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シリーズ 消費最前線『全農マークを信頼のマークへ』 |
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◆進んできた意識改革――米流通の実態に触れて
――7つの系統卸が合併して2年が経ちましたが、現在の状況はどうですか。 土肥 7つが1本になって非常に力強い柱ができるということでスタートしましたが、まだそこまでにはなっていません。2年経って芽が吹き出てきたという感じではないでしょうか。米の卸は旧食管制度のイメージが強く、その体質がわが社にもありましたが、社名に「全農」とあることの責任の重さについて、合併当初から社員に話し実践の中で意識改革をはかってきました。まだ十分ではありませんが、この2年間で相当に深まってきたと思いますね。 ――それぞれが独自に事業を展開してきたわけですからね。 土肥 株式会社ですから、会社のイメージにあった動きをいかにするかという意識改革が大切です。社員の70%強が県本部からの出向者ですが、2年経過して県に戻った人たちは、組織が流通を中心にどう米を見ていくのかという意識を強くもって帰ったと思いますね。 ――流通の実態に触れたということですか。 土肥 米の流通は、こういう流通だったのかということが、よく分かったと思いますね。そして、彼らがそういう意識をもったことが大きな成果だと思いますね。今後は、計画流通制度がなくなって、完全に自由な世界になるわけですから、流通をいかに把握して販売を進めるかが課題となるわけですからね。 ◆食の安全が米卸の世界を変えた ――その米流通の世界も変わってきていますか。 土肥 消費者の「食の安全」への関心が高まり、米業界が変わったと思いますね。例えば、年間11万トン使うある大手取引先では、30社弱あった仕入先を6社に絞り、他の20数社はこの6社に結びつきなさいという形で集約しています。この背景には、トレーサビリティへの対応、いままで食の安心・安全に本当に対応できていたのかということがあると思います。 ――安心・安全がキチンと見えないと扱わない…。 土肥 それが昨年あたりからの急激な変化だといえますね。 ◆精米工場のすべてを消費者に情報公開 ――消費者に安心・安全だということをどう理解し納得してもらうかということが、米でも大事になりますね。 土肥 昨年の10月に大手生協の組合員約100人の人たちにわが社の埼玉工場を公開しました。工場を見た後、どこの産地の米が何月何日に工場に入って、いつどのように精米し、どういう形で皆さんの所へ出ていきますという流れのデータをすべて見せ、スライドを使って5時間近く説明し、質問を受け回答しました。これが1つのきっかけとなって、今年は別の生協からも要請がありますので、実施することにしています。 ――従来では考えられなかったことですね。 土肥 いままではこういうケースはありませんから、米流通改革の1つの要素になると私は見ています。 ――消費者も安心できますね。 土肥 工場での生産から消費者に渡るまでがキチンと見えるわけですから、消費者も安心しますね。しかし、生産から消費までのトレーサビリティの確立という意味ではまだ不十分で、生産地も生産情報を公開していかないといけないでしょうね。 ――そういう要求を産地へしていくわけですね。 土肥 産地と交流をもっと大事にして、産地の情報をもっと公開できるような制度を会社としてつくっていきたいと考えています。 土肥 わが社の取扱量は、精米が17万トン弱、玄米が9万トン強です。会社が誕生したときに私は、「玄米流通の時代は終わっている。精米を中心に徹底して販売しよう」といいました。なぜかというと、玄米は最終的にどこに行っているのかわかりませんが、精米だと取引先が明確になっていて、消費者と結びついていますから見えるわけです。見えるということは、生産者にとっても、自分のつくった米がどこに行っているかがハッキリ見えるわけです。そしてその取り引きが安定すれば、結果として生産も安定するわけですし、生産者にとっても励みになると思いますから、そこを目ざそうということです。その結果、初年度は10%、2年目の14年度は9%強と精米が着々と伸びています。トレーサビリティが確立することで、さらに着実に精米が伸びていくと思います。 ――米の情勢が大きく変わる中で、御社の役割がますます重要になると思いますが、産地へ望むことはありますか。 土肥 先日、鹿児島の金峰町へ行って来ました。鹿児島は超早場米というイメージがありますが、ここは金峰山という山に湧き水があって、それが田んぼに流れてきて米が生産されています。取引先によっては水を重要視するところがけっこうありますから、このイメージを大切にしなければいけないと話をしました。自分たちが生産している地域地域の特色を活かし、それをわれわれの営業でも前面に出していく。そのために、お互いに情報提供していけるようにしていきたいと考えています。 ◆正直な仕事で組織の負託に応える ――3年目に入ったわけですが、今後の展開については…。 土肥 まだまだ課題がたくさんありますから、それを1つずつ解決していけば、いまの時代にあった会社になっていくと思います。その中でも一番のポイントは、食の安全に対する対応と組織の負託にどう応えるかだと考えています。そして経営基盤の確立ですね。 ――組織の負託にこたえるには、なにがポイントですか。 土肥 流通の段階でシェアを拡大することが大事ですね。シェアを拡大することで、いろいろな米を扱っている全農が発言しやすい環境をつくることができますし、そのことで生産者の付託にも応えることもできると考えています。 ――シェアを拡大するためには、食の安全を確保することが重要だということですね。 土肥 他の農畜産物の場合だと、全農グループを通さないと生産者が成り立たないケースがありますが、米の場合には、わが社なくなっても米卸はたくさんありますから他社が代行できるわけです。そこをキチンと認識して食の安全に取り組まなければいけないと考えています。そして、冒頭にも述べたように、「全農」という名前が社名についていることの社会的責任を果たすために、正直に仕事をしていこうと考えています。 (2003.5.15)
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