きめ細かい営農指導、渉外体制で組合員のニーズに対応
JAはが野(栃木県)
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杉山忠雄常務
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97年に芳賀郡の6JAが合併した、合併当初から「共和国ではないJA」(杉山忠雄常務)をめざした。そのためにほぼ全域で展開する作目(いちご、なす、梨、にら、しいたけ、春菊など)については統一部会を発足させた。
営農指導体制の再編にも取り組み、2000年に「広域営農指導員」を置き生産物の地域格差をなくして統一を図った。広域営農指導員は園芸特産物の司令塔的な役割を発揮し「安心はが野ブランド」の確立と、環境負荷削減の環境創生農業への転換もめざした。
03年には「営農経済渉外員」(ACSH、アクシュ)を本所に置き、認定農業者・青色申告農家などを巡回する体制をつくる。04年には品目横断的政策に対応するため「大型農家班」、地区営農センターには「営農相談員」を置き販売業務と兼務して営農相談にのる。こうして階層別に農家対応する体制をつくった。
また、同JAではいち早く物流を全農に委託する県域物流システムに移行、コスト削減を実現した。そのほかにも全農との「協同協議方式」で全農との機能分担により生産資材の価格引き下げを追求している。
販売事業のうち米は合併初年度と06年度では116億から67億に減ったが、一方、園芸がパッケージセンターも合わせて105億から131億に伸びた。米の大幅な減少を園芸の振興、なかでもいちご日本一の産地として86億円をあげている。
(正)1万7900人(准)3924人(販)227億7900万円(購)68億7200万円(貯)1605億1600万円(貸)372億4700万円(共)9963億200万円(18年度)
恵まれた気候条件に付加価値向上の努力で産地形成
JA三浦市(神奈川県)
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石橋伸一組合長
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三浦半島の先端の三浦市が管内。自然の味・健康野菜をめざし、販売面ではJAよこすか葉山と連携、特産・三浦野菜生産販売連合を組織している。JAの連携という点が注目される。
管内は「冬暖かく、夏涼しい」という温暖な気候を生かし、冬はダイコン(786ha)、キャベツ(740ha)、夏はスイカ(386ha)、カボチャ(126ha)、メロン(55ha)など露地野菜が中心である。
このうち、冬春ダイコンと早春・春キャベツが国の指定産地に、スイカが県の指定産地になっている。最近では、トウガン、ニガウリ、夏ネギ、トマトなども栽培され、みかん狩り、いちご狩りなども行われている。
06年度はダイコンの安値の影響で、前年の40億円に対して18億円と前年比44・5%に減少した。そのため販売品取扱実績合計は17年度の79億円から18年度は59億円へと大きく減少した。価格変動への対応やリスク分散、リスクマネジメントが課題になっている。
また、良好な気象条件に加えて付加価値をつける努力も行っている。春キャベツ出荷グループ「松輪」(68名)は、02年末に設立されたが、地元の三浦ディーエスダビリュ社と連携し、三浦沖海洋深層水を散布する春キャベツの栽培に挑戦している。土壌改良にもつながる試みで03年3月から出荷を始めている。
(正)1659人(准)907人(販)59億4700万円(購)48億900万円(貯)292億7800万円(貸)32億280万円(共)953億4300万円(18年度)
特産品で地域振興、住民にも信頼されるJAに
JAみっかび(静岡県)
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和田正美組合長
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1961年以来合併はせず今日に。基本方針は「三ヶ日みかんブランドを守る」。合併による規模の経済追求よりも特産物のみかんを中心に組合員と一体になって地域農業振興を図ることにJAの役割を求めた。
みかんの生産・販売対策は最重要課題だが、特徴は(1)市場調査の徹底で品種を青島(販売高の71%)と早稲2品種(27%)に統一(2)配合肥料の独自工場を建設するなど生産資材についても独自指導を徹底(3)全園をマッピング化とデータ化、個人ごとに管理し指導を充実(4)選果の充実、などだ。
