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【日本植物防疫協会】
薬剤抵抗性は生産コスト増大につながる 地域連携で対策を  日植防シンポジウム

 日本植物防疫協会は9月12日、東京・一ツ橋の日本教育会館で「病害虫の薬剤抵抗性対策」をテーマにシンポジウムを開いた。行政、JA、メーカーなど600人ほどが参加した。

◆新剤開発への依存から脱却を

 日本では昭和40年代頃から農薬への抵抗性を持つ害虫や耐性菌の出現が問題となり、農林省(当時)でも46年からその対策として検定事業を行ってきた。
 その後もたびたび薬剤抵抗性は問題となったが、実際には、そのたびに高い効果を持つ新剤が市場投入され問題を解消してきたため、根本的な対策は棚上げされてきた経緯がある。
 しかし、ポジティブリスト制度の導入や減農薬栽培の拡大による、特定の農薬への依存度の高まり、効果的な農薬のローテーションが組めなくなったこと、農薬取締法の改正などで新剤開発にかかるコストが増大する一方、国内の農地減少と農薬出荷量の伸び悩みなどを背景に、新剤の開発が従来のようにはできなくなるとの懸念があり、今後は実効的な抵抗性対策がより切実な課題になると予測される。


◆「防除暦」を活用して

総合討論で登壇したパネリストら。 「多くの生産者にとって、農薬は、楽で、簡便で、コストが安いことが大事であり、抵抗性や耐性は大きな関心ごとではない」と話したのは、JA全農肥料農薬部の天野徹夫次長だ。
 しかし、抵抗性対策をおろそかにして薬剤の寿命を縮めれば、結果的には防除コストの増加や薬剤の欠如をまねくことになるとして、JAグループとしての具体的な対策事例を紹介した。
 JAあいち経済連では、野菜のハスモンヨトウについて、平成11年から毎年、登録があり使用できる可能性のある農薬を、実用濃度だけでなく、どこまで薄くすれば効果が落ちるかも含めて幅広く感受性調査を行い、その結果を防除暦の作成に活かしている。また、その際には、薬剤の価格も考慮し、卓効が低くても安価であれば時機を選んで使用する、といったコスト削減対策も併せて行っている。
 天野氏は、「こうした対策は地域や関係者の協力が必要だが、すべての地域、すべての病害虫や雑草でできるわけではない」として、生産現場に抵抗性対策の考え方や手法を確立するためにも、防除暦の整備充実に取り組んでいきたいと述べた。
 そのほか総合討論では、「農薬の効果が小さいのは、正しい使い方や濃度を守っていない、難防除害虫草に対して無理ある防除体系をつくっていること、などの原因も考えられる。これと抵抗性の発現は別であり混同しないでほしい」、「抵抗性対策では薬剤の選択やローテーションなどが注目されるが、物理的防除なども含めてしっかり予防し、病害虫の生き残りをなくすことが大事だ」などの意見が出た。また、「海外での農薬メーカーの連携などに学び、より正確な情報収集とガイドラインづくりをすすめてほしい」といった要望もあった。

(写真)
総合討論で登壇したパネリストら。


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