◆20作物40病害に有効な新規殺菌剤
「ファンタジスタ顆粒水和剤」は、クミアイ化学とイハラケミカル工業が共同開発した新規化合物ピリベンカルブを有効成分とする園芸用殺菌剤で、近年問題となっている各種ストロビルリン系殺菌剤耐性菌(野菜類の灰色かび病、うどんこ病、べと病、イチゴ炭疽病など)に対しても高い効果をもつ新規殺菌剤有効成分だ。
また、防除スペクトルが幅広いこともこの剤の大きな特徴で、卵菌類を除く糸状菌病害全般に幅広い防除効果を示しており、従来のストロビルリン系殺菌剤に比べて、重要病害の灰色かび病や菌核病に高い防除効果を示している。
「これだけ広いスペクトルをもつ剤は(クミ化としては)初めてのこと」だというが、今回の登録(8月20日付で取得)では、野菜・豆類の灰色かび病、菌核病、リンゴ・ナシの黒星病をはじめ20作物40病害と多様な病害で登録されている。
最初の登録でこれだけの病害に適用登録することは稀だが、クミアイ化学では「多少の時間をかけても、農家にとって『常備薬』となるよう適用を多くした」のだという。そして今後さらに、小粒核果類・ウメ・カキなどの果樹から稲・小麦・ニンジン・アスパラガスなどに適用拡大をはかっていく計画だという。
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10月10日発売の「ファンタジスタ」と、11月発売の「ファンベル」
◆園芸病害防除の基幹剤に育てる
「ファンタジスタ」は、▽広範囲な病原菌に対して高い効果を示す、▽適用作物が広い、という特徴に加えて、▽治療活性を有し浸透性や残効性に優れていること、さらに冒頭にも触れたが、▽各種耐性菌対して効果がある、▽各種作物への薬害発生リスクが少ない、という特徴を持っている。
こうした特徴を活かして園芸分野での「病害防除の基幹剤となるように育てていく」と同社では考えている。
10月10日の記者発表の席で石原英助社長は、「従来、水稲用薬剤を中心に開発を進めてきたが、近年は園芸用薬剤開発に力を入れてきた」。10月1日からクミ化から製造販売されるようになったスプラサイドなどの殺虫剤や既存殺菌剤に加えて「ファンタジスタの上市で園芸分野のかなりの部分をカバーできる」ようになったが、今後、さらに園芸分野の開発を進めていくと抱負を語った。
また、ピリベンカルブにイミノクタジンアルベジル酸塩との混合剤である「ファンベル顆粒水和剤」も開発しており、11月7日から販売を開始する。同剤は果菜類の灰色かび病をはじめ3作物6病害の登録を取得している。
両剤の販売は、クミアイ化学が系統で、開発経費の一部を負担した日本曹達が商系で、それぞれ販売することにしており、3年目に約20億円の販売を目標としている。
10月1日からの難防除害虫カイガラムシに非常に効果が高い園芸用殺虫剤「スプラサイド」の製造・販売、そして今回のスペクトルが広く多くの園芸生産者にとって使い勝手のよい「ファンタジスタ」の販売開始など、「日本の農業・農家を元気にしたい」というクミアイ化学の動向はこれからも目が離せないのではないだろうか。
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記者会見にのぞんだ石原社長
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