また、1960年に「三ヶ日柑橘出荷組合」を結成、みかんの生産・出荷対策を組合員主体で行っている。出荷組合はJAと専属利用契約を結んでいる。出荷組合のシェアは戸数70%、販売高で80%。ほとんどのみかん生産者が参加している。
農産物即売も行う農協祭は30回を数えるがこの農協祭には「組合員が自分たちのために、自分たちで作った自分たちの農協だという自覚と、お互いの信頼と友愛を深める」、「組合員と地域住民が毎日の生活を見つめ直し本当の豊かさとはなにかを皆で考える場とする」、「協同を通じて住みよい平和な郷土建設をめざす」などの目的を掲げている。地域住民に対しての多様な取り組みがJAの存在価値を高めている。
(正)1743人(准)1101人(販)99億3300万円)(購)50億2600万円(貯)534億974万円(貸)76億7800万円(共)3798億900万円(18年度)
農業を基軸とした協同活動の再構築に挑戦
JAあいち知多(愛知県)
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山口清隆氏常務
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09年度までの第3次中期経営計画では「原点回帰と新たな挑戦」を掲げている。「原点」とは「農業を基軸とした協同活動」。それを通じてJAが「あるべき姿に立ち返り組合員
・利用者のニーズを満たしていくこと」を目標にした。
管内には名古屋南部工業地帯や中部国際空港などの都市化した地域もあるが中期計画では「農業を基軸」とした。大規模JAになって組合員から「農協らしさや近親感がなくなった」、「組織活動が沈滞し帰属意識が低下した」などの意見が聞かれJAの存立意義が問われるようになったからだという。
営農指導体制では4つの基幹営農センターとそのもとに7センターを設置。「出向く活動」を重視して各センターに営農LA(購買中心)を配置し、一般の営農指導員(販売担当)との協力体制をとり地域実態に応じた指導を徹底している。
「『集荷』から『販売』へ」も基本理念だ。農畜産物加工センター(あぐり工房)によるカット野菜や弁当供給、量販店への販売、産直・地産地消などに取り組む。こうした取り組みを象徴しているのが「JAあぐりタウン げんきの郷」である。現在では直売所のほか温泉施設などを含め38億円の取扱高だ。組合員・利用者の立場に立った事業を行うことで幅広く支持され事業を伸ばしてきた。
(正)1万7159人(准)4万3363人(19年4月1日現在)(販)98億円(購)120億円(貯)8681億円(貸)1890億円(共)2兆2456億円(19年3月末現在)
農業振興と地域貢献で住民から支持される組織づくり
JAいずも(島根県)
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萬代宣雄組合長
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組合員数は出雲市の成人人口の半数を占めるが、准組合員の割合は8割弱。しかし、農業振興には力を入れ市と連携して3F事業(フロンティア、ファイティング、ファンド)に取り組んでいる。
その目玉は21世紀出雲農業支援センターの設置でJAも職員を出向させ集落営農の育成や法人化に取り組んでいる。JAは法人に対して出資する支援もする。また、同事業では60代、70代も後継者だと位置づけJAを退職して就農する50代職員には就農支援金を出している。
販売事業では販売に強い職員を営農部に据え部内に指導特産課を設置、京阪神を中心に米やぶどうの市場開拓を図っている。また、購買事業の主力は7店舗あるAコープ「ラプタ」で115億円の売り上げがある。輸入物は販売せず全店舗に直売コーナーを設置。2億円の売り上げがある。さらに2年前からコンビニ経営にも乗りだした。フランチャイズ契約だが地場の農産物を置くようにしている。
また、06年に総合ポイントカードを導入し全購入代金にポイントを付与。これを軸に組合員拡大を図り半年で1万2000人増えた。
注目されるのは貯貸率が40%を越す高水準であることだ。農家を中心に住宅・教育・マイカー、環境等に取り組み、また地場企業等への貸し出しも。地域貢献の観点からも注目される。
(正)1万3788人(准)4万4765人(販)88億7000万円(購)180億4100万円(貯)2213億6000万円(貸)979億8600万円(共)1兆840億6000万円(18年度)
(「JAのビジョン」づくり―全国20JAの挑戦 その4へ)
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