農業協同組合新聞 JACOM
   

特集 「安心」と「満足」を提供し愛されるJA共済へ――JA共済3か年計画のめざすもの


JA共済大賞に輝く2JAに聞く (1)

 18年度のJA共済大賞は、埼玉県のJAいるま野と静岡県のJAとぴあ浜松の2JAが受賞した。JAとぴあ浜松は17年度も大賞を受賞しており、2年連続の受賞ということになる。
 共済保険を取巻く環境が厳しいなか、共済だけではなくローンや相続などについても組合員の相談に応じる「総合資産相談員」を基軸とする推進で、8年連続して長期共済の目標を達成しているJAいるま野。長期共済の保有純増額を目標に設定したLAによる恒常推進で12年間連続して保有純増を成し遂げてきたJAとぴあ浜松。それぞれ特徴ある推進を行い実績を積み重ねたきた両JAの取組みは、これからのJA共済推進にとって学ぶべき点が多々あるといえるだろう。

「人に優しい」が基本 目標管理もきめ細かく
JAいるま野(埼玉県)

 JAいるま野の推進体制の特徴は、「総合資産相談員」を基軸とする恒常推進だ。推進実績のほとんどは同相談員の活動による。相談員らはLA認証をはじめファイナンシャルプランナー(FP)や宅建主任などの資格を持ち、組合員のさまざまな相談に対応して、信頼を築き得ながら専門性の高い提案型の推進に当たっている。またJAいるま野は目標管理にも独自のシステムを活用している。

◆笑顔を絶やさずに

細野邦彦会長
細野邦彦会長
小澤稔夫組合長
小澤稔夫組合長

 JAいるま野は9年連続の受賞となった。小澤稔夫組合長は「組合員や地域のみなさま方のご理解を得るという基本に沿って長期共済で2000億円以上(保障金額)の推進実績を積み上げることができました。LAをはじめ職員が組合員や地域のみなさまといっしょになって、いち早く昨年9月までに目標を達成したことに感謝し、名誉ある表彰を受けるに至ったことを大変喜んでいます」と喜びを語った。
 同JAは平成8年と13年に合併。エリアは10市3町に及び、東京近郊から中山間地にまで広がっている。組合員数は正准合わせて7万4094人。職員数は1105人。
 理念は「人に優しい豊かな地域社会を目指して」。その実践の一環として 小澤組合長は職員に対する今年の年頭あいさつで「組合員に対して笑顔を絶やさないようにしよう」と呼びかけ、『感謝の心が笑顔を造り、笑顔こそ人の心を和らげる』という標語を全職員に配った。
 「今は銀行風の店舗に改装されて組合員にとっては気楽に入りにくい面もあるから笑顔でお迎えすることが大切」と小澤組合長は話している。
 また「つくり笑いでなく、こころからの笑顔で接客するためには職場環境を良くしなければならない」と職場を明るくすることも強調した。そうしたリーダーシップも連続受賞の背景にあるようだ。
 JA全体の機構は本店に営農部や共済部など8つの部が置かれ、その下に地域ごとに7つの事業部が配置されている。さらに、その配下に61の支店が置かれ、統廃合が進む中で互いに業績を競い合っている。

「総合資産相談員」を基軸に「提案型」で大きな成果に優しい」が基本

◆投信の相談にも応じる「総合資産相談員」を基軸に

埼玉県 JAいるま野

 共済の推進形態は総合資産相談員を基軸とする恒常推進だ。各支店で相談員を任命しており、現在全支店に合計152人配置されている。
 相談員は共済をはじめローン、不動産、相続など非常に幅広い問題について組合員の専門的な相談に対応している。相続資産相談員の中には共済の相談に関わるものも出てくるし、また最近は金融機関が力を入れている投資信託の相談などにも親身に応じている。
 また相談員は全員がLAの認証資格を持つほかファイナンシャルプランナー(FP)や宅建主任などの資格も取得している。その点で相談員のあり方は総合的渉外といえる。
 名刺の裏にはその資格が印刷されているため、それを見た組合員が相談内容の幅を広げるケースもあるようだ。
 全支店に相談員が配置されているため組合員としては本店に足を運ぶことなく、近くの店舗に行くだけで、ほとんどの問題に対応してもらえるとあって、この制度に対する評価は高い。
 人事異動の時期になると「私が相談中の職員を異動させないでほしいといった組合員の声も出る」といったエピソードもあるようだ。
 同JA共済事業の方針は「信頼」「貢献」「改革」を掲げているが、このエピソードは相談員に対する組合員の信頼を物語っている。
 推進目標は各事業部が支店に割り振り、相談員個々の目標は支店で設定している。前年度は1人当たり平均約13億円(保障金額)と大きく、多い人は20億円以上だった。推進実績は新規契約の98%以上が相談員の活躍によるものとなっている。
 推進形態は、担当外職員の説明不足などによるコンプライアンス(法令遵守)も懸念されることから、専門的な提案型推進に向けた恒常推進としている。

