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村田 武
愛媛大学農学部教授 |
昨年末12月25日に開かれた農業協同組合研究会第4回シンポジウムに、私は、旧知のJAにじ足立武敏組合長に無理をお願いして、パネラーとして参加いただいた。
そこで足立組合長が語られたのが、まさに「教育文化活動なくしてJAの発展なし」であって、組合員の幸せづくりこそJA運動、その幸せは人から与えられるものではなく、自分たちの協同の努力によって勝ち取る運動だということであった。JAにとって、営農活動と教育文化福祉活動は車の両輪であること、そして教育文化福祉活動の向上はみんなの願いであり、とくに女性が営農でも家計でもまたJAへの来所でも中心の担い手になっているのであるから、女性がほんとうに活動できる場をつくること=教育文化活動の向上であろうということであった。それが、紹介されているような女性部組織の改革「星の数ほどグループを作ろう!」であった。
ほんとうに元気な女性たちである。そして女性の元気は、地域にとってJAの存在を大きくする。たとえば、足立組合長は何事でもないように話されるのだが、JA支所の2階を地域の学童保育に利用してもらっているという。学童保育が必要なことがわかりながら、場所の確保にたいへん苦労した経験をされている方は少なくないだろう。それを考えれば、JAが気楽にそれを提供していることがどんなに地域にとって大きいことか。
この女性の元気は農業青年にも伝染した。
昨年3月10日に、私はこの農協の青年部10周年記念式典に招かれ、「期待される農協青年部活動」と題して記念講演する機会があった。
青年部のメンバーは、管内の吉井町(現浮羽市)で傾斜地柿園の荒廃を防ぐ中山間地域等直接支払制度の導入と集落協定締結のリード役を担った農協柿生産部会の中核メンバーでもある。集落協定では、交付金の各農家への配分を3割に抑え、7割を柿生産部会活動の活性化のための「共同取組み活動費」に使用することで合意した。活動費は具体的には、第1に、柿の販売促進活動費を計上して、「浮羽の柿」ポスターやリーフレットを作成配布したり、関東・関西での試食宣伝活動を行った。第2に、柿農家全戸にFAXを設置した。そこで柿部会青年部の登場である。青年部員が柿園の病害虫の発生状況を平坦部、中山間部、高地部に分けて定点調査し、その結果にもとづくコナカイガラムシ防除適期を部会員全戸にFAX送信しているのである。これは、柿園を見回る余裕のない兼業農家にはたいへん喜ばれているという。
JAにじは、平成14年9月に、建設費22億円余りをかけて新鋭の「園芸流通センター」を完成させており、センターには自前で残留農薬検査が行える検査室を設置するとともに、柿農家へのFAX通信の発信所としての役割をセンター管理室が担っている。
このセンターから発信される柿防除情報、さらに柿市況情報などは、FAXで確実に伝わるようになった。ついでながら、FAXをすでに持っていた農家に対しては、部会で義務づけられている堆肥の購入費用の補助がなされたということである。
足立組合長の営農活動と教育文化活動はJAの車の両輪という確信に基づくトップマネジメントが、「JAが地域を守るというメッセージ」を組合員に伝え、組合員の農協活動への主体的参加につながっていると、私には考えられるのである。
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