱗翅)目専用の殺虫剤で、今までの殺虫剤にはないユニークな作用性を持ち、速やかに害虫の摂食行動を停止させて死に至らしめる。また、長く安定した効果がある上、天敵や有用昆虫に対しても影響が少なく、環境に優しい優れた殺虫剤である。
本剤の生産現場における貢献に大いに期待している。
JA嬬恋村営農畜産課 黒岩晋課長
◆3つの「安」を重要視して「黄色い旗大作戦」の展開も
嬬恋村の由来は、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)の伝説にちなみ「嬬恋村」という、ロマンあふれる、親しみやすい名前となりました。JA嬬恋村は、野菜産地形成とともに、発展してきましたが、特産物となっている夏秋キャベツの生産量は日本一を誇り、6月〜10月の間に、安心・新鮮をモットーに約1500万ケースを全国に出荷しています。作付け面積は、3000ha余です。
食の安全・安心に対する消費者の関心が高まっていますが、社会的ニーズに応えていくためにも、これに安定供給を加え3つの「安」を重要視しています。
農薬は使用基準の遵守が大切ですが、ポジティブリスト制度対応では収穫ほ場に黄色い旗を立てる「黄色い旗大作戦」を展開しています。
「フェニックス」は、ローテーションに組み込み、トータル的に散布回数を減らせればと考えています。
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みずみずしい高原キャベツ |
キャベツの定植が進む |
(写真提供:群馬県・JA嬬恋村) |
JA豊橋営農指導課 山口雄二課長
◆農薬の徹底した適正使用で農産物の安全・安心を確保
昭和43年に豊川用水が全面通水したことにより、管内の農業は露地、施設の園芸地帯へと大きく変貌し、国内有数の農業地帯となりまた。特産品は多彩で、多数の品目が年間を通じて栽培されています。
ポジティブリストへの対応では、露地、水稲、果樹、施設と多様な栽培形態が隣接していることやマイナー作物である、つまもの栽培が盛んな地域もあるため、地域全体の農業者を対象に、ドリフト(飛散)対策を中心に実演を交えた講習会を開催しました。
農薬記帳運動はJA豊橋では、平成12年にスタートしました。その後、平成17年3月にJA愛知グループの生産履歴システムに参加することにより、適正使用点検の効率化を進めています。
JAでは農家の経営と産地を守るため、農薬の適正使用の徹底と消費者に満足される農産物づくりを基本に生産者意識の啓発をはかり、系統出荷農産物の安全・安心の確保に努めていきたいと考えています。