◆相談員と集金専門員とが連携して

 特徴的なのは、JAいるま野では資産相談員(LA)とは別に集金専門員(集金渉外担当者)も配置していることだ。
 共済掛金だけでなく、JA貯金の定期積金など一切を集金している。
 相談員と集金員を分けたのは16年度から。組合員の共済に関係する相談が専門的になってきたためだ。
 それまでは集金しながら相談にも乗っていくという形だったが、現在では相談と集金を明確に区分けしているという体制だ。
 集金員も業務の中で推進できる見込み情報をつかむ。触覚のような役割を果して情報を相談員につないでいく。
 そうした両者の連携プレーが支店を活性化しており、それが非常にうまくいっているとのことだ。
 18年度は集金専門員にも幅広い知識を習得し、次期の総合資産相談員を目指すことで推進体制の強化を図ることと、集金専門員の中には早く相談員になりたいと意欲を燃やす職員がいるため、推進目標を設定した。目標は新契約保障金額1億円を基準として設定した。
 結果はいち早く目標を達成する職員も出てきて切磋琢磨の状況も見られるという効果を挙げた。

◆11年度から連続して長期共済の目標を達成

 18年度の共済事業方針を見ると、今次3か年計画の総仕上げの年度であり、「安心できる生活保障の確保」「安心に応える共済サービスの提供」の達成に向けた重要な年度である、と位置づけられている。
 そして、医療系共済を取り入れ、経営環境や価値観の変化に対応した保障の提供に取り組み、加入者満足度の充実、事業基盤の拡充、及び事業収益の安定確保を図り、次期3か年計画の足がかりとなる積極的な事業展開を実践する、とした。
 その結果、目標達成率は長期共済110.7%、年金共済258.8%、医療系共済116.5%と大きく目標を超えた達成となった。
 医療系共済は、がん共済の仕組みができた14年度から110%以上の達成率をキープしている。
 目標は共済の種類別に設定しているが、さらに別枠設定もある。
 次世代対策がこれからの共済事業の大きな課題となっているので、長期共済の推進目標とは別に、こども共済に別枠目標を設定した。また医療系共済の中では、がん共済・定期医療共済を別枠にして目標を設定している。

◆リアルタイムで実績がわかる独自システムで管理

 目標管理は共済実績システムという独自の日次管理方式を8年度に構築して本店、事業部、支店を通して毎日の進捗管理に活用している。
 これは毎日の実績がリアルタイムでわかるシステムだ。LANでつながっており、他の支店の状況も見られるため競争意識や目標への執着心を刺激することにもなっている。
 早期失効・解除・減額契約が発生した場合、当該年度の新契約実績から差し引く「ネット実績」で管理されている。
 保有契約高は純増目標を掲げたが、結果は期首に対してマイナスとなった。満期解約がなかなか新契約につながらない悩みがある。問題解決型推進では新しい仕組みに切り替えることが保有を維持する1つの手法だが、建更はつながるものの生命系は難しいという。
 自動車共済は意欲を高めるために、いろんなイベントを催したりしている。目標は達成することができなかったが、今後は日々の目標管理の徹底で達成していく方向だ。

◆共済事業を支える多彩な地域貢献活動

 一方、地域貢献活動は次世代対策として「夏休み子ども村」などを実施してきたが、昨年は西武球場を借りての野球教室や、浦和レッズのコーチによるサッカー教室、また吹奏楽大会を開くなどして子どもたちはもちろん、若い父母たちも大喜びでJAに親しみをもってもらったという。
 高齢者向けの地域貢献ではディサービスセンターを運営、また助け合い組織によるミニデイサービスも実施している。
 また経済事業では昨年秋に県内では最大規模の日高中央直売所をオープンし、地産地消の拠点とした。評判が良いので午後は売り切れになることもあり、生産・出荷体制を整える課題も出ている。さらに今年度からの3か年計画では大規模な直売所を幹線道路沿いに4店舗建設する。
 環境保全への取り組みも進んでいる。一昨年度から建設した2支店や日高の直売所など4施設は太陽光発電システムを導入している。また営農部は今年2月、ISO14001を取得した。
 さらに、食の安心・安全では14年度から米麦・野菜の生産履歴記帳運動を実施、さらに前年度5月施行の「ポジティブリスト制度」の導入により取り組みをさらに充実させた。生産者には減農薬・減化学肥料栽培を奨励。また外部機関を活用した残留農薬検査の実施を続けている。
 こうした総合JAの特性を活かした多彩な活動が、JA共済事業で連続して目標を達成してきた原動力となっていることも忘れてはならないことだといえるのではないだろうか。

 JAいるま野概要
・組合員数 7万4094人(正+准)
・共済事業
 長期共済保有契約高 2兆4355億円
 長期共済新契約高 2273億円
 年金共済新契約高 26億7990万円
 自動車共済新契約件数 5万5203件
 自賠責共済新契約台数 1万9933台
・信用事業
 貯金残高 9296億円
 貸付金残高 2989億円
・経済事業
 購買事業 63億円
 販売事業 94億円
(「JA共済大賞に輝く2JAに聞く(2) JAとぴあ浜松」へ)

(2007.5.21)


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